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2018年7月 3日 (火)

日本労働弁護団「解雇等労働契約終了に関する立法提言」@2002年

労働問題の世界はいろんな意味で奇々怪々で、鋭く対立していたはずの論点でいつのまにか立場が入れ替わっていたなんていういわば応仁の乱現象とでもいうべきことがあったりします。

先日自民党の賃金生産性向上PTに呼ばれてお話しした産業別最低賃金と地域別最低賃金をめぐる労使のスタンスの逆転なんてのもその一例ですが、もう少し最近の事例でこんなのがありました。

これはほんの十数年前のことなんですが、ですから今中年層の人々にとっては結構記憶に新しいことのはずですが、わりと忘れられている、あるいはむしろ忘れたふりをしている人が多いような気が・・・。

それは、日本労働弁護団が2002年5月に公表した「解雇等労働契約終了に関する立法提言」というもので、労働弁護団のホームページにも載っているかなと思って見てみたら、残念なことに(!?)同ホームページには2003年以降の提言しか載っていません。

http://roudou-bengodan.org/proposal/

Quarterly_newspaperこれはそれより1年早いのでホームページ上では歴史から削除されちゃっているのですが、中身があまりにも素晴らしく、読まれないのはあまりにももったいないので、本ブログで紹介したいと思います。『季刊労働者の権利』245号(2002年夏号)に載っています。

http://roudou-bengodan.org/quarterly_newspaper/245%e5%8f%b7%ef%bc%887%e6%9c%88%e7%99%ba%e8%a1%8c%ef%bc%89/

特集 解雇等労働契約終了に関する立法提言と最近の判例の動向
第1 今回の立法提言の経緯と基本的考え 一大立法運動を  宮里邦雄
第2 解雇等労働契約終了に関する立法提言及び解説  日本労働弁護団
第3 シンポジウム「解雇ルールの法政化を」(5月20日)  主催 日本労働弁護団

具体的には、

第2(解雇の正当理由)

使用者は、労働契約を維持しがたい正当な理由が存在しなければ、労働者を解雇することができない。

死んだ子の年を数えるようですが、なんでこういう素直な規定にしなかったんでしょうね。たぶん、解雇権濫用法理をそのまま書くほうが、こういう禁止規定にするよりも緩やかだという思い込みがあったのでしょう。それは全く間違いで、労基法20条の2やその後の労契法16条みたいに「無効だ」と書いてしまったから、その無効なものに金銭解決する理屈がどうにも立たなくなってしまったわけです。逆に、一見厳しそうに見える「解雇することはできない」という規定は、だからことごとく無効だとは限らないわけで、違法だけど金銭解決する余地が十分あったわけです。

第3(経営上の理由による解雇)・・・・・

第4(労働者の労働能力または行為を理由とする解雇)・・・・

第5(解雇理由の告知)・・・・

第6(解雇予告)・・・・

という調子で、いろいろと細かな規定が続きます。これまた、いかにも厳格な規制を設けるように見えますが、逆に言うと、正当な解雇とは何かを法律が教えてくれている規定というものでもあるのですが、まあ、そういう冷静な判断はなかなか難しかったのでしょう。

で、その先のほうにこういう規定があります。

第11(違法解雇等の救済方法)

1 この法律もしくは他の法律に違反して解雇が行われた場合、・・・・労働者は使用者に対して、次の各号のいずれかを選択して請求することができる。

一 労働契約上の地位の確認、原職又は原職相当職での就労請求、賃金請求、及び、精神的損害等に関する賠償請求

二 うべかりし賃金相当額及び精神的損害等に関する賠償請求

2 原職及び原職相当職が存在しない等客観的かつ合理的な理由があるとき、使用者は、労働者の原職又は原職相当職への就労請求を拒むことができる。

おやおや、なんと、日本労働弁護団はほんの16年前には、違法解雇については原職復帰と金銭解決の労働者側による選択制を主張していたのですね。

その時には、議論の焦点は使用者側による申し立てを認めるかどうかにあり、それに対してはもちろん猛烈に反対していたのですが、労働者側が金銭解決したいということについては、むしろ積極的に認めていたようです。

そして、この規定につけられた説明がこうです。

・・・しかしながら、解雇をめぐる紛争においては、「解雇は納得できないが、さりとて人間関係が破壊されているので職場復帰したくない。でも、企業に法的責任を取らせたい」という要求が多数存在する。このため、職場復帰を求めなくとも金銭賠償を請求することを可能とする方途を講じる必要があり、かつ、将来の賃金相当額の賠償も認めて、金銭賠償額の水準を引き上げる必要がある。

念のため、これは日本労働弁護団の提言です。

そして説明文のこのあとには、「ドイツでは・・・・・」「イタリアでは・・・・・」と続き、

・・・日本においても、これらと同様に法律を整備する必要がある。ただし、ドイツのように違法な解雇を子なった使用者に金銭補償の申し出権を認める必要はない。

と言っていたんですね。

この前後の季刊労働者の権利には、いまでも活躍されている労働弁護士のビッグネームがいっぱい載っていますので、たぶん、忘れてはおられないはずだと思います。

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