« 外国人労働者受け入れ、外食・サービスや製造業も対象に | トップページ | LGBTと人権擁護法案 »

2018年7月24日 (火)

過労死等の防止のための対策に関する大綱

本日、過労死等の防止のための対策に関する大綱の変更が閣議決定されたとのことです。

https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/30_TAIKOU_HOUDOU_BETTEN2.pdf

マスコミ報道はもちろん、この数値目標に集まるのでしょうが、

1  新たに「第3 過労死等防止対策の数値目標」を立てて、変更前の大綱に定められた「週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下」など3分野の数値目標を改めて掲げるとともに、勤務間インターバル制度の周知や導入に関する数値目標など新たな3つの分野の数値目標を掲げたこと。
※数値目標
・2020年までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満とする。
・2020年までに、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を10%以上とする。

やや玄人好み的ですが、労働研究の観点からは、この一節が注目です。

2 調査研究等
(1)過労死等事案の分析
過労死等の実態を多角的に把握するため、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所に過労死等の防止のための研究を行うため設置されている過労死等防止調査研究センター等において、過労死等に係る労災支給決定(認定)事案、公務災害認定事案を継続的に集約し、その分析を行う。また、過重労働と関連すると思われる労働災害等の事案についても収集を進める。分析に当たっては、自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療、建設業、メディア業界等過労死等が多く発生している又は長時間労働者が多いとの指摘がある職種・業種(以下「重点業種等」という。)を中心に、若年者、中高年者等各年齢層の状況を踏まえつつ、裁量労働制等労働時間制度の状況、労働時間の把握及び健康確保措置の状況、休暇・休息の取得の状況、出張(海外出張を含む。)の頻度等労働時間以外の業務の過重性、また、疾患等の発症後における各職場における事後対応等の状況の中から分析対象の事案資料より得られるものに留意する。また、労災保険に特別加入している自営業者や法人の役員の事案についても分析を行う。精神障害や自殺事案の分析については、必要に応じて自殺総合対策推進センターの協力を得て実施する。また、労災請求等を行ったものの労災又は公務災害として認定されなかった事案については、今後の分析方針の検討を行った上で、必要な分析を行う。

この「過労死等防止調査研究センター」とは、

https://www.jniosh.go.jp/groups/overwork.html

ここに、「過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究」の平成27,28年度の報告書がアップされています。

https://www.jniosh.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2016_03.pdf

1)事案解析:全国の労働局及び労働基準監督署より収集した平成22 年1月~平成27 年3 月の労災認定事案の調査復命書3,564 件(脳・心臓疾患事案1,564 件、精神障害事案2,000 件)の事案について解析を行った。調査復命書上のデータは電子化を行い、データベースを構築した。性別、年齢、支給決定時の疾患名、業種、職種、健康診断の実施状況などを優先的に集計し、脳・心臓疾患事案の全体像を把握した。また、脳・心臓疾患の労災請求・支給の最も多い運輸業・郵便業(うち自動車運転従事者)に着目し、被災例の特徴も整理した。精神障害事案については上記の基本的な変数並びに業務による出来事との関連を検討し、精神障害(自殺を含む)の起った背景を把握した。

https://www.jniosh.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2017_01.pdf

