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2018年9月

ウェビナール

ウェビナール(webinar)って何?

いや、私も今初めて知った言葉ですが、ウェブ(web)とゼミナール(seminar)をくっつけた言葉のようですね。

https://www.eurofound.europa.eu/events/webinar-platform-work(Making the platform economy work well for workers - Webinar)

On 8 November 2018 from 14:00 to 16:00 CET, Eurofound will host a webinar: Making the platform economy work well for workers. Platform workers are one of the new forms of employment making a global impact. Eurofound’s 2-hour webinar will provide a forum to go beyond the debate about the challenges inherent to this new form of employment and focus on possible solutions to tackle the various work and employment-related implications of platform work.

During the webinar, Eurofound will present its fresh research on platform work. Moderated by Financial Times columnist Simon Kuper, a panel discussion will bring together business, government and social partners to illustrate experiences and share new, innovative approaches aimed at addressing the downsides of this employment form.
Examples will include the first collective trade union agreement on platform work in Europe, a national tax regime beneficial to platform workers, and a platform worker.

This webinar is aimed at platform workers, social partners, EU and national policy makers as well as academics and representatives from civil society.

中身は今世界中の労働関係者のホットな話題になっているプラットフォーム経済で、オンラインでパネルディスカッションをするようです。

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労働関係法令審議委員会議事録

262_hp週末に届いていた『季刊労働法』262号をぱらぱらとめくっていくと、早稲田の竹内(奥野)寿さんが「昭和27年労働組合法改正立法史料研究の可能性ないし限界」という論文を書かれているのですが、その中に、立法資料の存否状況という表があって、1951年10月12日から1952年3月19日までの労働関係法令審議委員会の議事録が確認できないということになっているのですが、そのうち総会の議事録はJILPTの図書館に所蔵されています。

■論説■ 昭和27年労働組合法改正立法史料研究の可能性ないし限界 早稲田大学教授 竹内(奥野)寿

たらたらとした議論で、賀来局長には面白くない議事録だったでしょうが、でも資料としては残っているので、研究には使えると思います。

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障害者雇用率「水増し」問題の法制度史的根源@WEB労政時報

WEB労政時報に「障害者雇用率「水増し」問題の法制度史的根源」を寄稿しました。かつての解説書を大幅に引用して解説しています。

https://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=791

去る8月16日、国や地方公共団体の障害者雇用率が水増しされていたという報道がなされ、いわゆる炎上状態となりました。その後8月28日に厚生労働省が公表した「国の行政機関における平成29年6月1日現在の障害者の任免状況の再点検結果について」によると、この事態が明らかになった経緯は次のようなことでした。

①平成30年5月11日に財務省から厚生労働省(担当:職業安定局雇用開発部障害者雇用対策課)に対し、法に基づく通報の対象となる障害者の範囲について照会がありました。
②これを踏まえ、平成30年5月16日に、厚生労働省から国の行政機関に対し、平成29年6 月1日現在の状況の通報において計上した障害者の範囲について、問い合わせを行いました。
③その結果、複数の国の行政機関において、障害者雇用義務制度の対象となる障害者の範囲に誤りが見られたことから、平成30年6月20日に、厚生労働省障害者雇用対策課長から各機関の人事担当課長に対し、平成29年6月1日現在の状況の通報内容について、通報の対象となる障害者の範囲について再点検を行い、通報内容に修正が必要な場合は再提出を行うことを依頼しました。

この再点検により、改めて提出された通報の結果から、これまで雇用率を達成しているとされてきた国の機関が(厚生労働省などごく一部を除き)極めて低い状況にあることが明らかになったのです。・・・・・

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『DIO』340号はオリパラ特集

Dio『DIO』340号はオリパラ特集です。といっても、もちろん連合総研の機関誌なんですから、スポーツそれ自体ではなく、その周辺でオリンピック・パラリンピックを支える人々の労働問題を取り上げています。

http://www.rengo-soken.or.jp/dio/pdf/dio340.pdf

オリパラを支える人々のやりがいを守る−そのための健康安全対策−

過重労働と健康・安全に関する知見から−東京2020オリンピック・パラリンピックを支える人々の健康安全対策− 山内貴史(他 5名)

オリンピック・パラリンピックボランティアのマネジメントと補償問題 小野晶子

宿泊業労働者の健康安全への懸念と課題 岡本賢治

日建連における安全衛生対策及び担い手の確保・育成の取組み 渡辺博司

過労死の懸念ということで考えれば、やはり働き方改革でも時間外の上限が先延ばしにされたままオリパラを迎えなければならない建設業が最大の課題です。ホワイトカラーな皆さんは、自分たちと同類の労働者の裁量制やら高度プロフェッショナルには感心が高い割に、自分たちとは違う人種だと思っているらしい建設業や自動車運転手の超長時間労働には相対的に関心が薄い傾向にありますけど。閑話休題。

ですが、最近ネット上で炎上した話題ということでいえば、例のボランティアの話が注目度が高いでしょう。書いているのは、JILPTの小野晶子さん。

最後のパラグラフで、労働法の観点から見て大変興味深い提起をしています。

ボランティア活動で忘れられがちなのが、活動時の事故や怪我等への補償である。オリンピック・パラリンピックにおいても民間のボランティア保険に加入することになるだろうが、その内容はまだはっきりしていない。
 国をあげて行うイベントのボランティアなのであれば、この機にボランティアの法的位置づけを明確にした上で、補償等を充実させることも考えた方がよい。大会ボランティアや都市ボランティアで、ボランティア休暇制度を取得して参加した者が、活動中に事故や怪我にあった場合には労災保険が適用されるようにし、次年度にそれを理由に企業の保険料が上がらない時限的な特別法的措置を入れる。東日本大震災の被災地の企業では同様の措置がされており、不可能では無いはずだ。
 海外では、法律によりあらかじめボランティアの「労働者性」を否定した上で、報酬や社会保障等を規定して活用する動きもみられる12。例えば、アメリカでは、「国内ボランティア振興法」 の中で「支払い(stipend)」の定めが規定されている。これは連邦政府からNPO等に委託されて実施されるプロジェクト(主にアメリカ国内の貧困克服や低所得層の社会問題)に登録、任命されるボランティアに対し規定の謝礼金や手当等が支払われる仕組みだ。
 ドイツでは「社会的活動年」や「環境活動年」といった、若者を中心にボランティアを推進する枠組みがあり、このボランティアプログラムに参加する人には、手当や各種社会保障、労災保険法が適用される。フランスでは、「社団ボランティア」や「任意的民間役務」といったプログラムに関して手当や社会保障が適用される。これらのボランティアプログラムは、職業訓練や就業支援の目的も兼ねており、受入団体が活動遂行証明書を発行することもある。
 日本では東日本大震災の復興に際して多くのボランティアが活躍したが、被災地で活動したボランティアの約半数が何の保険にも入らず活動していたことがわかっている13。今後、国や地域がボランティアを社会の力として積極的に活用していくのであれば、ボランティアの地位を法律の中で規定し、補償制度等を整備していくことが望まれる。

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『日本の労働法政策』

Japan

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中野サンプラザとは何だったのか?

