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2018年7月24日 (火)

高プロを目の敵にしながらスタッフ管理職には無関心な人々の群れ@WEB労政時報

WEB労政時報に「高プロを目の敵にしながらスタッフ管理職には無関心な人々の群れ」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=775

 去る6月29日にようやく働き方改革関連法が成立に至りました。しかしその国会審議では、これまで青天井だった時間外労働に(少なくとも成人男性には)初めて上限規制が設けられるという画期的な規定をめぐる議論は脇に追いやられ、「脱時間給」を目指して労働時間規制を全て外す高度プロフェッショナル制度に議論が集中しました。
 そしてその議論には奇妙なねじれがいくつもありました。そもそも、今から100年前に制定されたILO第1号条約すら批准できないくらい、時間外労働に対する規制が弱い現代日本の労働時間規制を、あたかもそれによって長時間労働が確実に規制されており、それゆえ過労死の心配などかけらもないものであるかのように描き出し、高度プロフェッショナル制度はその厳格な規制を解除するものであるから、それが成立してしまったら過労死が続出する、というまことにズレ切った議論が展開されたのです。
 もし本当にそうであるならなんと良いことであったでしょうか。悪辣な政府が導入を試みる高プロさえ潰してしまえば、日本の労働社会は過労死の心配などない素晴らしい社会であり続けられるのですから。そしてそういう認識に立っているならば、悪逆無比の高プロを潰すために、働き方改革関連法案自体を廃案にしろと言いつのってみせるのも、まことに論理整合的な行動であったと評せましょう。ただ一つ残念なのは、現実の日本の労働時間規制は毎年何百人もの一般労働者が、そう高度でもプロフェッショナルでも何でもない一般労働者が、青天井の労働時間規制のおかげもあって、過労死、過労自殺し続けている社会であることです。 ・・・

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コメント

論考曰く、「… 管理監督者概念自体を管理・監督という機能だけではなく、(スタッフ管理職として)企業内における賃金処遇の程度によっても判断しようとする方向にシフトさせたものといえるでしょう。

1970~80年代という時期にこうした解釈変更がなされた背景には、この時期が内部労働市場志向の政策の最盛期であったことがあると思われます。日本型雇用慣行の典型的な現れである職能資格制度において同格に位置づけられ同等に処遇されているにもかかわらず、本来の労働保護法の発想に忠実に管理・監督機能の有無のみによって一方には残業代が出ないのに他方には出るという「不公平」を「是正」することが適切と考えられたわけです。この発想をさらに拡大していくと1990年代の企画業務型裁量労働制につながり、さらに2000年代以降のホワイトカラーエグゼンプションそして今回の高度プロフェッショナル制度に至るわけです。管理・監督機能を果たしていない労働者をその「処遇」に着目して労働時間規制を解除するという筋の悪い話という点では、40年以上通達ベースでまかり通ってきているスタッフ管理職と今回の高度プロフェッショナル制度には何の違いもありません。逆に残業代支給不支給の「不公平」という点に着目するならば、スタッフ管理職と高度プロフェッショナル制度はやはり同じくらい筋のいい話ということになります。

こういう日本の労働時間規制のねじれた構造を全く顧慮することもなく、高プロばかりを目の敵にしながらスタッフ管理職には無関心な人々が労働研究者界隈にすらあまりにも多いことに正直絶望的な感覚を抱かざるを得ません。」…。

Hamachan先生の抱えるこの「正直絶望的な感覚」に全く同感なのですが、ご自身のお立場もあるのでしょうか、そうした絶望感にもかかわらずブログやセミナー等で社会的に有用な情報を鋭意発信し続けるお姿勢にホント脱帽致します。最近の私自身はといえば、外資系IT企業の人事マンとして自分の勤める会社の日々のマネジメントで精一杯ですから。

投稿: ある外資系人事マン | 2018年7月26日 (木) 22時26分

マシナリさんのブログ(のコメント欄)に捕捉されていました。

http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-755.html#comment1206

> hahnela03さん

>  ただそれは、マシナリさんがご指摘される「紛争を飯の種にする弁護士の方々の就職活動」として「高プロ批判」は「交渉人(代理人)」としての地位確立という御商売のためではないかと感じていました。

一応それは皮肉のつもりなので、いわゆる労働者側弁護士にとって、今回の法改正で仕事が増えるのか減るのかは正直なところよくわかりません。ただ、彼らの言動からはある種の信念は感じられるところでして、日本型雇用慣行において年功的な職能資格給制度で生活保障をしていることが長時間労働を正当化している現状を理解しながら、それを維持しようとするその姿には、「なんとしても仕事のタネは確保する」と評することも可能ではないかと思ったところです。

・・・・・・・・

ここで言われる「正直絶望的な感覚」はもちろん「労働研究者界隈にすらある」ことに向けたものとはいえ、その根っこにはそうした労働研究者界隈の言説をこれ幸いに反権力に利用する運動界隈であったり、それを政治的に利用する選良の方々であったり、それを支持する有権者であるところの労働者であるわけですから、それはすなわち日本型雇用慣行が今後も護持されることを意味します。

