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2018年10月25日 (木)

留学生の就職も「入社型」に?

昨年本ブログでこういう記事を書きました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-dee9.html(入管法上は日本の大学はとってもレリバンス)

・・・おやおや、「従事しようとする業務に必要な技術又は知識に係る科目を専攻していること が必要であり,そのためには,大学・専修学校において専攻した科目と従事し ようとする業務が関連していることが必要です」と言っていますよ。

日本人学生に対しては「大学で勉強したことは全部忘れて来い。会社で一から叩き込んでやる」というセリフが通用しても、留学生相手には・・・・というか、留学生を採用しようとする際に入管当局相手には通用しないということですな。

なぜか法務省入国管理局においては、日本国の大学というのは職業に必要な技術や知識を学ぶ教育機関であるようなのです。

いやもちろんそれは世界中どこでもそうなっている常識ではありますが、日本ではそれが非常識なのに、話が留学生になると突然再び常識と非常識が再逆転するという目くるめく世界が広がっているわけです。

念のため言いますと、入管当局からすればこれはあまりにも当たり前なのであって、もしそこをいい加減に許してしまったら、専門技術的外国人は入れるけれども単純労働力は入れないという数十年守ってきた大原則がガラガラと崩れてしまいます。だから当たり前。

しかしその「当たり前」が、日本社会の常識と真正面から衝突してしまうというところに、この問題の根深さがあるわけです。

かくも大学教育の職業的レリバンスを高らかに謳っていた入管行政が、もろくもメンバーシップ型労働社会の前に膝を屈するようです。

先月の日経新聞の記事を受けて、

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35015520V00C18A9MM8000/留学生の就職 条件緩和 年収300万円で業種問わず

法務省は外国人留学生の就労拡大に向け、新たな制度を創設する。日本の大学または大学院の卒業後、年収300万円以上で日本語を使う職場で働く場合に限り、業種や分野を制限せずに外国人の在留を認める。これまでは大学の専門分野に関連した就労しか認めていなかった。来春にも新制度を導入し、留学生の就労拡大につなげる。・・・

東北大学の川端望さんがこう論じています。

http://riversidehope.blogspot.com/2018/10/blog-post_22.html(留学生が日本の大学を卒業して就職する際の条件緩和について)

まず、現行基準の問題点を的確に指摘し、

・・・そもそも,現在の基準にもあいまいさがある。「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するためには,大学の専門分野に属する技術や知識を要する業務,または外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事しなければならない。その例は法務省のページに書かれている(※1)。しかし,この基準で厳密に「専門にかなった仕事に就く就職か」を判断することは難しい。なぜなら,日本企業はそもそも学卒新規採用の際に職務を明示しない,メンバーシップ型の採用をするからだ。わかるのは「入社」することだけであって,どんな職に「就職」するかはわからない。よって法務省が判断することには困難がある。

しかしそれがかろうじて防いでいたものをも指摘します。

しかし,現在の基準もまるきり使われていないわけではない。「技能労働(ブルーカラー業務)は不可」というところだけはチェックしていると思われるからだ。技能労働につくと疑われると不許可になることがある。この技能労働の範囲にもグレーゾーンはあるが,製造や建設,販売,サービスにおける現場作業労働を含むとみなされているようだ。たとえば,工場のラインや建設現場で作業員として働く,コンビニの店員になる,飲食店のウェイター,ウェイトレス,フロア接客などがみとめられないようだ。・・・

日本の労働社会の現実と乖離した「就職型」基準が、留学生の技能労働力としての「就職」の防止として機能していたのだと。

ところが、業種・分野・職種制限を外し,年収要件だけでチェックするとどうなるかというと、

・・・大学を卒業して工場の作業労働者,建設労働者になったり,バイトをしていたコンビニや居酒屋にそのまま就職するということである。労働力不足のおり,技能労働でも年収300万円を超えることは十分にあり得るから,年収要件はクリアーするかもしれない。・・・

そう、実はこれは、今臨時国会に提出される予定の、広範な技能労働分野に外国人を導入しようとする入管法改正の裏側で、それと同じ効果をもたらすかも知れないことを、法改正なしに法務省の基準だけでやれてしまうかも知れないという話なんですね。

そして、その根っこにある、より本質的な問題をも、川端さんはちゃんと指摘しています。

・・・そして,実は問題のおおもとには以下のことがあることを指摘したい。実は,大学入試さえしっかりしていれば,このような心配は不要なのだ。日本語学校と大学を経て技能労働というトンネルが懸念されるのは,「高校教育の内容を身にうけたものだけを大学に入学させる」という当然のことができていない現状が,日本の大学に存在するからだ。その理由については以前に書いた(※2)。あれこれの大学改革よりも,この基本的なところを何とかすべきではないか。

結局すべては、日本の大学の在り方に帰着しそうです。

(重要な追記)

上に引用した川端望さんのブログの当該記事に、「hamachan」なる名を騙ってコメントを書き込んでいる者がいます。

http://riversidehope.blogspot.com/2018/10/blog-post_22.html

わたくしは尊敬する川端さんに対し、このような失礼なものの言い方をすることは絶対にありません。

かつて私の名を騙ってあちこちのブログに失礼な書き込みをした「ふま」という者がおりましたが、いまだにこういう悪辣なことをして楽しんでいるのは大変残念なことです。

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