Nakano_sunplaza_200903中野サンプラザの立て替えをめぐって、区長がどう言ったこう言ったという報道が流れていますが、しかしそもそも、中野サンプラザはなんであの中野駅前にでんと建っているのか、そもそも中野サンプラザとは何なのか、知っている人はどれくらいいるでしょうか?

いや現時点では、中野サンプラザとは、中野区と地元企業が出資する会社の運営する一民間施設です。

しかし、2004年に民営化されるまでは、全国勤労青少年会館という公的福祉施設だったのです。

1970年に制定された勤労青少年福祉法という法律にその根拠規定があります。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/06319700525098.htm

勤労青少年福祉法 法律第九十八号(昭四五・五・二五)

第四章 福祉施設

 (勤労青少年ホーム)

第十五条 地方公共団体は、必要に応じ、勤労青少年ホームを設置するように努めなければならない。

2 勤労青少年ホームは、勤労青少年に対して、各種の相談に応じ、及び必要な指導を行ない、並びにレクリエーション、クラブ活動その他勤労の余暇に行なわれる活動のための便宜を供与する等勤労青少年の福祉に関する事業を総合的に行なうことを目的とする施設とする。

3 労働大臣は、勤労青少年ホームの設置及び運営についての望ましい基準を定めるものとする。

 (勤労青少年ホーム指導員)

第十六条 勤労青少年ホームには、勤労青少年に対する相談及び指導の業務を担当する職員(以下「勤労青少年ホーム指導員」という。)を置くように努めなければならない。

2 勤労青少年ホーム指導員は、その業務について熱意と識見を有し、かつ、労働大臣が定める資格を有する者のうちから、選任するものとする。

 (雇用促進事業団が設置する施設)

第十七条 雇用促進事業団は、雇用促進事業団法(昭和三十六年法律第百十六号)第十九条第一項第五号の福祉施設のうち勤労青少年に係るものの設置及び運営を行なうにあたつては、勤労青少年の職業生活の動向及び生活の実態に即応するように配慮しなければならない。

この第17条に基づいて1973年に設置された全国勤労青少年会館の通称が中野サンプラザだったんですね。

サンプラザ中野も知らないかも知れない法律のトリビアでした。

ちなみに、この勤労青少年福祉法というのは、国民の権利も義務も規定していない、一言で言うと法律事項のないかなり空っぽの法律で、同時期に作られた勤労婦人福祉法と双璧でした。

ところが勤労婦人福祉法はその後男女雇用機会均等法に(ポケモン的意味において)進化し、今では押しも押されもしない立派な大法律に出世しましたが、勤労青少年福祉法の方はほったらかしのままでした。

こんな規定もあったんですが、

 (勤労青少年の日)

第五条 ひろく国民が勤労青少年の福祉についての関心と理解を深め、かつ、勤労青少年がみずからすすんで有為な職業人としてすこやかに成育しようとする意欲をたかめるため、勤労青少年の日を設ける。

2 勤労青少年の日は、七月の第三土曜日とする。

3 国及び地方公共団体は、勤労青少年の日において、その日の趣旨にふさわしい事業が実施されるように努めなければならない。

いや、ほとんど圧倒的大部分の人が、そんな記念日は知らないと答えたでしょう。

この法律も遂に変身するときが来ました。

2017年、若者雇用対策ということで、勤労青少年雇用促進法が制定されたのですが、これは勤労青少年福祉法をほとんど全面改正したものでした。殻だけ残して実は全部取り代えた感じです。

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=345AC0000000098

もちろん、既に民営化されていた中野サンプラザは影も形もありません。

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権丈善一『ちょっと気になる政策思想』

357662 権丈善一さんより『ちょっと気になる政策思想 社会保障と関わる経済学の系譜』(勁草書房)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.keisoshobo.co.jp/book/b357662.html

所得は平等に分配したほうが経済の活力が高まるのか、不平等に分配したほうが高まるのか? 政策がどのような前提から導き出されているものか自覚のないまま行われる社会保障論議の愚を説き、理論と思想の関係を解き明かしながら有効な政策形成を提言する。現在の状況下、わが国がどのような社会保障、経済政策をとるべきかを示唆する意欲作。

例によって権丈節満載の痛快な本であることには違いないのですが、これまでの社会保障制度を中心に論じた本と少し趣が違って、とりわけ理論編という第2章と第3章は、権丈風の経済思想史講義といった趣があります。

権丈風経済思想史といえば、もちろん「右側の経済学」と「左側の経済学」ですね。これらはどこが違うのか?

・・・その違いは、経済規模を規定する主な要因を供給とみなすか、需要とみなすかで生まれます。右側は、経済は供給が規定すると考える。左側は、需要が経済の規模、そして成長力、推進力を規定すると考えます。もっと言えば、右側の経済学では、人は貨幣からは効用を得ることがなく貨幣そのものへの需要は想定されないのですが、左側は、人は貨幣から効用を得、貨幣そのものへの需要があると考えます。

 そして左側の経済学では、貨幣からの効用が追加的な財・サービスからの効用よりは大きいときは経済は停滞し、経済規模が拡大するのは、消費者にとっての追加的な財・サービスからの効用が、貨幣からの効用よりも大きくなるときに起こると考えます。・・・

というようないかにも経済学の先生の講義みたいな話の間に、例によってベーシックインカムを持ち上げる人への皮肉たっぷりなセリフが挟まれたりもします。

・・・余談ついでに言っておきますと、先に触れたベーシックインカムって、cool head and cool heartとwarm head and warm heartの両方から支持されるんですよね・・・・・困ったことに。

