『HRテクノロジーで人事が変わる 』
労務行政研究所より『HRテクノロジーで人事が変わる AI時代における人事データの分析・活用と法的リスク』をお送りいただきました。編集代表は弁護士の倉重公太朗さんです。
https://www.rosei.jp/products/detail.php?item_no=7138
編集代表 倉重公太朗(弁護士)
特別寄稿 伊藤禎則(経済産業省)、武田康祐(厚生労働省)
執 筆 者 岩本隆(慶應義塾大学大学院特任教授)
酒井雄平(デロイト トーマツ コンサルティング)
白石紘一(弁護士)
民岡良(日本アイ・ビー・エム)
金澤元紀(ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会)
板倉陽一郎(弁護士)
目次は次の通りですが、コアは第3章です。
序章 HRテクノロジーの動向と、普及促進に向けた政府の考え
【特別寄稿】伊藤禎則(経済産業省)武田康祐(厚生労働省)第1章 世界・日本におけるHRテクノロジーの動向 岩本隆(慶應義塾大学大学院特任教授)
第2章 HRテクノロジーの現状と可能性 酒井雄平(デロイト トーマツ コンサルティング)
第3章 HRテクノロジーの活用とリスク
白石紘一(弁護士)
民岡良(日本アイ・ビー・エム)
金澤元紀(ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会)
倉重公太朗(弁護士)
板倉陽一郎(弁護士)第4章 HRテクノロジーの導入に向けて
酒井雄平(デロイト トーマツ コンサルティング)
民岡良(日本アイ・ビー・エム)
この第3章は、採用、配置、人材開発・組織開発、安全配慮・退職という4つのテーマ別に、白石さんが事例を紹介し、民岡さんが技術の視点から、金澤さんがHRMの視点から、編者代表の倉重さんが労働法の視点から、そして板倉さんが個人情報保護の視点から論じるという構成です。
この中で紹介されているさまざまな事例はいずれも大変興味深いものですが、議論としてはやはり倉重さんが担当されている労働法の視点が注目です。というのも、
・・・端的に言えば、「テクノロジーの活用による人事権行使の有効性」が問われ、場合によっては当該人事権行使が「無効である」とされるのである。テクノロジーを活用した人事権行使が無効となった先例が現れれば、実務が混乱し、的外れな規制議論も起きかねない。・・・
倉重さんはたとえば「HRテクノロジーと解雇」では、エース損害保険事件の成績不良解雇の要件を引きつつ、こう述べています。
・・・この文言を見るだけでも、解雇要件が相当厳しいことが分かるが、HRテクノロジーによるジョブフィット率の定量化や適正配置モデルによる配置転換を活用すれば、上記要素の立証は容易になるケースもあろう。例えば、上記①②に関連し、このまま当該職務を遂行し続けた場合に「重大な損害を生じるおそれ」があることについては、さまざまなデータから推知することが可能であろう。これまでの「なんとなく向かない」という能力不足型や「協調性がない」あるいは「なんとなくいけすかないやつだ」という協調性・適格性欠如型についても、具体的事実を多数提示することが可能になると想定されるが、このような場合であれば、むしろこれまで主観的に人間が判断していた時代よりも判断が容易になろう。また、配置転換についても、適正配置モデルに従い、いくつかの部署を担当させ、各部署でジョブフィット率を算定することにより、前記⑤の要素を満たすことも可能となる。・・・・
企業の人事担当者だけでなく、人事労務に関わる全ての人が読んで置いて損はない本だと思います。
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