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2018年5月12日 (土)

スティーブン・ヴォーゲル on 働き方改革

42 カリフォルニア大学バークレー校のスティーブン・ヴォーゲルさんは、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』のエズラ・ヴォーゲルさんの息子さんですが、ご自身も日本政治経済の研究者として活躍されており、先日、東洋経済オンラインに「働き方改革は案外バカにできない成果を生む 少なくとも男女平等にようやく向かう」という文章を寄稿しています。

https://toyokeizai.net/articles/-/219903

目下、国会で審議されている働き方改革。が、審議は詳細な条項について集中しているため、大局を見失いがちだ。しかし、日本には、露骨な性差別のような雇用システムにおける最悪の諸欠陥の一部を改善すると同時に、生産性を高めるというユニークなチャンスもある。
日本がそうした「ウィンウィン」の成果に達するという保証はない。だが、それだけに日本の政治家や官僚、経営者、労働組合代表、労働者、そして国民も含めて誰もががその成果を勝ち取るために努力をしなければならない。・・・

まあ、政治家、政治部記者、政治評論家、政治学者といった人々にとっては、働き方改革法案の細かな中身なんかより安倍政権を倒せるか倒せないかという政局の方が百万倍大事なのでしょうが、そうではないもっとまっとうなものの見方をアメリカの政治学者が諭してくれます。

実は、このスティーブン・ヴォーゲルさん、ちょうど4年前に来日した時に、私にも話を聞きに来られたことがあります。実にブリリアントな方だという印象でした。

日本は、政府が労働市場問題にかなりの焦点を当てているという点で、非常にユニークである。安倍晋三政権はこれを「働き方改革国会」と宣言し、そしてまたいわゆる「人づくり革命」としての教育と、職業訓練の再検討にも大きな努力を注いできた。
このため、日本において問題なのは政治的な意思ではなく、政策の内容と、それを職場レベルで実施することである。果たして政府はそれをきちんと理解できるだろうか。そして、雇用主は政府の政策に従うだろうか。

そう、実は問題の本質はそこにあります。

現在、日本には同一労働同一賃金と労働時間削減のような社会民主主義的な目標を推進する保守与党がある。確かに自民党は左派野党と同じ理由からこれらの政策を支持しているわけでも、また野党と同じ方法でこれらを実施するわけではない。自民党は同一の権利の推進よりも、労働力の増大、生産性の向上、消費への刺激、そして出生率の上昇に関心を抱いている。

この後の文章が実にいい意味で政治学者の本領発揮で、日本の近視眼的な政治評論家には求めてもなかなか得られないものですが、

にもかかわらず自民党および野党は労働改革の主要な部分について同意している。ある労働組合代表は私に向かってこう嘆いた。「自民党幹部は利口だ。彼らは選挙に勝ちたがっている。そのため彼らは野党から最高のアイデアを奪い、自分たちのものにしようとしている」
事実、これは自民党の伝統的な戦略だ。自民党幹部は1970年代にはより強力な環境保護と、より高額な社会福祉への支出という野党の提案を採用していた。小泉純一郎元首相は、2000年代に自民党が恩顧主義的であり腐敗しているという野党による批判を受け入れた。そして今、安倍首相は女性活躍の推進と労働生活の改善とを受け入れている。・・・

このあたり、野党は常に政府自民党にさきがけてこれから問題となる領域を提起し、将来必要になる的確な政策を提示するという重要な役割を果たしながらも、いざそれが現実化しようという段階になると、それを提起し、実施していくという役割を与党に奪われ、あとから見れば、10年後、20年後、30年後には誰も覚えていないような実につまらない、歴史の屑籠に放り込まれてしまうようなトリビアばかりに熱中してしまう、という歴史の愚行を繰り返してきたわけです。

 

 

 

 

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