ほひ、ベーカム派にcool head but warm heartは見当たらない、と。

はじめに
拙著文献表
【応用編 Ⅰ】
第1章 社会保障政策の政治経済学──アダム・スミスから,いわゆる“こども保険”まで
 概要の紹介
 働くことの意味とサービス経済の意味
 人口減少社会と経済政策の目標
 手にした学問が異なれば答えが変わる──上げ潮派とかトリクルダウンとかの話
 経済学と政策思想
 最後に,ミュルダールと,いわゆるこども保険について──ミュルダール夫妻の『人口問題の危機』
【理論編】
第2章 社会保障と関わる経済学の系譜序説──サミュエルソンの経済学系統図と彼のケインズ理解をめぐって
 はじめに
 サミュエルソンが描く経済学の系統図とその問題点
 サミュエルソンの自信とノーベル経済学賞
 社会保障と関わる経済学の系譜
 経済学と政策との関わりを示す一例
第3章 社会保障と関わる経済学の系譜
 はじめに
 マンデヴィルとスミス
 スミスとマルサス
 ママリー,ホブソンとケインズ
 ケインズのゲゼル評
 ゾンバルトの『恋愛と自由と資本主義』
 経済政策思想の流れ
 右側の経済学と左側の経済学の相違
 右側の経済学とモンペルラン・ソサイアティ
 左側の経済学における不確実性とミンスキー,そして過少消費論
 資本主義の成熟と社会保障
【応用編 Ⅱ】
第4章 合成の誤謬の経済学と福祉国家
 合成の誤謬と自由放任の終焉
 合成の誤謬に基づく政策に抗う経済界
 経済界のプロパガンダと規制緩和圧力
 成長政策と戦略的貿易論
第5章 公的年金保険の政治経済学
 年金界とのかかわりのきっかけ
 右側の経済学と左側の経済学
 ケインズの嫡子たち
 経済政策思想の流れ
 セイの法則かケインズの合成の誤謬か
 手にした学問が異なれば答えが変わる
 リスクと不確実性
 経済学と政治,政策,そして思想とのつながり
 積極的賦課方式論
 公的年金が実質価値を保障しようとしていることの
 説明の難しさ
 市場を利用することと引き換えに喪っていったもの
 素材的・物的な視点からみた積立方式と賦課方式の類似性
 積立方式信奉者たちの論
 本日のメッセージ
第6章 研究と政策の間にある長い距離──QALY概念の経済学説史における位置
 HTAとのかかわり
 実証分析と規範分析
 規範経済学の学説史──基数的効用から序数的効用へ
 厚生経済学から新厚生経済学へ
 アローの不可能性定理と分配問題
 経済学と価値判断
 政策論と価値判断
 QALYに内在する基数的効用
 HTAの政策立案への活用可能性
第7章 パラダイム・シフトほど大層な話ではないが切り替えたほうが望ましい観点
 はじめに
 ダーウィン,マックス・プランクとパラダイム・シフト
 クーンにパラダイム・シフトを着想させたもの
 社会経済政策を考える上でのスタート地点での観点について
第8章 医療と介護,民主主義,経済学
 投票者の合理的無知
 世論7割の壁
 予算編成の現状の共有
 手にした学問が異なれば答えが変わる
おわりに
【知識補給】
思想と酩酊体質
エコノ君の性格
がんばれ,ベーシック・インカム!──社会保障の正確な理解もよろしく
「市場」に挑む「社会」の勝算は?
合成の誤謬考──企業の利潤極大化と社会の付加価値極大化は大いに異なる
アダム・スミスとリカードの距離──縁付きエッジワース・ボックス
マーシャルを読んだシドニー・ウェッブのラブレター……誰に?
制度学派とリベラリズム,そしてネオ・リベラリズム
税収の推移と見せかけの相関および国のガバナンス問題
スキデルスキーのケインズ論
大登山家ママリーとマッターホルン,
そしてスイスアルプスとマーシャル
独占的競争という戦い方……
Positiveの訳は実証で良いの?
福澤諭吉とミュルダール
クーンが,パラダイム・シフトを捨てた理由
ポパー,ハイエク,ライオネル・ロビンズの親和性
市場は分配が苦手なのに繰り返し出てくるトリクルダウン

図表一覧
事項索引
人名索引

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『季刊労働法』2018年秋号

262_hp 『季刊労働法』2018年秋号の案内が労働開発研究会のサイトにアップされています。

http://www.roudou-kk.co.jp/books/quarterly/6200/

特集は「SDGsと責任ある企業の労働慣行」です。

企業の活動領域やサプライチェーンが国を越えて世界のあらゆる国,地域に広がりつつある中,企業に求められる法令遵守の対象は,本国及び投資受入国の国内法令だけでなく,域外適用のある外国法令や政府調達規則にも及び,国連指導原則に代表されるCSR規範も企業に重大な影響を及ぼしています。それを反映してか,ILOの多国籍企業宣言,経団連の企業行動憲章が相次いで改訂され,企業の社会的責任(CSR)に関する議論が進んでいます。また,東京オリンピック・パラリンピック組織委員会策定「持続可能性に配慮した調達コード」にも長時間労働の禁止,ワークライフバランスの推進などとの記載があります。こうした背景から,今号では特集「SDGsと責任ある企業の労働慣行」をお送りします。

SDGsと責任ある企業の労働慣行 神戸大学・大阪女学院大学名誉教授 香川孝三

2017年改定版ILO多国籍企業宣言 ~グローバルビジネスとディーセント・ワーク~ 国際労働機関(ILO)駐日事務所プログラム・オフィサー 渉外・労働基準専門官 田中竜介

