フォト
2025年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ

« 『HRmics』30号 | トップページ | 『新しい労働社会』電子書籍化 »

2018年8月 3日 (金)

医学部は病院附属職業訓練校

東京医科大学の問題が盛大に炎上中ですが、労働問題の観点から見ると、これはまさに

事情を知る関係者は「女性医師は結婚や出産で職場を離れたり、深夜勤務ができなくなったりして、偏在の問題が起きる。これを避けるため、女子合格者を三割程度になるよう調整していたようだ」と話した。

女性の職業生活と家庭生活の両立の問題に由来する採用差別なんですね。

もちろん、世の中のあらゆる部面に差別現象はあるのですが、今回の問題は狭義の教育問題というよりは、労働問題が職業教育訓練の入り口の選別において露呈したものと見た方がいいでしょう。

そして、実はこれが逆に、他の学部、とりわけ文科系の学部ではこのような女性差別が行われてこなかったのはなぜかという見えざる問題を照射します。実を言えば、同じような男性中心の長時間労働を当然視するマッチョイズムは他の職業分野でも同じように存在するはずなのに、そして企業や組織への「入社」の段階においては、有形無形のさまざまな差別が現に行われているにもかかわらず、大学入学段階ではそのようなことが行われていないのはなぜかというと、要するに、大学入学がいかなる意味でも職業教育訓練の入り口であるとは認識されていないということを表しているのでしょう。

大学までは男女平等なのに、会社に入る段階では差別が横行しているというのは、裏返していうと、そういう差別的な雇用社会の選別機能を、(少なくとも文科系の)大学は果たさなくてもいいと思われていたということを意味しているのでしょう。

それに対して医学部はそうではない。言葉の正確な意味でのジョブ型職業教育機関であり、言ってみれば医師養成職業訓練校です。とりわけ今回の東京医科大学というのは、東京医科大学病院の附属職業訓練校という色彩が強いようで、そうであればこそ、その本体たる病院の人事労務管理上の(男女差別的)要請が、ストレートにその訓練生選抜基準にのしかかってきたのでしょうね。

« 『HRmics』30号 | トップページ | 『新しい労働社会』電子書籍化 »

コメント

女子受験生に対する(逆)選抜に加えて、「三浪」以上の学生に対しても同様の制限がかけられていたようです。これも、まさしく本体たる病院の人事労務管理上の(メンバーシップ型年功管理的)要請がダイレクトに反映されていますね。

女子医大のように、採用試験(入試)を受ける前に条件(女子のみ)を付けていればよかったんですね。

女子医大では合格者が全員女性ですが、東京医科大学の問題は起きていないのでしょうか?
また欧米にも女性の医師がいると思いますが、問題は起きていないのでしょうか?

教育機関の不正入試選抜という問題自体は欧米に限らずきっと古今東西いつどき如何様にも起こっている問題でしょうし、今回のような私立医大入試に限って言えば、想像するに、おそらく他校でも(正直に公表するか否かはともかく)多かれ少なかれ同様の選抜操作をしている可能性は高いのでしょうね。

ただそれはそれとして、このHamachanブログとの主な接点という意味では、日本におけるいわゆる大学教育と職業との密接な無関係性が当てはまらないよい例としての私大医学部教育が、一見するといわゆるジョブ型社会における職業訓練機関のように思えるものの、よく見ると実は、入試選抜にまで落とし込まれた都合主義的な人事管理を反映した病院の採用選考基準がいまだ男子中心&年次主義であるところの日本の古き労働慣行(メンバーシップ型)のままであること。これら両者の組合わせの妙に加えて、全くそれが当てはまるように見えない大学文系教育のあり方が逆照射されてしまうこと…。このエントリは色々と考えさせられますね。

突然のコメント失礼します。
労働組合活動に取り組んでいる者です。

ただ今、「働き方改革をもっと前へ」の署名を集めております。

労働問題に関心がおありであろう、このブログをご覧の皆さまにもご覧いただきご賛同頂ければ何よりです。

厚かましいお願いとは承知しておりますが、宜しくお願い致します。

https://www.change.org/p/%E5%9B%BD%E4%BC%9A%E8%AD%B0%E5%93%A1-%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9%E6%94%B9%E9%9D%A9-%E3%82%92%E3%82%82%E3%81%A3%E3%81%A8%E5%89%8D%E3%81%B8-%E3%82%88%E3%82%8A%E5%A4%9A%E3%81%8F%E3%81%AE%E6%96%B9%E3%81%AE%E3%82%88%E3%82%8A%E8%89%AF%E3%81%84%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB?recruiter=891823644&utm_source=share_petition&utm_medium=copylink&utm_campaign=share_petition

ある外資系人事マン殿

間が開いてしまって申し訳ありません。

>教育機関の不正入試選抜という問題自体は欧米に限らずきっと古今東西いつどき如何様にも起こっている問題でしょうし、今回のような私立医大入試に限って言えば、想像するに、おそらく他校でも(正直に公表するか否かはともかく)多かれ少なかれ同様の選抜操作をしている可能性は高いのでしょうね。

仰るようにお金をたくさん提供してくれる人や大学関係者のために特定の受験者に対して優遇(選抜操作)する事は古今東西珍しくない事だと思います。しかし今回は
 A.女性は結婚や出産でやめる人がいる
 B.女性は外科などの体力が必要な診療科を敬遠する人が多い
という理由で女性全体に対して選抜操作を行っていました。
欧米で特定の集団(女性)に対して無断で選抜操作を行えば大問題になると思います。
欧米では、女性に対してA.やB.の問題は起きていないのでしょうか?それともA.やB.の問題が起きているので、事前に公表して女性に対する選抜操作を行っているのでしょうか?

