銀行の人材紹介業兼業に金融庁が戒め
今年1月、本ブログで「銀行が有料職業紹介事業可能に?」というベタ記事を取り上げたことは、ほとんどの方が覚えていないと思いますが、この件がその後いろいろあって、金融庁が銀行に対して指導していたということです。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2018/01/post-e65e.html(銀行が有料職業紹介事業可能に?)
今世界の注目を集めるピョンヤンの同名新聞と異なり、ほとんど注目を集めない日本の『労働新聞』ですが、
https://www.rodo.co.jp/news/46281/(「優越的地位」不当利用を戒め 金融庁が全銀行へ)
金融庁が行った監督指針の改正により、人材紹介業を兼業する銀行本体の出現が見込まれる状況となったなか、融資先企業に人材の受入れを迫ったりしないよう、主要行や地銀など全ての銀行に同庁が文書指導したことが分かった。3月末日から改正監督指針の運用が始まっており、「債権者」という優越的地位を不当に利用する行為を未然に戒めている。融資を受ける企業側としても覚えておきたい。同文書の注意書きでは、職業安定法に基づく「許可」を受ける必要性について強調している。…
この件、実は今年2月26日の労政審需給調整部会で、連合の村上陽子さんからあえて発言があり、厚労省サイドから金融庁に伝えますと言っているので、それが影響したのかもしれません。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000204387.html
○村上委員 本日資料は提出されておりませんが、 1 点要望です。
先月、金融庁が「主要行等の総合的な監督指針」と「中小地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正について、パブリックコメントの募集を行いました。先週 22 日が締め切りだったので、連合としてパブリックコメントの意見提出をしたところです。監督指針の変更内容としては、現在、銀行は職業紹介に関する兼業規制が職業安定法上は掛かっていないわけですが、監督指針においては、「その他の銀行業に付随する業務」として職業紹介は明記をされていませんでした。これを明記する改正であり、つまり銀行が職業紹介業務をできることを明確化するという改正が行われるということです。
連合として提出した意見としては、融資を通じた影響力を背景として、自行が行う職業紹介による人材の受入れを迫る行為や、自行の職業紹介と合わせて、融資先企業の人員削減を求める行為が懸念されるのではないかという点、また、貸金業と異なるとは言っても、個人顧客で、資金貸付けなどを行っている人を対象にして、自行の職業紹介によって、強制的に職業のあっせんなどを行うということが懸念されます。そのため、こうしたことが起こらないようにするということを、監督指針の中で明記するべきであるし、何かあった場合は、きちんと指導するべきであるという意見を提出しました。
また、職業紹介にも関わるところですので、先般、労働移動支援助成金の際に、職業安定法に基づく指針の中の、再就職支援を行う職業紹介事業者に関する事項において、職業紹介事業者が労働者の権利を違法に侵害すること、違法な侵害を助長すること、若しくは誘発することは許されないということも明記されていますので、こういったことも、今般、銀行が職業紹介事業を行うということになるのであれば、きちんと周知するべきです。また、何かあった場合には、金融庁と厚生労働省で連携をして対処すべきと考えております。こういった意見を提出したところでありまして、今後金融庁はどのように考えていくのかということもあるかもしれませんが、いずれかの時点で、どのようになったのかということを、是非部会において御報告いただきたいと思っております。こういうことを起こらないようにするためにも、こういうことをやっては駄目なんだということは、なるべく明示的にしていただきたいと思っております。以上でございます。
○鎌田部会長 連合としての御意見ということで、今述べられました。それについては事務局のほうから何かコメントはありますか。
○牛島課長 今日、特段案件には挙がっていませんで、資料はお配りしておりませんけれども、村上委員御紹介のとおり、金融庁の方で、銀行業が兼業業務として、人材紹介業を行うことができるということを、指針の中で明確化したと。それについてパブコメを実施して、 2 月 22 日までで意見を募集しているという話は聞いております。
一方で、銀行業が、やはり個人の方もそうですし貸付先企業もそうですが、どうしても優越的な地位に立つということが、実態としては生じうるところはありますので、そこが職業紹介事業の実施において見えない影響力という形で、本意ではない就職でありますとか、本意でない人材の移し替えというようなことが起こらないようにすることは、非常に重要な御指摘だと認識をしております。金融庁と具体的に、どのようにそこら辺の懸念を払拭するために仕組みを作れるかというのは、相談をしながら、他のところから出たパブコメもあろうかと思いますので、調整をしながら進めていきたいと思っております。問題認識は私は共有しておりますが、この部会の場にどのようにお返しするかということについては、部会長の御意向も確認しながら御報告させていただくような形で準備をしておきたいと思っておりますが、いずれにしても、これから金融庁と私どもの方で適切に調整をしていきたいと考えております。以上です。
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