「ビジネスと人権」に関するグローバルな立法動向と労働法実務への影響 弁護士 高橋大祐

国際行動規範をいかに内在化するか ~ SDGsを経営に統合するために~ 明治大学特任教授・損保ジャパン日本興亜CSR室シニアアドバイザー 関 正雄

労働CSRの展開と労組等の取組み ~人権の主流化とSDGsへの対応 日本ILO協議会企画委員 国際労働財団アドバイザー 熊谷謙一

日本におけるグローバル枠組み協定(GFA)締結に向けた取り組み UAゼンセン副会長 郷野晶子

国際労働関係ではよく出てくる話題なのに、メインストリームの労働法学ではほとんど取り上げられることのないこのテーマを堂々の第1特集に取り上げています。

続く第2特集は「外国人労働政策の針路」です。

外国人労働政策の動向と課題 佐賀大学教授 早川智津子

入管法及び技能実習法の実務と今後の課題 弁護士 山脇康嗣

外国人労働者の権利侵害とその救済の実際 神戸大学大学院准教授 斉藤善久

第2特集は,深刻な人手不足を背景に,動きつつある,外国人労働者の管理体制,入管政策,そして,人権侵害とその保護の実際について取りあげます。最新動向を盛り込みながら、共生社会への示唆を得ます。

うーん、これはしかし、タイミングがあまりにもドンピシャすぎて、季刊誌の特集としてはややフライング気味になってしまった感がありますな。

今年3月の経済財政諮問会議以来、急激に技能労働者の大幅な受入れ政策に舵を切ってきた外国人労働者法政策をきちんと分析するには、この時点での特集は「ぬふふ、おぬし早まったな!」という言葉が思わず漏れてしまいます。

その他の記事は、

■時言■ 混乱を招いた最高裁二判決―労契法20条の解釈基準 ~最高裁第二小法廷平成30年6月1日判決~ 明治大学法科大学院教授 野川 忍

■座談会■ クラウドワーク研究の現段階 ―比較法研究・PFヒアリングを踏まえての中間的総括 法政大学客員教授(司会) 毛塚勝利 早稲田大学名誉教授 石田 眞 法政大学教授 浜村 彰 法政大学教授 沼田雅之

■論説■ 昭和27年労働組合法改正立法史料研究の可能性ないし限界 早稲田大学教授 竹内(奥野)寿

労働法規範における公序の失墜 ―デロゲーションから補足性原理へ― 九州大学名誉教授 野田 進

■アジアの労働法と労働問題 第34回■ 日本でアジア労働法を学ぶ意義 神戸大学・大阪女学院大学名誉教授 香川孝三

■イギリス労働法研究会 第30回■ イギリス労働法のWorker概念(1) 北九州市立大学准教授 石田信平

■労働法の立法学 第51回■ 職場のハラスメントの法政策 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口桂一郎

■判例研究■ 黙示的な職務命令による勤務中/通勤中の災害の公務起因性 地方公務員災害補償基金山梨県支部長事件・東京高判平成30・2・28TKC25549680 = D1-Law.com28261417 上智大学教授 富永晃一

■書評■ 野川忍著『労働法』 評者 同志社大学教授 土田道夫

■キャリア法学への誘い 第14回■ 公務員制度とキャリア権 法政大学名誉教授 諏訪康雄

■重要労働判例解説■ 有期契約労働者と無期契約労働者との処遇格差の不合理性 (Ⅰ)ハマキョウレックス事件・最2小判平成30年6月1日労働判例1179号20頁 (Ⅱ)長澤運輸事件・最2小判平成30年6月1日労働判例1179号34頁 國學院大學教授 本久洋一

巻頭と巻末で、野川忍さんと本久洋一さんがハマキョウと長澤を取り上げているというのもたくまざる面白さです。

わたくしの連載は「職場のハラスメントの法政策」です。

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SAPIXの中学生はすごいな

V2017_e1k4424w480x300SAPIXの「リベラル読解論述研究」というページに、

http://www.y-sapix.com/articles/41999/

使用書籍が紹介されているんですが、9月の中学3年生用の使用書籍に『働く女子の運命』が挙がっているようです。

中3 …… 『働く女子の運命』濱口桂一郎

男女が働く機会は均等である。この認識は、法的に保障され、現代社会でも広く共有されています。就職活動の際も「女性の積極的な登用」を前面に出す企業は多く存在します。しかし、近代社会が成立した時代から現代に至るまで、女性はどのように働いてきたか。その実情を見ていくと、日本社会はずっと、活躍する女性の姿から、遠く離れてきたことがわかります。その歴史を踏まえて、女性は社会でどう働くのが理想的なのか。本書を読んで、考えていきましょう。

中3でこんな本読ますんか、と思ったら、「リベラル通信 2018年9月号」では、ハンナ・アレントのゾーエーだのビオスだのまで出てきますな。

いやあ、SAPIXの中学生はすごいな。

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水島・君塚編著『現代世界の陛下たち』

372233水島治郎・君塚直隆編著『現代世界の陛下たち デモクラシーと王室・皇室』(ミネルヴァ書房)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.minervashobo.co.jp/book/b372233.html

21世紀の現代、世界の「陛下たち」はどのような存在なのか。本書は、ヨーロッパ・アジア・日本をはじめとする世界の王室・皇室の歴史から現在をみつめ、デモクラシーのもとにある君主制・天皇制のありようを明らかにする。時代の流れに沿い、変容しつつも「伝統」をその象徴の核とする各国王室・皇室の多様な魅力や課題をエピソード豊富に描き出す。「陛下の生前退位」に揺れる日本への示唆にも富む一冊。

「はじめに」で、明仁天皇の「おことば」から始まった生前退位が、実はオランダ、ベルギー、スペインの各王、女王の近年の退位に倣ったものであったことが示され、さらに明仁天皇の「おことば」がオランダのベアトリクス女王の退位演説とよく似ていることが示されて、あらためて日本の天皇がこういう世界の立憲君主制の一環であることを思い出さされます。

お送りいただいた水島さんは、本ブログでも紹介した『ポピュリズム』の著者でもあり、本書のタイトルの「現代世界」にはポピュリズムという背景も含まれています。

というか、私自身が3年間住んでいたベルギーにおける国王ってのは、フラマンでもワロンでもない唯一の一族であって(元はドイツ人)、それゆえベルギーという複数民族国家の統一の象徴であり、それゆえエスニックなナショナリズムを掲げる極右ポピュリズムにとっては目の敵になるという、一見奇妙な、よく考えるとなるほどとなる存在なんですね。

右翼というと、王よりも王党派というのが伝統的な立ち位置のはずですが、フランデレン独立と移民排斥を唱える極右政党が国王を敵視し、国会で「共和政万歳!」と叫ぶというのは一見意外です。

しかし、改めて考えると、天皇陛下を敬うのが大原則のはずの日本の右翼が、少なくともその一部のネトウヨが、明仁天皇や美智子皇后を極左呼ばわりする日本も似たようなものなのかも知れません。

