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連合記者会見における外国人労働問題

連合HPに6月28日の記者会見の記録がアップされています。働き方改革法案への対応を巡る政局がらみのつまらないやり取りもありますが、注目すべきは外国人労働者導入問題について、かなり踏み込んだ発言をしていることです。

https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/rengotv/kaiken/201806.html

微妙な言い回しながら、かなり踏み込んだ内容なので、ちょっと長めに引用しておきます。

神津会長 ・・・・・それから2つ目なんですが、これも一強政治の弊害の1つの表れだなと思うんですが、外国人材の受け入れについてのですね、政府の考え方が打ち出されています。連合としてこの問題についての考え方、今日確認をしていますのでまた詳しくは後ほど相原事務局長のほうからその点はお話をさせていただきたいと思いますが、私としてはこれ一言で言えば、使う側の理屈だけで物事組み立てているのではないかということについては非常に憂慮しますし、ご承知のようにですね外国人技能実習制度であるとか、あるいは留学生が限定的に就労ができるというようなことになってますけども、やっぱり本音と建前がかなり乖離をしていて、働く側が非常にワークルールを度外視したような使われ方をしているという、そういう例が散見されるわけですね。今の政府が打ち出している内容というのは、どうも辻褄合わせ、人手はこういう分野は足りないから、体よく外から人を呼び寄せようみたいな、そういう内容ですから、いま申し上げたような建前と本音の乖離をさらに助長しかねないということでありますし、移民政策ではないんだという、そういう言い方もあるようですが、どう考えてもですね、それは本当にこれこそ本音と建前の乖離ではないのかなというふうに思います。やはり国籍がどうであれですね、この日本で働くすべての人がやっぱり生き生きと働いて、同じ条件で、そして幸せな生活を送るということをまずそういう仕組みを考えるべきであって、目先の辻褄合わせというのは後に大きな禍根を残すと思いますので、極めて問題だということを申し上げておきたいと思います。

相原事務局長 ・・・・・2点目に、先ほど神津会長のほうからありました外国人材の受け入れについて、新たな在留資格制度の創設が提起されておりますので当面の取り組みに対して何点かを確認を致したところです。これも後ほど資料の2-3にありますのでご覧いただければというふうに思いますが、1点目として受け入れの是非について国民的な論議が必要であるという点を確認致しました。かなりクローズな状況でこのプロセスを経てここまで政府としての議論が進んできておりますので、プロセスも含めた上で国民的な議論の必要性を再確認いたしました。あわせて現在においても多発しております労働関係法令に対する違反を無くすことがまず先行的な政策課題であるという点を確認致しました。あわせてトータルな労働市場をいかに作っていくのかというような点について雇用労働政策の視点が大事だということを再確認致した点を申し上げておきたいと思います。

Q.(時事通信社・オオツカ氏)
 時事通信社のオオツカと申します。2点ありまして、1点は先ほどおっしゃった外国人のところですね、使用者側の意見に立っているということで、このままいけば非常に禍根を残すということで。これどういったことが問題になり、どういった問題を起こしていくと考えていくのかもう少し具体的な話として今考えていることを教えていただければと思うんです。これが1点目です。

A.(会長)
 外国人材、外国人労働者の問題については、ちょっと繰り返しになるところも勘弁いただきたいんですけども、要するに今抱えている問題をやっぱり助長してしまうんじゃないのかということだと思っています。やっぱりその根っこのところでですね、建前と本音が乖離をしているということではないのかなと思います。今回その枠が広げられるっていう事なんですけども、5年+5年で10年みたいなこともその内容にはあるわけでありますから、私はやっぱりもう少し包摂的なということを含めてですね、実際にこの日本で働く人が、日本人がこの日本で働くということですね、そこはもう条件が違うんだということではなくて、やっぱりそこはある種その移民政策ということも包摂的な観点で考えていくということは必要なんじゃないのかと思うんですね。そういうその根っこのところの議論が置き去りになったまま、都合よく外国人労働力を使うということにしか見えないんですね。したがってそれは本来のあり方というものをもっとしっかりと議論すべきであって、短兵急に、人手不足だから枠をこういう形で広げてしまうみたいな、そういう今回のその施策ということについては極めて疑問だというふうに思っています。