Alberich様

>A.女性は結婚や出産でやめる人がいる

B.女性は外科などの体力が必要な診療科を敬遠する人が多いという理由で女性全体に対して選抜操作を行っていました。

欧米で特定の集団(女性)に対して無断で選抜操作を行えば大問題になると思います。欧米では、女性に対してA.やB.の問題は起きていないのでしょうか?それともA.やB.の問題が起きているので、事前に公表して女性に対する選抜操作を行っているのでしょうか?…

ご存知のとおり、私はただの外資系人事マンであって医療関係者ではありません...(笑)。以下、あくまで小職の知りうる一般的な人事労務の知識ですので、あしからず。

●欧米における特定の集団(宗教、性別、人種など)に対する無断の選抜操作について

結論から言えば、無断であれ事前に公表している場合であれ、その「選抜基準」が妥当なものであれば合法となりましょうし、それが不合理となれば「採用差別」として違法(米であれば公民権法違反)となりましょう。

この分野に関してはおそらく「米」と「欧」の差はほとんどないものかと思います。

米国の例でいえば、公民権法第703条に「真正な職業要件」(BFOQ:Bona Fide Occupational Qualification。Bona Fideとはラテン語で誠実・真正なという意味)という概念があります。
これは、採用や昇進などの選抜選考の際に(例:女性の選抜率を抑えるなど)、選考に差を設けるに値する「合理的必要性(Reasonably Necessary)のある、真正な職業要件(BFOQ)」であれば違法採用とはならないというものです。

例えば、ある劇団が特定の性別・年代の「俳優」(例えば、和k手の男性俳優)を雇いたいと考えた場合、その採用選抜基準(若い男性)は男女差別や年齢差別には当たらない(妥当なもの)とみなされるような場合です。

実際の判例としては、会社勝訴(合法)と労働者勝訴(違法)の両方があります。前者では、刑務所看守として採用された女性が刑務所の法定身体基準を満たしていないため排除されたケース。男性凶悪犯を収容する場所柄、また性犯罪者も多いこと等の理由から看守が「女性」であるということ自体が囚人から暴行被害を受けやすく、刑務所内秩序維持の観点からもリスクが高いという専門家の証言によりBFOQに該当する(つまり女性を採用しないことが違法行為ではない)と判断された例。

その逆に女性を採用しないことが差別とされた例として、ある製造業現場で鉛を扱う仕事。胎児への影響や妊娠中の女性への悪影響があるとして男性しか採用されないことを不服として性差別が争われたケース。実際には、鉛が女性だけでなく男性の生殖機能低下にも影響を与える事実があることが判明したため、公正中立的な選抜基準ではない(女性差別)とされた例です。

●A「女性は結婚や出産でやめる人が多い」ことについて

正直、わかりません...。ただ私の知る限り、欧米の仕事は「ジョブ型」(Pay for Job、Pay for performance)かつ(いわゆる)「同一労働同一賃金」ですから、フルタイムであれパートタイムであれ働く女性が出産後に自分の経験やスキルに見合った職を見つけることは(もちろん求人の需給状況にもよりますが)比較的容易かと思います。

●B「女性は外科などの体力が必要な診療科を敬遠する人が多い」ことについて

これも私の知識不足でわかりません...。ただ上記BFOQの「考え方」からすれば、職業としての外科医師に「真に」必要とされる体力なるもの(具体的には握力やスタミナでしょうか?)が男性より女性が低いという主張が科学的に立証されるのであれば、それは合理的選抜基準とみなしてもよいものなのかもしれませんが、本当にそう言いうるのでしょうか(私には疑問ですが)…。仮にそうであったとても、その選考基準を事前に公表する必要はあるでしょうね。が、実際にはそのような性差別的な選考基準はほとんど聞いたことはありません。

以上、まったくもって(華もノリもオチもない)杓子定規なコメントになってしまい恐縮です…。ただ、病院も企業も「何が許されて何が許されないか」の基準なり準拠法は(本来、洋の東西を問わず)変わらないものかと思います…。ということで、考え方の整理の1つの軸として、上記コメントがHamachanブログ読者みなさんのお役に立てれば光栄です。

ある外資系人事マン殿

丁寧な解説をありがとうございました。
すごくよくわかりました。
少し賢くなったような気がします。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 医学部は病院附属職業訓練校:

« 『HRmics』30号 | トップページ | 『新しい労働社会』電子書籍化 »