はじめに

序 章 現代世界の王室(君塚直隆)
 1 現代世界の陛下たち
 2 20世紀に消えていった王室
 3 21世紀の王室の運命

第1章 女王陛下とイギリス王室――地上最後の王様?(君塚直隆)
 1 千年の歴史をせおって
 2 ジョージ五世の遺訓
 3 リリベットの登場と帝国の再編
 4 21世紀のイギリス王室

第2章 スペイン政治と王室――安定装置としての君主制(細田晴子)
 1 不安定な君主制
 2 不安定な共和制・君主制か、安定した独裁制か
 3 安定した独裁制と後継者——なぜフランコは君主制を選択したのか?
 4 民主化移行——フランコ体制の後継者からデモクラシーの国王へ
 5 21世紀のスペイン王室——カリスマ国王から大衆化した王室へ

第3章 オランダにおける王室の展開――時代の流れに沿って(水島治郎)
 1 デモクラシーと共存する王制
 2 女王の世紀
 3 三人の「殿下」たち
 4 21世紀に生きる王室

第4章 ベルギー国王とデモクラシーの紆余曲折――君主を戴く共和国(松尾秀哉)
 1 国王の「一時的な退位」!?
 2 ベルギーとは
 3 ベルギー政治と国王の紆余曲折
 4 転換点 クビになったレオポルド三世
 5 分裂危機の時代の国王
 6 最後に――テロの時代の国王

第5章 「国の父」を亡くしたタイ――民衆の敬愛はいかに培われたか(櫻田智恵)
 1 「ラーマ九世の時代に生まれた」誇り
 2 「国王が政治の上にいる民主主義」?
 3 実は演出家? プーミポン国王のメディア戦略
 4 王位継承と政治的駆け引き

第6章 デモクラシーと「国体」は両立するか?――戦後日本のデモクラシーと天皇制(原 武史)
 1 敗戦と昭和天皇
 2 昭和天皇と高松宮の憲法認識
 3 昭和天皇の退位問題
 4 秩父宮と皇太后節子
 5 デモクラシーと「国体」の両立
 6 「詔書」と「おことば」
 7 天皇は「人間」になり得るか――結びに代えて

第7章 デモクラシーと君主制(宇野重規)
 1 生き残った君主制
 2 君主制とデモクラシーは矛盾するか――制度論的考察
 3 王・貴族・民衆の複雑な関係
 4 フランス革命の衝撃
 5 王室を飼いならす?――W・バジョットの王室論
 6 デモクラシーと君主制は両立するか


おわりに
人名・事項索引

コラム
 1 王冠をかけた恋
 2 ロイヤル・ウェディングの起源
 3 本家はどちら?
 4 多才な北欧の君主たち
 5 日蘭皇室・王室の絆——マキシマ妃は雅子妃の「ロールモデル」?
 6 ロマノフの亡霊?
 7 帝国の幻影
 8 巨人の国の大きな王様
 9 タイの神器
 10 五年ごとの国王陛下?
 11 両陛下が「意思」を示すとき——戦没者慰霊と被災地見舞い
 12 王女プリンセスたちの活躍
 13 アラブ世界の王妃の新たなスタイル

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70歳雇用時代の大前提

日経新聞が「70歳雇用、努力目標に 多様な働き方へ政府検討」という記事を載せています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35011340V00C18A9MM8000/

政府は高齢者が希望すれば原則70歳まで働けるよう環境整備を始める。現在は原則65歳まで働けるよう企業に義務付けており、年齢引き上げの検討に入る。2019年度から高齢者の採用に積極的な企業を支援する。その上で来年以降に高年齢者雇用安定法の改正も視野に70歳まで働けるようにする。少子高齢化や人口減少社会を見据え、多様な働き方を後押しするのが狙い。・・・

今秋から未来投資会議と経済財政諮問会議で議論するそうですが、その際、念頭に置いておいてほしいのは、現行の65歳継続雇用制度自体が抱えている矛盾です。

41mvhocvl拙著『日本の雇用と中高年』で述べたことですが、

・・・さらに、強制退職年齢としての定年は60歳にとどめ置いたまま、全員65歳まで継続雇用せよという、論理的には意味不明な法制度をとらざるを得ない現在の高齢者雇用政策の矛盾を、その根本から解消する道筋もジョブ型正社員の中に見出すことができます。
 60歳での年齢による強制退職は許されないはずなのに、論理的にはそれと同義の60歳定年を認めている理由は、65歳定年にしてしまうと60歳までのフルメンバーシップを65歳まで引きずってしまうというただ一点にあります。それまで年功で積み上がってきた賃金処遇のいっさいをチャラにして、一介の非正規労働者として雇い直すという儀式を経ることで、貢献と報酬の釣り合った雇用関係を作ろうという苦肉の策であるわけです。
 しかしながら、このやり方は労働者を年齢でもって一律に正規から非正規に移行させることを意味します。問題は、メンバーシップ型の日本型雇用システムにおいては、非正規というのは会社のメンバーではなく、それゆえ重要な仕事には従事させられない周辺的な存在であるという意味合いがあることです。「嘱託」といういささか奇妙な日本語は、こういうかつて会社のメンバーであった非正規労働者を指す言葉です。もちろん、労働者には個人差があり、会社のフルメンバーとしての活動には耐え難い人も少なくないでしょう。しかし、フルメンバーとして活躍できる人をも一律に非正規化することは、社会的な人的資源の有効活用という面からして、やはり問題があるのではないでしょうか。
 現在の65歳までの継続雇用においてすらこのような問題がある中で、そのシステムを維持したまま70歳までの雇用が実現できる可能性は少ないというべきです。65歳を超えると、労働者の個人差がますます拡大します。「嘱託」という一律の非正規扱いですら耐え難い人もいる一方で、なお矍鑠とフルメンバーとしての活躍ができる人も出てくるとすると、そういう個人差に対応したシステムを構想する必要はますます高まってくるでしょう。すなわち、個々の労働者の能力に応じてさまざまにその従事する職務を定め、その職務に基づいて賃金を決定する仕組みにしていく必要があるのです。
 これは、高齢者雇用の部分だけを考えていればいい問題ではありません。壮年期から中年期における賃金制度を年齢に基づく生活給制度のままにしておいて、60歳を超えたらとたんに個人の従事する職務に応じた職務給にするというのは難しいでしょう。少なくとも中高年期以降の賃金制度については、中長期的には生活給的な年功賃金制度から、個々の労働者の従事する職務に応じた職務給の方向に移行していかざるを得ないように思われます。つまり、継続雇用の矛盾を解消し、60歳の前後で一貫した働き方を実現するためには、中高年期からジョブ型正社員のトラックに移行しておくことが不可欠の条件となるのです。・・・

