『DIO』340号はオリパラ特集
『DIO』340号はオリパラ特集です。といっても、もちろん連合総研の機関誌なんですから、スポーツそれ自体ではなく、その周辺でオリンピック・パラリンピックを支える人々の労働問題を取り上げています。
http://www.rengo-soken.or.jp/dio/pdf/dio340.pdf
オリパラを支える人々のやりがいを守る−そのための健康安全対策−
過重労働と健康・安全に関する知見から−東京2020オリンピック・パラリンピックを支える人々の健康安全対策− 山内貴史(他 5名)
オリンピック・パラリンピックボランティアのマネジメントと補償問題 小野晶子
宿泊業労働者の健康安全への懸念と課題 岡本賢治
日建連における安全衛生対策及び担い手の確保・育成の取組み 渡辺博司
過労死の懸念ということで考えれば、やはり働き方改革でも時間外の上限が先延ばしにされたままオリパラを迎えなければならない建設業が最大の課題です。ホワイトカラーな皆さんは、自分たちと同類の労働者の裁量制やら高度プロフェッショナルには感心が高い割に、自分たちとは違う人種だと思っているらしい建設業や自動車運転手の超長時間労働には相対的に関心が薄い傾向にありますけど。閑話休題。
ですが、最近ネット上で炎上した話題ということでいえば、例のボランティアの話が注目度が高いでしょう。書いているのは、JILPTの小野晶子さん。
最後のパラグラフで、労働法の観点から見て大変興味深い提起をしています。
ボランティア活動で忘れられがちなのが、活動時の事故や怪我等への補償である。オリンピック・パラリンピックにおいても民間のボランティア保険に加入することになるだろうが、その内容はまだはっきりしていない。
国をあげて行うイベントのボランティアなのであれば、この機にボランティアの法的位置づけを明確にした上で、補償等を充実させることも考えた方がよい。大会ボランティアや都市ボランティアで、ボランティア休暇制度を取得して参加した者が、活動中に事故や怪我にあった場合には労災保険が適用されるようにし、次年度にそれを理由に企業の保険料が上がらない時限的な特別法的措置を入れる。東日本大震災の被災地の企業では同様の措置がされており、不可能では無いはずだ。
海外では、法律によりあらかじめボランティアの「労働者性」を否定した上で、報酬や社会保障等を規定して活用する動きもみられる12。例えば、アメリカでは、「国内ボランティア振興法」 の中で「支払い(stipend)」の定めが規定されている。これは連邦政府からNPO等に委託されて実施されるプロジェクト(主にアメリカ国内の貧困克服や低所得層の社会問題)に登録、任命されるボランティアに対し規定の謝礼金や手当等が支払われる仕組みだ。
ドイツでは「社会的活動年」や「環境活動年」といった、若者を中心にボランティアを推進する枠組みがあり、このボランティアプログラムに参加する人には、手当や各種社会保障、労災保険法が適用される。フランスでは、「社団ボランティア」や「任意的民間役務」といったプログラムに関して手当や社会保障が適用される。これらのボランティアプログラムは、職業訓練や就業支援の目的も兼ねており、受入団体が活動遂行証明書を発行することもある。
日本では東日本大震災の復興に際して多くのボランティアが活躍したが、被災地で活動したボランティアの約半数が何の保険にも入らず活動していたことがわかっている13。今後、国や地域がボランティアを社会の力として積極的に活用していくのであれば、ボランティアの地位を法律の中で規定し、補償制度等を整備していくことが望まれる。
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