中野サンプラザとは何だったのか?
中野サンプラザの立て替えをめぐって、区長がどう言ったこう言ったという報道が流れていますが、しかしそもそも、中野サンプラザはなんであの中野駅前にでんと建っているのか、そもそも中野サンプラザとは何なのか、知っている人はどれくらいいるでしょうか?
いや現時点では、中野サンプラザとは、中野区と地元企業が出資する会社の運営する一民間施設です。
しかし、2004年に民営化されるまでは、全国勤労青少年会館という公的福祉施設だったのです。
1970年に制定された勤労青少年福祉法という法律にその根拠規定があります。
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/06319700525098.htm
勤労青少年福祉法 法律第九十八号(昭四五・五・二五)
第四章 福祉施設
(勤労青少年ホーム)
第十五条 地方公共団体は、必要に応じ、勤労青少年ホームを設置するように努めなければならない。
2 勤労青少年ホームは、勤労青少年に対して、各種の相談に応じ、及び必要な指導を行ない、並びにレクリエーション、クラブ活動その他勤労の余暇に行なわれる活動のための便宜を供与する等勤労青少年の福祉に関する事業を総合的に行なうことを目的とする施設とする。
3 労働大臣は、勤労青少年ホームの設置及び運営についての望ましい基準を定めるものとする。
(勤労青少年ホーム指導員)
第十六条 勤労青少年ホームには、勤労青少年に対する相談及び指導の業務を担当する職員(以下「勤労青少年ホーム指導員」という。)を置くように努めなければならない。
2 勤労青少年ホーム指導員は、その業務について熱意と識見を有し、かつ、労働大臣が定める資格を有する者のうちから、選任するものとする。
(雇用促進事業団が設置する施設)
第十七条 雇用促進事業団は、雇用促進事業団法(昭和三十六年法律第百十六号)第十九条第一項第五号の福祉施設のうち勤労青少年に係るものの設置及び運営を行なうにあたつては、勤労青少年の職業生活の動向及び生活の実態に即応するように配慮しなければならない。
この第17条に基づいて1973年に設置された全国勤労青少年会館の通称が中野サンプラザだったんですね。
サンプラザ中野も知らないかも知れない法律のトリビアでした。
ちなみに、この勤労青少年福祉法というのは、国民の権利も義務も規定していない、一言で言うと法律事項のないかなり空っぽの法律で、同時期に作られた勤労婦人福祉法と双璧でした。
ところが勤労婦人福祉法はその後男女雇用機会均等法に(ポケモン的意味において)進化し、今では押しも押されもしない立派な大法律に出世しましたが、勤労青少年福祉法の方はほったらかしのままでした。
こんな規定もあったんですが、
(勤労青少年の日)
第五条 ひろく国民が勤労青少年の福祉についての関心と理解を深め、かつ、勤労青少年がみずからすすんで有為な職業人としてすこやかに成育しようとする意欲をたかめるため、勤労青少年の日を設ける。
2 勤労青少年の日は、七月の第三土曜日とする。
3 国及び地方公共団体は、勤労青少年の日において、その日の趣旨にふさわしい事業が実施されるように努めなければならない。
いや、ほとんど圧倒的大部分の人が、そんな記念日は知らないと答えたでしょう。
この法律も遂に変身するときが来ました。
2017年、若者雇用対策ということで、勤労青少年雇用促進法が制定されたのですが、これは勤労青少年福祉法をほとんど全面改正したものでした。殻だけ残して実は全部取り代えた感じです。
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=345AC0000000098
もちろん、既に民営化されていた中野サンプラザは影も形もありません。
« 権丈善一『ちょっと気になる政策思想』 | トップページ | 『日本の労働法政策』 »
コメント