少なくとも、メンバーシップ型を前提とした新卒一括採用という社会制度に適応するように社会的に仕向けられてきた若者を、いきなり荒野に放り出すような無謀なやり口をするよりも、こちらの方が遥かに重要で喫緊の課題でしょう。

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労働政策審議会労働政策基本部会報告書

本日ようやく、労働政策審議会労働政策基本部会報告書が公表されました。いくつか案が並べてあった副題も「進化する時代の中で、進化する働き方のために」になったようです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01176.html

いやだから、そういうポケモン風の「進化」ってことばのつかいかたはいかがなものかと思うんですが、これほど普及してしまったら仕方がないのでしょうね。

https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000349763.pdf

はじめに 

1.雇用・労働を取り巻く現状と課題

2.労働政策基本部会設置に当たっての問題意識

3.労働政策基本部会における審議事項

第1章 技術革新(AI 等)の動向と雇用・労働への影響について

1.技術革新(AI 等)の動向と雇用・労働への影響に関する主な議論

2.技術革新(AI 等)の雇用・労働への影響を構成する要素 

3.技術革新(AI 等)の雇用・労働への影響に関する今後の課題

(1)技術革新の雇用労働への影響の実態把握

(2)AI 等の技術革新が雇用・労働に与える影響を踏まえた労働政策の検討 

第2章 働く人全ての活躍を通じた生産性向上等に向けた取組について

1.働く人全ての活躍を通じた生産性向上等に関する現状

(1)生産性向上

(2)企業による人材育成と個人の自己啓発

(3)労働移動

2.働く人全ての活躍を通じた生産性向上等に関する今後の課題

(1)生産性向上

(2)企業による人材育成と個人の自己啓発

(3)労働移動

第3章 時間・空間・企業に縛られない働き方について

1.時間・空間・企業に縛られない働き方に関する現状

(1)雇用類似の働き方

(2)テレワーク

(3)副業・兼業

2.時間・空間・企業に縛られない働き方に関する今後の課題

(1)雇用類似の働き方

(2)テレワーク .

(3)副業・兼業

おわりに

いろんなことを並べていますが、これからの労働法政策という観点からすると、やはり「雇用類似の働き方」についての記述が注目されるべきでしょう。

2.時間・空間・企業に縛られない働き方に関する今後の課題

(1)雇用類似の働き方

 雇用関係によらない働き方が拡大している中、労働行政でも従来の労働 基準法上の労働者だけでなく、より幅広く多様な働く人を対象とし、必要な 施策を考えることが求められている。

 雇用関係によらない働き方は多種多様であって、行政が介入すべき問題 は何か、問題の原因は何か、誰が保護の対象となり得るのか、業種や職種に よってどのような違いがあるか等、このような働き方が拡大している背景 や理由なども踏まえながら、検討を進めることが必要である。

 また、仮に保護する必要があるとすれば、発注者と雇用類似の働き方の者 に関するガイドラインを策定して対応することのほか、個別のケースに対 し労働者性の範囲を解釈により積極的に拡大して保護を及ぼす方法、労働 基準法上の労働者概念を再定義(拡大)する方法、雇用類似の働き方の者に 対し、労働関係法令等の保護を拡張して与える制度を用意する方法など、 様々な方法が考えられる。いずれにしても、保護の対象や保護の内容の検討 なしに結論は得られないことから、保護の必要性について検討する中で議 論すべきである。

 雇用類似の働き方に関する保護等の在り方については、このような様々 な課題について、法律、経済学等の専門家による検討に速やかに着手するこ とが必要である。

 検討に当たっては、保護の対象者たる「雇用類似の働き方の者」、契約条 件の明示、契約内容の決定・変更・終了のルールの明確化、スキルアップや キャリアアップ、出産、育児、介護等との両立、集団的労使関係、社会保障 等の保護の内容及び保護の方法について、実態把握と並行して検討を進め ていくことが必要である。その際には、 「雇用類似の働き方に関する検討会」 報告書で把握した実態や課題、また、今後更に把握すべきと指摘された事項を基に、雇用類似の働き方の者、雇用労働者双方を含めて関係者が納得感を 得られるよう、総合的に議論を進めていくべきである。

この問題は今世界的に労働関係者や労働研究者の熱心な議論の焦点になっており、様々な政策方向が論じられています。ここに挙がっている「個別のケースに対 し労働者性の範囲を解釈により積極的に拡大して保護を及ぼす方法」「労働 基準法上の労働者概念を再定義(拡大)する方法」「雇用類似の働き方の者に 対し、労働関係法令等の保護を拡張して与える制度を用意する方法」もその例ですが、この問題は評論家的な議論も重要ですが、労働法や民法など法律の専門家やマクロ的な視点からの経済学の専門家などもを交えて突っ込んだ議論も必要なので、まさに「雇用類似の働き方に関する保護等の在り方については、このような様々 な課題について、法律、経済学等の専門家による検討に速やかに着手するこ とが必要」です。

ということで、雇用環境・均等局の方で、もう一度雇用類似の検討会をたちあげて、ぜひもう少し具体的な方向付けを示すような議論が展開されることを期待したいと思います。

Coverpic ちょうどそれに合わせたわけでもないのでしょうが、『労働調査』の8月号が「シェアリングエコノミーとは何か」を特集しています。

http://www.rochokyo.gr.jp/html/2018bn.html#8

特集 シェアリングエコノミーとは何か

プラットホームエコノミーと労働法上の課題-プラットホームエコノミーで働く就労者の労働者性について 浜村 彰(法政大学・法学部・教授)

ライドシェアを通して見るシェアリングエコノミーの問題 川上 資人(弁護士・東京共同法律事務所)

海外におけるシェアリングエコノミーの現状 山崎 憲((独)労働政策研究・研修機構・主任調査員)

