馬場公彦『世界史のなかの文化大革命』
中国に関する本は、時々気になって読むんですが、この本もその一つ。「世界史の中の」というにはやや話半分で、「アジアの中の」くらいかなという感もありますが、それにしても、文革に先立つインドネシアの9・30事件から始まり、その後のスハルト政権による共産主義者華僑虐殺、台湾中華民国と日本とアメリカをつなぐ中国包囲網の中で発動される毛沢東の文化大革命、というストーリーは、『マオ』などでも基本的に中国国内の視座から描かれていた文革を、かなり複合的な視座から見えるようにしてくれる本だと思いました。
インドネシアの9・30事件って、同時代的には日本でも結構報じられたそうなんですが、その後露呈してきた文化大革命やらポルポトの虐殺やらのおかげで、私世代にとってはほとんどよく知らない分野になっています。たまたま4年前に「アクト・オブ・キリング」という映画を見る機会があって、おかげで本書の導入はすっとは入れたところがありますが、日本が高度成長の昭和元禄に酔っていたころ、アジアはなかなか激動していたんですね。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-26a5.html (アクト・オブ・キリング)
本書にとって、読みようによっては余計な盲腸みたいに思える部分が、最後近くの日本共産党から除名された日本共産党山口県本部のなれの果てみたいな『長周新聞』という生きた化石みたいなマオイスト集団のはなしですが、今日ただいまなお天安門事件の学生たちへの武力鎮圧を断固支持するこういう人たちが、ちゃんと生き延びて言論活動をしていられるのが日本なんだなあ、という」思いをじわじわと掻き立ててくれるという意味で、本書にとって不可欠の部分なのかもしれません。
ちなみに、その『長周新聞』のサイトはこちらです。
https://www.chosyu-journal.jp/
いわゆる「共産趣味者」にとってはとても楽しめるコンテンツがいっぱいです。
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