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2018年11月14日 (水)

非正規労働者よりも権利のない非正規官吏という奇怪

くろかわしげるさんのこのツイートは、

https://twitter.com/kurokawashigeru/status/1062492374742384640

公務員の非正規労働者の問題、行政法学者の奇妙奇天烈な法解釈による影響が大きい。原則で明文化されてもない公法私法二元論を、なぜか公務員労働法制に関してはどんな法文よりも上位に徹底的に適用されて、職務限定で労働者性しかないような非正規職員に神聖な公務労働の制約が全適用されます。

ここ数年来、労働法政策の講義で話してきていることであり、先週の法政大学院での最終回でも喋ったことですが、戦後日本の公務員法制は、それなりに首尾一貫した合理的な二つの全く異なる制度を、混ぜるな危険!という警告にもかかわらず混ぜて作り上げてしまったために、世界に類を見ない得体の知れない奇怪きわまる代物になってしまったのです。

第1のシステムは、ドイツ法型、戦前期日本法型の公法私法二元論に基づくシステムです。

このシステムにおいては、公的部門には全く異なる二種類の人々が居ます。一つ目は官吏であり、公法たる行政法に基づき任用されて公法上の身分保護を受け、公法上の任務遂行義務を果たします。

もう一つは(公共機関に雇われる)職員や労働者であって、私法たる民法の雇用契約規定に基づいて採用され、私法上の権利義務関係に基づき労務を提供してその対価たる報酬を得ます。その法律関係は民間企業の職員、労働者と全く変わりませんが、(身分ではなく)職務の公益性による制限はあります。

戦前の日本はまさにこのシステムでした。それゆえ、国や地方公共団体に雇われる雇員・傭人にもフルに民法が適用され、また1926年の労働争議調停法でも、交通機関、郵便、電信、電話、水道、電気、ガス、陸海軍の工場等で働く労働者にも原則として争議権があることを前提としつつ、公益事業については強制調停方式を採り、調停なるまでは争議行為を禁止するという法制であったのです。

第2のシステムは英米法型です。アングロサクソン諸国にはそもそも法律を公法と私法に分けるなどという発想はありません。女王陛下に雇われている007も、民間企業に雇われている探偵も、同じコモンローの下にあります。公務員という『身分』はありません。従事しているジョブが公益性が高ければそれに基づくさまざまな制約が課せられることはあっても、それはいかなる意味でもドイツ法的な、あるいは戦前期日本法的な意味での「身分」ではないのです。

そういう英米法で物事が動いているアメリカに、戦後日本は占領されました。そして、ドイツ法型だった公共部門従事者関連法制は、アメリカ型に変わった・・・はずでした。少なくとも戦後初期の法律の文言は、どこをどう読んでもアメリカ型の法律になっています。そしてそれを前提に、公法上の官吏と私法上の雇員・傭人を峻別する戦前型法制は否定され、公務に従事する人はみんな同じ公務員という法制になりました。いうまでもなく、英米法を前提にした戦後公務員法制におけるこの「公務員」とはいかなる意味でも戦前の官吏のような意味での「身分」ではなく、その従事する職務が公共的なジョブであるという以上のものではなくなったはずでした。

ところが、法律の条文上から姿を消した公法私法二元論が、霞が関の官僚たちととりわけ行政法学者たちの脳裏には牢固として残っており、その六法全書には存在しない講学上の概念が、すべての行政関連法規を駆動する万能の道具として機能していきます。本来公法私法を区別しない英米法型の公務員であるはずのものが、ドイツ型、戦前日本型の官吏であるかのように思い込まれ、それを大前提にすべてが動かされていきます。

その結果何が起こったか?

ドイツであれば現在でもベアムテではなく、アンゲシュテルテやアルバイターとして民法の雇用契約と労働法の規定によって規制されている人々が、戦前の日本でも官吏ではなく雇員、傭人として民法の雇用契約と(数少なかったとはいえ)労働法の規定によって規制されていた人々が、全部ひっくるめて法律上は「公務員」、脳内概念としては「官吏」になってしまったのです。

こんな訳の分からない公共部門法制をとっている国はほかに見当たりません。混ぜてはいけないものを、(法律を作ったときは混ぜるつもりではなく、入れ替えるつもりだったのに)結果的に混ぜてしまった得体のしれない空前絶後の法制度なのです。

その結果、いかなる非常勤職員と雖も公務員法上は任用に基づく公務員であり、従って戦後行政法学の脳内法理に従ってれっきとした官吏であり、それゆえ官吏としての身分保障の代わりに私法上の保護は一切奪われることになり、しかしその官吏としての身分保障なるものはどこにもないという、とんでもない世界が作り出されたのですね。本来の官吏よりも民間労働者よりも権利のない非正規官吏という代物が。

ここで重要なこと。それは、これは誰かがそういうふうにしようと図ってこうなったものではない、と言うことです。

そう、混ぜないで使えばどちらもそれなりにまとも動くはずの制度を、混ぜてしまったために生み出された妖怪人間ベムだったのです。

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