シェアリングエコノミーによる変化と労働組合の対応 村上 陽子(連合・総合労働局長)

K201809 さらに、こちらは共産党の機関誌ですが、『経済』9月号も「『シェア・エコノミー』とは何か」を特集しているようです。

http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/detail/name/経済%EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%98年%EF%BC%99月号NO.276/code/03509-09-8/

<特集> 「シェア・エコノミー」とは何か
 ◎シェア経済は「未来の働き方」か 森岡孝二
 ◎「雇用によらない働き方」 推進の狙いと拡大の実態 髙田好章
 〔インタビュー〕ウーバーイーツ配達員の働き方は? 気軽に自由に働ける…その現場で 
 ◎「ギグエコノミー」がはらむ労働・雇用の法的問題 川上資人
 ◎新しいビジネスモデルの虚像 
 「ギグエコノミー」めぐる国際的な対応動向 山崎 憲
 ◎「市場の両面性」とシェア・エコノミー 高野嘉史

というわけで、各論文のタイトルを見ただけでも、シェアリングエコノミーだの、プラットフォームエコノミーだの、ギグエコノミーだのと様々で、これに加えてコラボラティブエコノミーとかクラウドワークとか、様々な用語が散乱しています。これは世界的にそうなんですね。

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教育と職業の密接な無関係を象徴するシューカツ・ルール

経団連の中西会長が就活ルールの廃止を口にしたと大騒ぎになっています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34913280T00C18A9EA1000/

・・・「経団連が採用の日程に関して采配すること自体に極めて違和感がある」。中西氏は会見で、経団連が主体となってルールを定める現状に疑問を呈した。経団連がルールをなくせば自由な採用活動が一段と広がり、新卒一括採用を前提とする雇用慣行の転機となる。・・・

・・・中西氏は会見で、学生を新卒で同時期に一括で採用し、ひとつの企業のなかでキャリアを積んでいくことを前提とした日本型の雇用慣行を見直す必要性にも触れた。「問題意識は共有する経営者も多い」とも話し、企業の人材確保について議論を詰める考えを示した。・・・

しかし、そもそも教育と職業のインターフェイスがこういう形で問題になってしまうこと自体に、日本型雇用システムの特性が浮き彫りになっているというべきでしょう。

昨日紹介した本田由紀編『文系大学教育は仕事の役に立つのか 職業的レリバンスの検討』(ナカニシヤ出版)の懸命の主張にもかかわらず、世の中の多くの人々が、メンバーシップ型社会の「人間力」就活を大前提に考えている限りは、シューカツ・ルールは偽善と本音の絡み合う領域になってしまわざるを得ないのでしょう。

Chuko本ブログの読者にとっては今さらな耳たこ話ですが、拙著『若者と労働』から:

ジョブ型社会の「職業能力」就活
 日本であれ、欧米であれ、学生が企業に対して、自分が企業にとって役に立つ人材であることを売り込まなければならない立場にあるという点では何の違いもありません。違うのは、その「役に立つ」ということを判断する基準です。
 欧米のようなジョブ型社会においては、第一章でみたように採用とは基本的に欠員補充ですから、自分はその求人されている仕事がちゃんとできるということをいかにアピールするかがもっとも重要になります。学生の場合、売りになる職業経験はないのですから、その仕事に必要な資格や能力を持っているということをアピールするしかありません。そのもっとも重要な武器は、卒業証書、英語で言うディプロマです。
 欧米では、一部の有名大学を除けば入学するのはそんなに難しくはありませんから、ある大学に入学したことだけでは何の説得力もありません。むしろ、日本と違ってカリキュラムはハードで、ついてこれない学生はどんどん脱落し、卒業の頃には同期の学生がだいぶ減っているというのが普通ですから、卒業証書こそがその人の能力を証明するものだと一般的に考えられています。
 そして、ここが重要なのですが、その能力というのは、日本でいう「能力」、つまり一般的抽象的な潜在的能力のことではなく、具体的な職業と密接に関連した職業能力を指すのです。卒業証書を学歴と言い換えれば、欧米社会とは言葉の正確な意味での学歴社会ということもできます。日本でいわれる学歴社会というのが、具体的にどの学部でどういう勉強をしてどういう知識や技能を身につけたかとはあまり関係のない、入学段階の偏差値のみに偏したものであるのに対して、欧米の学歴社会というのは、具体的にどの学部でどういう勉強をしてどういう知識や技能を身につけたかを、厳格な基準で付与される卒業証書を判断材料として判定されるものなのです。こういう社会では、言葉の正確な意味でのもっとも重要な就「職」活動は、必死で勉強して卒業証書を獲得することになります。
 ちなみに、こういうジョブ型社会ではあまりにも当たり前の行動を、日本社会で下手にやるととんでもない大騒ぎになることがあります。かつて、ある大学の法学部で、既に企業に内定している四年生の学生に対し、必修科目の民法で不可をつけた教授の行動が、マスコミで取り上げられ、世論を賑わしました。入学時の偏差値と面接時の人間力判定で十分採用できると企業が考えているのに、本来何の職業的意義もない大学の授業における教授の成績評価によってできるはずの卒業ができなくなり、「入社」の予定が狂わされるのは、本末転倒である、と、少なくとも当時の日本社会の大多数の人々は考えていたということでしょう。

