中国の不思議な事件
http://www.afpbb.com/articles/-/3174952?pid=20133812(社内で奇妙な現象相次ぐ…面接に落ちた若者、会社に半年住みついていた)
【5月20日 東方新報】中国・浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)上塘(Shangtang)派出所に、管轄内のある会社から通報があった。「半年も会社に住みついていた男を捕まえました」
・・・昨年にこの保険会社の面接を受けたが、不採用だった。だがある日、この会社の管理が甘かったことをふと思い出した。社員は施錠もせずに帰宅することもあったほどだ。そこで、運試しのつもりで同社に行ってみたところ、やはり鍵が開いていた。
始めのうちは寝泊りに使うだけで、社員の出勤前に会社を離れていた。社内にある物に触れることもなかったが、空腹になれば食べ物を少し拝借。きちょうめんなことに、ゴミは朝出る時に持って出ていた。
会社で「暮らす」時間が経つにつれ、この会社を自分の家だと感じるようになった章容疑者。自分のスーツが汚れたら、ちょうど目に入った誰かのスーツを着たり、机の上に記念コインが飾ってあれば自分の物のであるかのように持って行ったり。ほかにも、必要が生じると会社にある物を持ち出すようになった。章容疑者は借りていたスーツを何か月も着続け、汚れたら元の場所に返してしまったという。
章容疑者の存在を知った社員たちは、一様に驚いた。面接したことがあったとはいえ、誰も覚えていなかった。まさか半年も社内に住みついていたとは。章容疑者は現在、警察に拘留されている。(c)東方新報/AFPBB News
虚構新聞かと思うような噺ですが、いろんな意味で面白い。一方で共産党一党独裁がますます強化され、デジタル・レーニン主義と言われるような情報通信の中央集権的統制が行われる中国社会が、他方でこういう中間レベルの集団が穴だらけというか、すかすかというか、この犯人が「この会社を自分の家だと感じるようになった」のとは対照的に、この会社の従業員たちはあんまり「この会社を自分の家だと感じるようにな」っていなかったんだなあ、という感想が。じぶんがそのメンバーである家だったら、ちょっと変だったらすぐに気がつくでしょうが、単なるジョブの束であり、それ以上ではない会社に対しては、半年間会社に変なやつが住み着いていても気にならないくらい本質的には無関心ということなのでしょうか。
考えてみれば、かつて孫文は中国を「流砂の民」と呼び、だからこそ、国民党政権も共産党政権も極めて強面の上から押さえつけるような政治をやってきたという説がありますが、その一つの例証になる噺なのかもしれません。
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コメント
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私はメンバーシップ型の企業にずっと勤務していたのでジョブ型勤務は天竺の話のようで実感がわかないのですが、これはジョブ型の企業でも珍しい事なのでしょうか?
>単なるジョブの束であり、それ以上ではない会社
ジョブ型の企業とはそういうものだと思っていましたが、そうではないのでしょうか?
会社に部外者が侵入しないようにするのは保安(をジョブとする)部門の担当であって、それ以外のジョブの人は気にしなくてよいのだと思っていました(あっしには関わりのない事でござんす←古!)
>考えてみれば、かつて孫文は中国を「流砂の民」と呼び、だからこそ、国民党政権も共産党政権も極めて強面の上から押さえつけるような政治をやってきたという説がありますが、その一つの例証になる噺なのかもしれません。
高校の歴史の授業で以下のような話を聞いた気がします。
秦の始皇帝が(皇帝になる前に)宴会で酔いつぶれているのを見た冠担当の役人が(風邪をひかないように)上着をかけたところ、衣装担当の役人と冠担当の役人が職務怠慢と越権行為で処罰された。
始皇帝の時代からこのような厳密なジョブ型体制だとしたら、中国人は日本人よりジョブ型の考え方が強いのかもしれません。
投稿: Alberich | 2018年5月21日 (月) 23時04分
>国民党政権も共産党政権も極めて強面の上から押さえつけるような政治をやってきたという説があります
国民党時代は、外は列強、内は各地軍閥の脅威。
そして、共産党時代は、内は大躍進の大失敗、外はソ連との関係悪化による侵攻脅威。
時の権力が内を押さえつけることでピンチを何とかやり過ごそうとしてきても、押さえつけを受ける側の中国民としては、権力というのはその時々に変わり、その時々の都合で強権行使を行うもので、基本信用できるものではない、という暗黙の認識を無意識に深めるばかりで、結局会社組織という資本主義経済下の権力的装置にも、同じような対し方を行うことに特に不自然は感じない、となるのかもしれませんね^^;
投稿: 原口 | 2018年5月22日 (火) 21時36分