労働政策審議会労働政策基本部会報告書
本日ようやく、労働政策審議会労働政策基本部会報告書が公表されました。いくつか案が並べてあった副題も「進化する時代の中で、進化する働き方のために」になったようです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01176.html
いやだから、そういうポケモン風の「進化」ってことばのつかいかたはいかがなものかと思うんですが、これほど普及してしまったら仕方がないのでしょうね。
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000349763.pdf
はじめに
1.雇用・労働を取り巻く現状と課題
2.労働政策基本部会設置に当たっての問題意識
3.労働政策基本部会における審議事項
第1章 技術革新(AI 等)の動向と雇用・労働への影響について
1.技術革新(AI 等)の動向と雇用・労働への影響に関する主な議論
2.技術革新(AI 等)の雇用・労働への影響を構成する要素
3.技術革新(AI 等)の雇用・労働への影響に関する今後の課題
(1)技術革新の雇用労働への影響の実態把握
(2)AI 等の技術革新が雇用・労働に与える影響を踏まえた労働政策の検討
第2章 働く人全ての活躍を通じた生産性向上等に向けた取組について
1.働く人全ての活躍を通じた生産性向上等に関する現状
(1)生産性向上
(2)企業による人材育成と個人の自己啓発
(3)労働移動
2.働く人全ての活躍を通じた生産性向上等に関する今後の課題
(1)生産性向上
(2)企業による人材育成と個人の自己啓発
(3)労働移動
第3章 時間・空間・企業に縛られない働き方について
1.時間・空間・企業に縛られない働き方に関する現状
(1)雇用類似の働き方
(2)テレワーク
(3)副業・兼業
2.時間・空間・企業に縛られない働き方に関する今後の課題
(1)雇用類似の働き方
(2)テレワーク .
(3)副業・兼業
おわりに
いろんなことを並べていますが、これからの労働法政策という観点からすると、やはり「雇用類似の働き方」についての記述が注目されるべきでしょう。
2.時間・空間・企業に縛られない働き方に関する今後の課題
(1)雇用類似の働き方
雇用関係によらない働き方が拡大している中、労働行政でも従来の労働 基準法上の労働者だけでなく、より幅広く多様な働く人を対象とし、必要な 施策を考えることが求められている。
雇用関係によらない働き方は多種多様であって、行政が介入すべき問題 は何か、問題の原因は何か、誰が保護の対象となり得るのか、業種や職種に よってどのような違いがあるか等、このような働き方が拡大している背景 や理由なども踏まえながら、検討を進めることが必要である。
また、仮に保護する必要があるとすれば、発注者と雇用類似の働き方の者 に関するガイドラインを策定して対応することのほか、個別のケースに対 し労働者性の範囲を解釈により積極的に拡大して保護を及ぼす方法、労働 基準法上の労働者概念を再定義(拡大)する方法、雇用類似の働き方の者に 対し、労働関係法令等の保護を拡張して与える制度を用意する方法など、 様々な方法が考えられる。いずれにしても、保護の対象や保護の内容の検討 なしに結論は得られないことから、保護の必要性について検討する中で議 論すべきである。
雇用類似の働き方に関する保護等の在り方については、このような様々 な課題について、法律、経済学等の専門家による検討に速やかに着手するこ とが必要である。
検討に当たっては、保護の対象者たる「雇用類似の働き方の者」、契約条 件の明示、契約内容の決定・変更・終了のルールの明確化、スキルアップや キャリアアップ、出産、育児、介護等との両立、集団的労使関係、社会保障 等の保護の内容及び保護の方法について、実態把握と並行して検討を進め ていくことが必要である。その際には、 「雇用類似の働き方に関する検討会」 報告書で把握した実態や課題、また、今後更に把握すべきと指摘された事項を基に、雇用類似の働き方の者、雇用労働者双方を含めて関係者が納得感を 得られるよう、総合的に議論を進めていくべきである。
この問題は今世界的に労働関係者や労働研究者の熱心な議論の焦点になっており、様々な政策方向が論じられています。ここに挙がっている「個別のケースに対 し労働者性の範囲を解釈により積極的に拡大して保護を及ぼす方法」「労働 基準法上の労働者概念を再定義(拡大)する方法」「雇用類似の働き方の者に 対し、労働関係法令等の保護を拡張して与える制度を用意する方法」もその例ですが、この問題は評論家的な議論も重要ですが、労働法や民法など法律の専門家やマクロ的な視点からの経済学の専門家などもを交えて突っ込んだ議論も必要なので、まさに「雇用類似の働き方に関する保護等の在り方については、このような様々 な課題について、法律、経済学等の専門家による検討に速やかに着手するこ とが必要」です。
ということで、雇用環境・均等局の方で、もう一度雇用類似の検討会をたちあげて、ぜひもう少し具体的な方向付けを示すような議論が展開されることを期待したいと思います。
ちょうどそれに合わせたわけでもないのでしょうが、『労働調査』の8月号が「シェアリングエコノミーとは何か」を特集しています。
http://www.rochokyo.gr.jp/html/2018bn.html#8
特集 シェアリングエコノミーとは何か
プラットホームエコノミーと労働法上の課題-プラットホームエコノミーで働く就労者の労働者性について 浜村 彰(法政大学・法学部・教授)
ライドシェアを通して見るシェアリングエコノミーの問題 川上 資人(弁護士・東京共同法律事務所)
海外におけるシェアリングエコノミーの現状 山崎 憲((独)労働政策研究・研修機構・主任調査員)
シェアリングエコノミーによる変化と労働組合の対応 村上 陽子(連合・総合労働局長)
さらに、こちらは共産党の機関誌ですが、『経済』9月号も「『シェア・エコノミー』とは何か」を特集しているようです。
<特集> 「シェア・エコノミー」とは何か
◎シェア経済は「未来の働き方」か 森岡孝二
◎「雇用によらない働き方」 推進の狙いと拡大の実態 髙田好章
〔インタビュー〕ウーバーイーツ配達員の働き方は? 気軽に自由に働ける…その現場で
◎「ギグエコノミー」がはらむ労働・雇用の法的問題 川上資人
◎新しいビジネスモデルの虚像
「ギグエコノミー」めぐる国際的な対応動向 山崎 憲
◎「市場の両面性」とシェア・エコノミー 高野嘉史
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