Q.(朝日新聞・サワジ氏)・・・・・それから3点目が外国人の問題に関連して、これは相原さんでも構わないですけれども、最近日産自動車とか三菱自動車で本来の実習計画とは異なる仕事をさせているというケースが発覚してます。良いか悪いかは別として現場としてそういった労働力が必要とされているっていうことはリアルの事実としてあると思うんですけど、このあたりについての現状認識についてお聞かせください。

A.(事務局長)・・・・・今日の資料の中にも直接文字として落としたところですけれど、人手不足業種においては国際貢献の名のもとに多くの外国人技能実習生が働いている。しかし2017年度に労働局及び労働基準監督署が監督指導を実施した実習実施機関のうち7割を超す事業所で労働基準関係法令違反が認められたということを記しています。先ほどの事例もそういう中に入っているんだというふうに承知を致します。まして新しい在留資格を創設していくとなれば、今でもなおこうした状態にある、健全性が保たれていない実習制度の状況を改めることなくして前に進むというのはなかなか困難なことじゃないのかというのが先ほど来申し上げていることだというふうに改めて申し上げておきたいというふうに思います。

Q.(朝日新聞・ヨシザワ氏)・・・・・朝日新聞のヨシザワと申します。外国人材の件についてもう一度お尋ねします。資料を見ますと、連合の基本的な考え方は、受け入れ対象は専門的技術的分野の外国人とすべきで安易な受け入れを行うべきではないというのが基本的な立場だと資料がありますね。先ほど神津さんおっしゃったのが、移民政策を含めてもう少し包摂的に議論すべきじゃないかとおっしゃったと思うんですけど、この基本的な立場とはちょっと違うふうに聞こえるんですけど実際ところどうでしょうか。

A.(会長) ・・・・・当然基本的立場と違うことを言ってるつもりはありません、今日中央執行委員会でこの内容は確認されていますんでね。しかし今後に向けて、重点をどこに置いていくのか、あるいは最後大事にすべきところは何なのか、ということで、そこは私自身ですね連合としてさらに発信を強めていく必要があるんだろうという、そういう問題意識を持っておりますので、そういう意味での発言だったというふうにお聞きいただきたいと思います。今回の方針でも言っていることは様々あるんですけども、やっぱりその最後何を大事にすべきかということで言えばですよ、私ども労働組合の立場からすれば、やはりその一定の制度に基づいて日本で働いている人がですね国籍を問わず、やっぱり幸せな働き方、幸せな生活を送るということが実現していかなければならないんで、やっぱりそれを根っこにおいていかなければならないだろうという意味での私の先ほどの発言というふうに理解をしていただきたいというふうに思います。今日実は中央執行委員会の中でも若干やりとりはあったんですけども、やはり一方で世界を見渡せば難民の問題もあります。これヨーロッパでもですね、かなりギクシャクしているようなところも見受けられるんですが、少しやはりこの日本という国はですね、たまたまその海に囲まれている国だということもあってですね、あまりヨーロッパと同じようなそういう難民の受け入れの考え方とかですね、あるいは移民政策ということを取らずにこれまで過ごすことができていますけれども、一方で労働力不足みたいなことがあります。ただ一方で将来見渡すと、IT、第4次産業革命でもって雇用の姿というのは劇的に変わっていく、そういうことも見据えながら今後をどう考えていくのかという事ですから、そこは少し、まあある意味ですね、これまで持ってきている考え方だけで本当に良いのかどうかということを我々自身も考えていく必要があると思っていますし、繰り返しになりますけども、やっぱりこの日本で働く人がですね、建前と本音のギャップでもって、なんて言うんですかね、時給300円かその程度で働かされるような違法が目に余るようなそういう状況を生んでしまうようないびつな労働政策で本当にいいんだろうかと。今回とられる考え方っていうのですね、そのことを助長してしまうんじゃないかという懸念を私自身は強く持ちますので、あまり建前と本音の乖離でもって、この問題を進めるべきじゃないということがありまして、私としての先ほどの表現だったと、そういうふうにご理解いただきたいと思います。

