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社会民主主義に未来はあるか?@『生活経済政策』7月号

Img_month_2 『生活経済政策』7月号をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

http://www.seikatsuken.or.jp/monthly/

今号の特集は「社会民主主義に未来はあるか?」です。

特集 社会民主主義に未来はあるか? ― ポスト「第三の道」の混迷と可能性

はじめに/小川有美
社民政治の衰退?— 戦略、組織、環境/吉田徹
ドイツ社会民主党はなぜ危機に陥ったのか/野田昌吾
社会民主主義に未来はあるか?:スウェーデン/ 鈴木賢志
英国における社会民主主義の可能性/今井貴子

いや、日本の社会民主主義は過去半世紀にわたって未来のない状態が続いてきましたから、今さらな問いですが、そういう日本の状況を批判する際に(私なんかも含めて)やたらに出羽の守よろしく持ち出されてきたのが本特集で取り上げられている西欧諸国の社会民主主義なのであってみれば、そのご本尊(?)が未来のない状態になりつつあるというのは二重の意味で深刻です。

最初の総論的な吉田徹さんの論考では、「1990年代後半のリベラル化」が、その頃の成功とその後の失速の原因ということになります。

・・・それまでの社民は、70年代後半の英労働党政権や80年代前半のフランス社共政権を典型例として、ケインズ主義に基づく総需要管理策によってインフレと通貨安、財政赤字を招いたとされ、経済運営能力が弱点となっていた。他方で個人の自己決定権を重視する新自由主義の台頭を見て、社会では個人主義的価値観が敷衍していく。その結果、社民勢力は経済政策では市場重視に、分化・社会的にはリベラルへと変身していった。政治社会学者イングルハートの言う「脱物質主義的価値観」キッチェルトの言う「左派リバタリアニズム」のように、個々のライフスタイルや多文化主義、社会的真のりティの自己決定権を重視した政策を掲げるようになったのである。つまり、新自由主義の波をかぶったポスト冷戦時代の西欧社民は、政権担当能力を示すためにも、それまでの大きな政府路線、財政拡張路線を撤回し、自由貿易と資本市場の自由化を認める親グローバリズム路線へと転換する戦略が採られた。これは、戦前の反省から資本市場の民主的な統御を是とする「社民的合意」を棄却することを意味した。・・・

90年代後半はもっとも、この「リベラル化」戦略が功を奏し、西欧社民は清新なイメージで以て捉えられ、新たな支持を集めたが、それは伝統的な支持基盤の喪失を意味した。・・・

一般的に、労働者層は文化的・社会的にリベラルなわけではなく、反対に勤労や自助努力、同胞意識を強く持つ。1950年代にこれを「労働者権威主義」と名付けた政治社会学者リプセットは、経済的に脆弱な労働者は、保護を求めて権威主義的になる傾向があるとした。その上で、労働者層が文化的・社会的な権威主義へと傾斜するのが防がれたのは、労働者の権利拡大が社会権の強化と言ったリベラルな価値と親和的だったからに過ぎないとした。・・・

すなわち、従来の労働者層ではなく、新中間層の支持を求めた90年代の社民政党は、経済的な保護主義を撤回し、文化的・社会的なリベラルへと軸足を移し替えたことで成功した。もっとも、90年代の景気拡大の中で生まれた新中間層は、社民政党への政党帰属意識を持っていない。その流れに棹さして政権交代を実現した社民政党は、経済政策の次元では保守主義・自由主義政党と差別化を図れず、経済上の失政で以て有権者から直接的に制裁を受けることになる。

さらに文化的・社会的リベラルを嫌う労働者層の支持は、ポピュリズム勢力へと振り向けられる。2000年代に入ってからの右派ポピュリズムは、雇用創出や社会保障水準の維持、自由貿易制限など経済政策上は保護主義、移民やマイノリティの権利抑制など社会的には権威主義的政策を掲げて支持を拡大していった。経済的な再分配を必要とし、文化的・社会的に保守的な層は、ポピュリズム政治になだれ込んでいく。社民政党は政策的立場からサービス業の高度専門・高技能従事者などの支持を集めるものの、再分配重視で権威主義的な熟練工や単純労働者両階層との支持を両立させることは難しく、それが社民政党の脆弱さとなって現れる。・・・

すごくデジャビュがあるのは、こういう議論は本ブログで良く紹介する「ソーシャル・ヨーロッパ・ジャーナル」でも多くの論者が繰り返し論じている所だからですね。

この後、野田さんのドイツ、鈴木さんのスウェーデン、今井さんのイギリスと各論が続きます。

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コメント

 皆さん、今晩は。

>新中間層の支持を求めた90年代の社民政党

 松尾匡先生や北田暁大さんの言うところの「左翼2.0」ですね。

 資本の肥大化と国民の貧困を招いた「左翼2.0」の指導者の罪は大きいと思います。

 ただ、左翼2.0は泣かなkじゃなくならないでしょうね。資本と左翼エリートと組んでいるマスコミの支持が厚いですから。

投稿: 国道134号鎌倉 | 2018年7月 4日 (水) 22時26分

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