メンバーシップ型社会の「人間力」就活
 それに対し、日本では実のところ「職」に就くという意味での「就職」活動ではない「入社」のための活動に、学生が振り回される・・・というのが、定番の議論になるわけですが、実を言うと、就職活動(「就活」)をめぐる議論は、第四章で述べる一九九〇年代における「入社」システムの縮小の前と後では、その位相がかなり変わっています。
 第一章で述べたような日本型雇用システムが確立していた時期には、「自分の希望するところへ就職することは困難であるとしても、ほぼ間違いなく全員が自分の就職先を見つけ出すことができるようになってい」た時代ですから、もっぱら在学中からの就職活動が大学教育に悪影響を及ぼすという建前論からの批判が主でした。それゆえ、それに対する対策も、大学、業界団体及び官庁の間の就職協定という、強制力のない紳士協定によって、会社訪問の開始日と選考の開始日を定めてその遵守を申し合わせるというものでした。
 そもそも職業的意義の乏しい教育を受けてきている学生たちにとって、そのような教育をどれだけきちんと身につけたかなどという基準ではなく、あいまいな潜在能力やら人格やらでもって判断されることは、決して悪い話ではなかったのです。ある会社では「相性が合わない」として撥ねられたとしても、別の会社では「うちの会社にぴったりだ」と歓迎されることもあり得ますし、新卒労働市場全体としては一般労働市場に比べて遙かに売り手市場である以上、どこかには入り込めるという安心感がありましたから、基準のあいまいさそれ自体の問題性は、当時はほとんど議論されていませんでした。日本社会全体が、メンバーシップ感覚の中にどっぷりつかって、疑問を呈することすらなくなっていたというべきかもしれません。
 ところが、九〇年代以降かなり急速に進んだ大学進学率の上昇と、日経連の『新時代の「日本的経営」』(一九九五年)を大きな画期とする「入社」システムの縮小の中で、「ほぼ間違いなく全員が自分の就職先を見つけ出すことができるようにな」るという前提までが崩れてくると、そういうあいまいな基準でどこにも「入社」先を見つけられないという事態があちらでもこちらでも発生してくるようになり、そういった「人間力」による採用選考のあり方自体が問題意識に上ってくるようになったのです。
 この「人間力」という言葉は、二〇〇〇年代に入ってから文部科学省や内閣府の政策文書に登場するようになった言葉ですが、前述した本田由紀氏は、『多元化する「能力」と日本社会』(NTT出版)の中で、「生きる力」とか「コミュニケーション能力」などそれらを取り巻くさまざまな言葉とあわせて、「ハイパー・メリトクラシー」と呼んでいます。それは、欧米社会における近代的能力からポスト近代的能力へという変化に対応する言葉ですが、日本の文脈ではむしろ、一九六九年の『能力主義管理』で掲げられた「いかなる職務をも遂行しうる潜在能力」に極めて近いものであることが重要です。
 ここは大変入り組んでいて、理路を解きほぐすのがなかなか難しいのですが、もともと日本の企業では、そういう「人間力」というのは、「入社」してから上司や先輩の指導の下でOJTを繰り返していくことでじわじわと身につけていくものであって、それゆえ「社員」の人事評価においては極めて重要な基準ではあったとしても、「入社」を決定する時点でそれほど高い「人間力」を求められるような厳格な基準ではなかった、というのが重要なポイントでしょう。
 労働社会全体としては日本型雇用システムが変容していき、「社員」の範囲が縮小するようになっていってはじめて、それまで「入口」段階ではそれほど決定的な重要性を持たなかった「人間力」が、それによって「社員」の世界には入れるか否かが決定されてしまう大きな存在として浮かび上がってきた、というのが、九〇年代以降の実相なのではないかと思われます。

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本田由紀編『文系大学教育は仕事の役に立つのか』

373046 本田由紀編『文系大学教育は仕事の役に立つのか 職業的レリバンスの検討』(ナカニシヤ出版)をお送りいただきました。タイトルからわかるように、本田由紀さんの実在論的職業的レリバンス論を、様々な観点を駆使して実証しようとした研究です。

http://www.nakanishiya.co.jp/book/b373046.html

人文・社会科学系の大学教育は仕事に「役立っている」のではないか。「役立ちうる」のではないか。「役立っている」とすれば,どのような「役立ち方」なのか。なぜ「役立たない」と思われているのか。
「文系」として一まとめに語られてしまいがちな人文・社会科学系に含まれる多様な学問分野間の共通性と相違に注目しながら,調査結果に基づいて,さまざまな角度から検討を行う。

本書全体の問題関心は,「いわゆる文系の大学教育は本当に「役に立たない」のか」という問いを,思弁的にではなく調査結果に基づいて,さまざまな角度から検討することにある。そしてその際には,特に「文系」すなわち人文社会科学系に含まれるさまざまな学問分野――「**学」として一般的に受け入れられている個々の学術領域――の間の共通性と相違に注目する。(第1章より)

本書によって、どこまで文系大学教育の有用性が「実証」されているといえるのか自体が、立場によって様々な意見の分かれるところともなるのでしょうが、わたしにはむしろ、叙述のあちこちにみられる、同じ文系といっても分野によってさまざまである様子が興味深いものでした。

本田さん自身の執筆している第2章「分野間の教育内容・方法の相違とスキルへの影響」の最後のまとめの一節をひくと、

・・・本研究で見いだされたのは、相対的に方法的双方向性の低い社会科学系、相対的に内容的レリバンスの低い人文科学系、いずれも高いが特に内容的レリバンスの高い教育学、中間的でバランスの取れている社会学及び心理学、あるいは理論重視の法律学、実践重視の教育学、ゼミ重視の社会学、相対的に教育密度の低い経済学、といった特徴である。

ふむふむ。

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労働基準法施行、労働省設置71周年

本日9月1日は、71年前の1947年に、労働基準法が施行され、その実施に当たる労働省が設置された日です。

なんでそんなことを思い出したかというと、さすがにこういうツイートを目にしたもので。

https://twitter.com/qZdT1jLsjyz05WQ/status/1033300876608192512

8時間労働制は左翼のお陰????
生まれて初めて聞いた、日本で8時間労働制が定着したのは高度成長期以降、労働者の離職率が高まり、その為政府が8時間労働制を法制化し、強制的な残業減らしで過当競争を抑制した事が原因!左翼はただ単に企業倒産を増やしただけ!

いやもちろん、このツイートだけでも相当な脱力ものですが、それにかてて加えて、これに反論しようとしているついーとがどれもこれも、

メーデーについて調べてみましょう。

それ、ロシアに共産主義者の政権が出来て労働者の待遇良くしないと自分たちが倒されると言う危機感を持ったからですよ。

リンク先の国際的に有名な歌は、八時間労働制を求めた歌でもあります。

お前、ロバート オーエン知らないの。勉強したら。

まあ例えば日本共産党の22年テーゼに含まれているのは経済面では8時間労働の他、最低賃金、失業保険、累進課税などです。

といった外国の経緯や共産党の話ばかりで、そもそも現行日本法制たる労働基準法に8時間労働が明記されたのが、今から71年前のGHQ占領下の片山哲連立内閣の時代であったという、一番肝心の歴史的事実が全然出てこないという事態に、改めて今日のネット市民諸氏の頭の中から、日本の近現代史がすっぽり抜け落ちているという戦慄すべき事実に直面しております。

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