私がそうした「絶望的な」方々に絶望するのは、一方では日本型雇用慣行に起因する長時間労働是正を叫びながら、それに対する本来の規制ではない超過勤務手当規制の緩和を「残業代ゼロ法案」として煽るというダブルスタンダードであって、そんなダブスタを恥じることなく堂々とひけらかすその感性を目の当たりにすると、まあ論理的な議論が望めない現状こそが「絶望的」だと思わざるを得ないわけですね。

若干言い訳めいたことを付け加えると、私は「「紛争を飯の種にする弁護士の方々の就職活動」として「高プロ批判」」それ自体には、労働法学上の理論的な批判の対象ではあるものの、必ずしも道徳的な批判の対象であるとは考えていません。むしろ、知識社会学的には当然のレスポンスであると考えています。

それこそ、弁護士はあくまでも弁護士でしかなく、司法警察官としての権限を有しているわけではないのですから、民事訴訟の対象としてその弁護人となることによって当該正義の実現を果たすことがその生業にも貢献しうる残業代規制が縮小し、その代わりに司法警察官たる労働基準監督官が是正勧告や送検といった権力行使によって専らその正義実現に関わり、民事弁護士の出る幕のほとんどない物理的労働時間規制が拡大することは、その職業的利害からして望ましいものではないことはもちろんです。

どちらも労働者にとっての正義である中で、民事弁護士にとってより重要性の高い正義(残業代規制)の縮小に異議を唱え、民事弁護士にとってより重要性の乏しい正義(物理的時間規制)の拡大に対して軽視するような態度をとること自体は、それがあたかもアカデミックな労働法学全般にわたる絶対的正義であるかのような言い方をするのでない限り、職業的正義の表出として、私は必ずしも否定的に見ているわけではないのです。それはあって当たり前のバイアスであり、そのこと自体を道徳的に批判すべきものではない。

むしろ、そういう職業的利害によるバイアスを是正すべき立場にある研究者たちの行動にこそ、「正直絶望的な感覚を抱かざるを得ません」というのが本当のところです。

投稿: hamachan | 2018年7月30日 (月) 10時22分

勝手に書き散らしておりましたところ、詳細にご教示いただき恐縮です。職業的利害によるバイアスという点では、ご指摘の通りそれはあまり揶揄すべきものではなかったかと反省しております(という私自身、公務員としての職業的利害はそれとして表出しているつもりですし)。

私もやや言い訳めいてしまいますが、その上でモヤるのは、弁護士の方々がご自身の職業的利害によるバイアスを(自覚的になのかわかりませんが)あたかも社会的正義のような出で立ちで論じる姿です。ご自身の飯のタネがなくなって困るという意見を表出する機会は、労働者が待遇改善を求めて労働三権を行使するのと同じく、民事弁護士にも保障されてしかるべきとしても、同時にそれはあくまで民事弁護士の利害の表出として明示した上で行われるべきとも考えます。なんとなれば、それは長時間労働をもたらす現行法規を維持する以上、労働者の利益とぶつかり合うものとなる可能性があるわけで、極端な話、法規に基づく保護ではなく局所的な紛争解決の機会しか得られない労働者と、その局所的な紛争解決に職業機会を見いだす労働側弁護士の間において、利害調整が必要となる場合も想定されますから。

という状況を踏まえてみるに、研究者がそれを是正すべき立場にあるというご指摘も異論はありません。とはいえ、これもご指摘の通り一部の研究者の方々にこそある種のバイアスが感じられることが多く、それはやはり絶望的なのだろうと思います。

投稿: マシナリ | 2018年7月31日 (火) 23時53分

他人様のブログのコメント欄で関係ない法案の事を述べるのはいけない事かもしれませんが。

高プロ法案、参院の定数改定(増加)法案、IR法案を今国会の3馬鹿法案と言った人がいました(hamachan先生ごめんなさい)

その2馬鹿の片方であるIR法案に関して以下の記事がありました。
http://news.livedoor.com/article/detail/15050778/
この記事の筆者は以下の理由で反対者を非難しています。

 ・日本ではギャンブルに関する規制が非常に緩い(パチンコ等)
 ・このため、日本人のギャンブル依存症の割合は米国、韓国等
  の2倍以上である
 ・IR法に関連した「ギャンブル等依存症対策基本法」では、
  パチンコ依存症も規制対象となった。
 ・IR法に反対した政党は「ギャンブル等依存症対策基本法」
  にも反対した
 ・IR法の反対者の本音は、カジノに反対ではなく
  パチンコ利権の擁護だ、と疑われても仕方ない

それぞれの法案には、それぞれの理由で反対者を非難する方がおられるようです。

投稿: Alberich | 2018年8月 1日 (水) 12時36分

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