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公立学校非常勤講師に対する労働基準法適用

毎日新聞にこういう記事がありまして、

https://mainichi.jp/articles/20180705/ddl/k27/040/358000c (是正勧告 授業準備時間にも報酬を 東大阪労基署、府教委に3度)

東大阪市にある府立高校の男性非常勤講師に賃金の未払いがあったとして、東大阪労働基準監督署が2017年~18年、府教委に3度の是正勧告を出していたことが分かった。府教委は非常勤講師について、準備などに要した時間に関係なく授業1コマ当たりの報酬を2860円に固定する制度(通称・コマ給)を採用しているが、労基署は労働時間に応じて対価を支払うよう求めた。府教委は勧告に従って、約20万円の支払いに応じた。

 授業教材作成などに従事した時間の対価が支払われないのは労働基準法違反だとして、非常勤講師が労基署に申告。府教委は「準備や成績評価などまで含めた対価として、コマ当たりの報酬は高めに設定している」と主張したが、労基署は認めなかった。府教委は勧告に従う一方、府立学校に2700人以上いる非常勤講師のコマ給の仕組みは維持。担当者は「管理職がすべての非常勤講師の勤務時間を管理、把握するのは難しい」と説明する。
 コマ給による未払い賃金は学習塾のアルバイト講師を巡っても問題になり、厚生労働省は学習塾業界などに改善を求めた。

これを見て、あれ?と思った方、そう、公立学校の先生にも労働基準法はちゃんと適用されているのです。しかし本題はそこではない。

ボーッと生きてんじゃねんよ!!地方公務員にも労働基準法が適用されているということすら知らない日本国民のなんと多いことか!!と慨嘆したいわけでもない。

ただ、公立病院のお医者さんセンセイの場合、単に労働基準法が適用されているだけではなく、それを行使する権限は労働基準監督署にあり、だから監督官が公立病院にやってきて、宿直と称して監視断続労働とは言えないようなことをやっているのを見つけては是正勧告をしたりするわけです。

ところが、同じセンセイと呼ばれる地方公務員である公立学校の先生の場合、労働基準法の規定は適用されているとは言いながら、それを監督するのは人事委員会、あるいは首長自身という、いささか奇妙な形になっていて、実質的に法律を適用する体制になっていないのですね。

学校の先生の労働時間問題のかなりの部分は、この法施行の権限のずれでもって説明できる面もあるのではないかとすら思っていますが、それはともかく、ここではじめの記事に戻ると、おや?労働基準監督署が是正勧告していますね。どうしてなんでしょうか。

ということで、ここから法制局的な説明に入ります。まず、労働基準法の大原則から。

(国及び公共団体についての適用)
第百十二条 この法律及びこの法律に基いて発する命令は、国、都道府県、市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする。

この大原則をねじけさせている地方公務員法の規定です。

(他の法律の適用除外等)
第五十八条 ・・・
3 労働基準法第二条、第十四条第二項及び第三項、第二十四条第一項、第三十二条の三から第三十二条の五まで、第三十八条の二第二項及び第三項、第三十八条の三、第三十八条の四、第三十九条第六項、第七十五条から第九十三条まで並びに第百二条の規定、労働安全衛生法第九十二条の規定、船員法(昭和二十二年法律第百号)第六条中労働基準法第二条に関する部分、第三十条、第三十七条中勤務条件に関する部分、第五十三条第一項、第八十九条から第百条まで、第百二条及び第百八条中勤務条件に関する部分の規定並びに船員災害防止活動の促進に関する法律第六十二条の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定は、職員に関して適用しない。ただし、労働基準法第百二条の規定、労働安全衛生法第九十二条の規定、船員法第三十七条及び第百八条中勤務条件に関する部分の規定並びに船員災害防止活動の促進に関する法律第六十二条の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定は、地方公共団体の行う労働基準法別表第一第一号から第十号まで及び第十三号から第十五号までに掲げる事業に従事する職員に、同法第七十五条から第八十八条まで及び船員法第八十九条から第九十六条までの規定は、地方公務員災害補償法(昭和四十二年法律第百二十一号)第二条第一項に規定する者以外の職員に関しては適用する。

ごちゃごちゃしていますが、労働時間の原則を定めている労働基準法32条は「職員」にも適用されます。しかし、

5 労働基準法、労働安全衛生法、船員法及び船員災害防止活動の促進に関する法律の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定中第三項の規定により職員に関して適用されるものを適用する場合における職員の勤務条件に関する労働基準監督機関の職権は、地方公共団体の行う労働基準法別表第一第一号から第十号まで及び第十三号から第十五号までに掲げる事業に従事する職員の場合を除き、人事委員会又はその委任を受けた人事委員会の委員(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の長)が行うものとする。

というわけで、「病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業」は労働基準監督著の管轄なのに「教育、研究又は調査の事業」はその管轄外で、自分で自分を監督するという形になっているのです。

別表第一(第三十三条、第四十条、第四十一条、第五十六条、第六十一条関係)
一 物の製造、改造、加工、修理、洗浄、選別、包装、装飾、仕上げ、販売のためにする仕立て、破壊若しくは解体又は材料の変造の事業(電気、ガス又は各種動力の発生、変更若しくは伝導の事業及び水道の事業を含む。)
二 鉱業、石切り業その他土石又は鉱物採取の事業
三 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
四 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
五 ドック、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱いの事業
六 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
七 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
八 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
九 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業
十 映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業
十一 郵便、信書便又は電気通信の事業
十二 教育、研究又は調査の事業
十三 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業

十四 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業
十五 焼却、清掃又はと畜場の事業

ところが、もう一遍話がひっくり返って、学校の非常勤講師は労働基準監督署がやってくる、と。なぜかというと、地方公務員法の初めの方を見ていくと

(この法律の適用を受ける地方公務員)
第四条 この法律の規定は、一般職に属するすべての地方公務員(以下「職員」という。)に適用する。
2 この法律の規定は、法律に特別の定がある場合を除く外、特別職に属する地方公務員には適用しない。

第58条でごちゃごちゃ適用関係が複雑になっている「職員」というのは一般職だけだと。ではその一般職というのは何かというと、

(一般職に属する地方公務員及び特別職に属する地方公務員)
第三条 地方公務員(地方公共団体及び特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)のすべての公務員をいう。以下同じ。)の職は、一般職と特別職とに分ける。
2 一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする。
3 特別職は、次に掲げる職とする。
一 就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙、議決若しくは同意によることを必要とする職
一の二 地方公営企業の管理者及び企業団の企業長の職
二 法令又は条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程により設けられた委員及び委員会(審議会その他これに準ずるものを含む。)の構成員の職で臨時又は非常勤のもの
二の二 都道府県労働委員会の委員の職で常勤のもの
三 臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職
四 地方公共団体の長、議会の議長その他地方公共団体の機関の長の秘書の職で条例で指定するもの
五 非常勤の消防団員及び水防団員の職
六 特定地方独立行政法人の役員

ふむ、どうも公立学校の非常勤講師というのはこの第3号の「臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職」に相当し、それゆえ適用関係も労働基準法の大原則に素直に戻って、労働基準法がそのまま適用されるし、それを監督するのは人事委員会や首長さん自身ではなく、労働基準監督署がやってくるということになるというわけなんですね。

本日の法制執務中級編でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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