これまでの連合のスタンスは、基本的に専門技術的な外国人のみを受け入れるべきという、今までの政府の(少なくとも建前上の)スタンスと同じものであったわけですが、今回それを実質的に大きく転換させようとする政策が急ピッチでかつ「かなりクローズな状況で」進められるという状況下で、労働組合としての譲れないラインを改めて確認しようという発想が、「国籍がどうであれですね、この日本で働くすべての人がやっぱり生き生きと働いて、同じ条件で、そして幸せな生活を送るということをまずそういう仕組みを考えるべき」という発言に表れているようです。

この問題は、およそ国内労働者の利益を代表する労働団体は必ず直面するものなのですね。

Book_12889 もう8年近く前に出た五十嵐泰正編『労働再審2越境する労働と〈移民』 (大月書店) に寄せた「日本の外国人労働者政策」という小論の冒頭で、私はこう述べました。

第1節 外国人労働者政策の本質的困難性と日本的特殊性

(1) 外国人労働者問題の本質的困難性

 外国人労働者問題に対する労使それぞれの利害構造をごく簡単にまとめれば次のようになろう。まず、国内経営者の立場からは、外国人労働者を導入することは労働市場における労働供給を増やし、売り手市場を緩和する効果があるので、望ましいことである。また導入した外国人労働者はできるだけ低い労務コストで使用できるようにすることが望ましい。この両者は「できるだけ安い外国人労働者をできるだけ多く導入する」という形で整合的にまとめられる。

 これに対し、国内労働者の立場から考えたときには、外国人労働者問題には特有の難しさがある。外国人労働者といえども同じ労働市場にある労働者であり、その待遇や労働条件が低劣であることは労働力の安売りとして国内労働者の待遇を引き下げる恐れがあるから、その待遇改善、労働条件向上が重要課題となる。しかしながら、いまだ国内労働市場に来ていない外国人労働者を導入するかどうかという局面においては、外国人労働者の流入自体が労働供給を増やし、労働市場を買い手市場にしてしまうので、できるだけ流入させないことが望ましい。もちろん、この両者は厳密には論理的に矛盾するわけではないが、「外国人労働者を入れるな」と「外国人労働者の待遇を上げろ」とを同時に主張することには、言説としての困難性がある。

 ほんとうに外国人労働者を入れないのであれば、いないはずの外国人労働者の待遇を上げる必要性はない。逆に、外国人労働者の待遇改善を主張すること自体が、外国人労働者の導入をすでに認めていることになってしまう。それを認めたくないのであれば、もっぱら「外国人労働者を入れるな」とのみ主張しておいた方が論理的に楽である。そして、国内労働者団体はそのような立場をとりがちである。

 国内労働者団体がそのような立場をとりながら、労働市場の逼迫のために実態として外国人労働者が流入してくる場合、結果的に外国人労働者の待遇改善はエアポケットに落ち込んだ形となる。そして国内労働者団体は、現実に存在する外国人労働者の待遇改善を主張しないことによって、安い外国人労働力を導入することに手を貸したと批判されるかも知れない。実際、外国人労働者の劣悪な待遇を糾弾するNGOなどの人々は、国内労働者団体が「外国人労働者を入れるな」という立場に立つこと自体を批判しがちである。しかしながら、その批判が「できるだけ多くの外国人労働者を導入すべき」という国内経営者の主張に同期化するならば、それはやはり国内労働者が拠ることのできる立場ではあり得ない。いまだ国内に来ていない外国人労働者について国内労働市場に(労働者にとっての)悪影響を及ぼさないように最小限にとどめるという立場を否定してまで、外国人労働者の待遇改善のみを追求することは、国内労働者団体にとって現実的な選択肢ではあり得ないのである。

