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2018年11月26日 (月)

カギカッコつきの「同一労働同一賃金」@『JIL雑誌』12月号

701_12 『日本労働研究雑誌』12月号は、これから3号連続で特集される「働き方改革シリーズ」の第1弾で「同一労働同一賃金」特集です。

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2018/12/index.html

特集:働き方改革シリーズ1「同一労働同一賃金」

という特集タイトルを見ても、別に何とも感じないかもしれませんが、いやこれ実は、ある意図が込められているんです。それは何かというと、特集の解題の中で神吉知郁子さんがこう述べています。

・・・もっとも,巻頭提言(浅倉むつ子「雇用管理区分差 別の合理性」)が指摘するように,この法改正が「同一 労働同一賃金」原則といえるかには議論がある。提言で は,正規・非正規間格差のみならず正規労働者間格差も 包摂するような,均等待遇の理念に根ざした包括的な雇 用管理区分差別禁止法制の実現が求められている。この ことは,裏を返せば,現状の非正規待遇格差禁止法制は 一般的・包括的な差別禁止法制ではないことを意味す る。続く論考でも明らかになるように,これらの法改正 は日本型雇用システムと密接に関わりながらその弊害 を是正しようとする試みであり,男女差別禁止原則とし て発展してきた本来的な同一(価値)労働同一賃金とも 異質の特徴を有する。そのため,本特集では,あえて「同 一労働同一賃金」とカッコつきで用いることにした。

これでもいささか奥歯にものが挟まった感じですが、もう少し率直な表現に翻訳すれば、本来非正規労働者の均等・均衡処遇問題というべき、あるいはそうとしか言えないような政策内容を、あえて政治的スローガン的用語法として「同一労働同一賃金」という看板を掲げて進められてきたことに対する、研究者としての良心的抵抗心がちらりと顔を出しているところということかもしれません。

提言 雇用管理区分差別の合理性 浅倉むつ子(早稲田大学法学学術院教授)

解題 働き方改革シリーズ1「同一労働同一賃金」編集委員会

論文
雇用形態間賃金差の実証分析 川口大司(東京大学大学院教授)
パートタイム・有期労働法の制定・改正の内容と課題 島田裕子(京都大学大学院准教授)
派遣先均等・均衡待遇原則と労働者派遣 小西康之(明治大学教授)
総合スーパーのパートの基幹化と均衡・均等処遇の取り組み─A社の2000年以降の人事制度の変遷の事例から 平野光俊(神戸大学大学院教授)
正社員と非正社員の賃金格差─人事管理論からの検討 島 智行(一橋大学教授)
研究ノート(投稿)無限定正社員と限定正社員の賃金格差 安井健悟(青山学院大学准教授)佐野晋平(千葉大学大学院准教授)久米功一(東洋大学准教授)鶴光太郎(慶應義塾大学大学院教授)

川口さんの論文は、厚労省の同一同一検討会の委員として実施し、同検討会に提示された実証分析の紹介で、興味深い事実を示しています。

同一労働同一賃金の実現に向けた検討会中間報告の一部として公表された『賃金構造基本統計調査』個票を用いた雇用形態間の賃金差の分析結果を報告する。賃金差の決定要因として重要な学歴情報がある一般労働者を対象に主要な分析を行った。雇用形態を定義する際には呼称・労働契約期間に基づく定義があるが、賃金差を説明する要因としては有期・無期の違いよりも呼称がより重要である。最終学歴・潜在経験年数・勤続年数・職種・役職・事業所の違いといった観察可能な属性の違いを制御しても、無期の正社員・正職員に比べて有期の非正社員・非正職員は男女ともに約18%所定内時間当たり賃金が低い。所定外賃金を含めても分析結果は変わらないが、賞与を含めて時間当たり賃金を計算すると、雇用形態間の賃金差はおよそ50%拡大する。

パートとか、有期とか、そういう契約上明確な雇用形態の違いでもって均等待遇を論じるというのはEU型法制の発想の輸入ですが、現実の日本の職場は、それよりも呼称、すなわち正社員かどうかという雇用システム上の身分こそが重要であるということが、すでに明確に示されていたことになります。

ちなみに、川口論文の冒頭近くの記述は、この問題をめぐる官僚たちや研究者たちを巡る人間模様の一端が垣間見えてなかなか面白い読み物となっています。

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