<1 過労死等事案の解析>
過労死等調査研究センターが作成した過労死等データベース(以下、「データベース」という。)を用いて、以下の解析を行った。
【労災認定事案】
① 業務上と認定された脳・心臓疾患1,564 件について、雇用者数100 万人当たりの発生割合に基づいて詳細な解析を行った。発症時年齢は「50-59 歳」、従業者規模は「10-29 人」が最多であった。雇用者100 万人当たりの脳疾患は3.7 件、心臓疾患は2.3 件であり、脳疾患の方が多く注意を要することが分かった。業務上認定の要因は「長期間の過重業務」が9 割を超えて主要因であったが、労働時間以外の負荷要因としては、拘束時間の長い勤務、交代勤務・深夜勤務、不規則な勤務が認められた。雇用者100 万人当たりの事案数で業種別にみると、漁業、運輸業・郵便業、建設業、宿泊業・飲食サービス業、サービス業(他に分類されないもの)が上位であった。
② 業務上と認定された精神障害(自殺を含む)2,000 件も同様に解析した。男性では「30-39 歳」、女性では「29 歳以下」及び「30-39 歳」が最多であった。自殺に絞ると、男性では「40-49 歳」、女性では「29 歳以下」が最多であった。業務による心理的負荷としての出来事に着目すると、全体では長時間労働関連が46%、事故・災害関連が30%、対人関係関連が21%であったが、自殺に絞ると長時間労働関連が70.5%に上り、特に情報通信業では95.5%に達した。これらの出来事の影響は業種による差が大きいことが分かった。
③ 「過労死等の防止のための対策に関する大綱」で過労死等の多発が指摘されている5 つの職種・業種(自動車運転従事者、教職員、IT 産業、外食産業、医療等)のうち、本年度は「自動車運転従事者」と「外食産業」について、労働条件の特徴などを抽出し解析した。「自動車運転従事者」では、トラックドライバーは深夜・早朝を含む運行が多く、運行時刻が不規則であるとともに、荷役に伴う大きな身体的負荷が認められた。タクシー・バスドライバーは拘束時間が長く、客扱いによる大きな精神的負荷が特徴的であった。「外食産業」では昼間2 交代に渡る長い勤務、現場責任者の場合の長い拘束時間と少ない休日という特徴があった。
④ 脳・心臓疾患の労災認定事案数が業種として最多の運輸業・郵便業における認定事案465事例を詳細に解析した。心臓疾患では死亡が多かったのに対して、脳疾患では生存が多かった。被災月をみると、1 月~3 月の厳寒期と7~9 月の猛暑期という二峰性の分布を示した。トラック運転手に着目すると、勤務中の被災が大半であった(84%)。そのうち、約半数が事業場で被災し、特に荷扱い中によく生じていることが分かった。
⑤ 東日本大震災の被災3 県(岩手、宮城、福島)において、震災に関連していると推測される事案(震災関連過労死等)を21 件抽出し解析した。いずれも男性で、平均54 歳であり、業種、職種、認定疾患名は多岐にわたっていた。

【労災不支給事案】
⑥ 業務上認定事案と同時期の5 年間の脳・心臓疾患及び精神障害の労災不支給決定事案(業務外)の調査復命書を全国の労働局・労働基準監督署より収集し、データベースを構築し解析を行った。脳・心臓疾患1,961 件は男性が85%,女性が15%と女性の占める割合が業務上認定事案の状況(男性96%、女性4%)に比べて多かった。男性では50 歳代が最多であり、決定時疾患のうち脳疾患が58%であった。男性の業種別では建設業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業の順に多かった。女性では「50-59 歳」と「60-69 歳」がそれぞれ3 割を占め、脳疾患が79%に及んだ。業種別では医療・福祉や卸売業・小売業など対人サービスのある業種が多かった。全体として、発症前1 か月から6 か月の間の時間外労働時間は平均30 時間ほどであった。労働時間以外の労働負荷要因としては、交代勤務・深夜勤務と拘束時間の長い勤務がそれぞれ10%程度であった。一方、精神障害2,174 件(平成23 年の認定基準による)については、業務上認定事案と同程度に男性が多く(6 割)、自殺では男が9 割と大半を占めた。発症年齢別では「30-39 歳」と「40-49 歳」がそれぞれ3 割を占めた。自殺に限ると「29 歳以下」が最も多かった。業種別にみると、雇用者総数の多い製造業、卸売業・小売業、医療・福祉などで多かった。男女を問わず、最も多かった出来事は「上司とのトラブル」であった。

なお、平成29 年度は、労災認定事案では重点5業種のうちの残り3業種(教職員、IT産業、医療)について解析を深めるほか、全業種について各負荷要因等の影響をより精密に解析する。労災不支給事案についても、平成28 年度の成果及び平成29 年度中に得られた成果を基に各負荷要因等の影響をより精密に解析する。

|
|

« 外国人労働者受け入れ、外食・サービスや製造業も対象に | トップページ | LGBTと人権擁護法案 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/3288/73912973

この記事へのトラックバック一覧です: 過労死等の防止のための対策に関する大綱:

« 外国人労働者受け入れ、外食・サービスや製造業も対象に | トップページ | LGBTと人権擁護法案 »