 この利害構造は、日本だけでなくいかなる社会でも存在する。いかなる社会においても、国内労働者団体は原則として「できるだけ外国人労働者を入れるな」と言いつつ、労働市場の逼迫のために必要である限りにおいて最小限の外国人労働者を導入することを認め、その場合には「外国人労働者の待遇を上げろ」と主張するという、二正面作戦をとらざるを得ない。外国人労働者問題を論じるということは、まずはこの一見矛盾するように見える二正面作戦の精神的負荷に耐えるところから始まる。

 労働政策は労使の利害対立を前提としつつ、その間の妥協を両者にとってより望ましい形(win-winの解決)で図っていくことを目指す。外国人労働者政策もその点では何ら変わらない。ただその利害構造が、「できるだけ安い外国人労働者をできるだけ多く導入する」ことをめざす国内経営者と、「できるだけ外国人労働者を入れるな」と言いつつ「外国人労働者の待遇を上げろ」と主張せざるをえない国内労働者では、非対称的であるという点が特徴である。

この「一見矛盾するように見える二正面作戦」が、とりわけ昨年末以来の中小企業団体主導の猛烈なロビイングで(それは働き方改革法案の提出を巡って中小企業団体から強いプレッシャーがかけられ、それをなだめるための「飴」としてバーターされたという面もあるようですが)急速に非専門技術的労働力の導入という方向に舵が切られたため、「労働市場の逼迫のために必要である限りにおいて最小限の外国人労働者を導入することを認め、その場合には「外国人労働者の待遇を上げろ」と主張する方向に向かわざるを得なくなったというのが、今現在進行しつつある状況の率直な描写なのでしょう。

そこで、労働団体として問われるのは、「国籍がどうであれですね、この日本で働くすべての人がやっぱり生き生きと働いて、同じ条件で、そして幸せな生活を送るということをまずそういう仕組みを考えるべき」というのを、現場レベルでどう確保していくのか、ということになるでしょう。

昨日のエントリでも述べたように、一応骨太方針でも、

また、入国・在留審査に当たり、他の就労目的の在留資格と同様、日本人との同等以上の報酬の確保等を確認する。

という一句は入っているのですが、問題はそれをだれがどこでどういう風に確保するのかという点です。

ここがいい加減になると、結局人手不足を外国人のチープレーバーでごまかして対応するための手段になってしまい、日本人の労働条件にも生活条件にも悪い影響を与えていくことになりかねません。

 

 

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コメント

カトリック信徒の利益だけを考えればいいはずのローマ法王が、いまや宗教の垣根を越えて人類の平和を祈念する世界最大の象徴となり得ているのも、20世紀における東欧での「宗教そのものを否定する」共産政府との妥協なき闘いの過程を抜きにしては、起こりえない事だったかもしれない。

マックスウェーバー・大塚久雄の影響もあってか、プロテスタントが強調されがちな日本では、ローマ法王を「世界最大の信徒数の頂点」としてのみ紹介するきらいがあるが、いやいや、20世紀~明確な人類包摂姿勢の現法王フランシスコへと至る歴史を思う時、そんな簡単なものじゃないし、今なお、国内労働団体がぶつかるのと共通するような課題に取り組み続けていると考えるべきだろう(→キリスト教を否定する他信仰者や無信仰者の救済をも願う!)。

※20世紀のローマ法王史については松本佐保『バチカン近現代史』(中公新書)参照。良書。↓
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投稿: 原口 | 2018年7月 8日 (日) 20時04分

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