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2018年5月22日 (火)

OECDとILOの報告書が労使関係を激推

OecdiloILO(国際労働機構)はそもそも100年前から労使関係を基軸とする機関ですが、OECDと言えば過去20年以上にわたってどちらかというと新古典派エコノミストを中心に労働市場の柔軟化を主唱してきた機関という印象が強いので、ここに来てILOと一緒になって労使関係を激推しているのを見ると、やや不思議な感もあります。

http://www.oecd.org/tokyo/newsroom/strong-labour-relations-key-to-reducing-inequality-and-meeting-challenges-of-a-changing-world-of-work-oecd-ilo-japanese-version.htm(日本語プレスリリース)

強い労働関係が不平等を削減し変化する労働環境の課題に対処する鍵を握る-OECD & ILO

アンヘル・グリアOECD事務総長は、本報告書の発表会見で次のように述べました。「より多くの質の高い雇用を生み出すことが、包摂的経済成長を達成する鍵を握っている。雇用が不安定で賃金が低迷し、デジタル革命がもたらす新たな課題を抱える現代では、建設的な労働関係がかつてないほど重要である。」この発表会見には、スウェーデン外相Margot Wallström氏、フランス労働相Muriel Pénicaud氏、ITUC事務総長Sharan Burrow氏、ILOフィールドオペレーション&パートナーシップ担当事務局次長Moussa Oumarou氏が同席しました。

この報告書は適正な労働と包摂的成長のための国際合意 (Global Deal for Decent Work and Inclusive Growth)という、2016年にスウェーデン首相Stefan Löfven氏が着手し、OECDとILOが協力して開発したイニシアチブの一環として出版されました。この多角的な利害関係者間のパートナーシップは、持続可能な開発目標に沿って、雇用の質の向上、公平な労働環境、グローバル化の恩恵の浸透を促す手段の1つとして、社会的対話を促進することを目的としています。この国際合意には約90のパートナー諸国政府、企業、経営者団体及び労働者団体、その他労働問題に関する対話と合意形成を有効にすることに寄与するべく自発的な関与を行う団体が参加しています。

グリア事務総長は、「我々は、この国際合意がより多くのより良い社会対話を刺激し、全ての労働者に強い意見と保護、公平な労働環境、雇用主との良い信頼関係を与えることができると確信している」とも述べています。

ガイ・ライダーILO事務局長は次のように述べました。「この新報告書から、社会的対話を強化することでより包摂的な労働市場と経済成長をもたらす機会が生まれ、社会経済的成果が向上し、労働者の幸福が高まり、企業の実績が改善し、政府への信頼が回復するということがわかる。」

http://www.theglobaldeal.com/app/uploads/2018/05/GLOBAL-DEAL-FLAGSHIP-REPORT-2018.pdf(英文報告書)

Building Trust in a Changing World of Work

The Global Deal for Decent Work and Inclusive Growth Flagship Report 2018

ざっと眺めた感じでは、仕掛け人のスウェーデンの北欧型労使関係システムへの激推が背後にあるのかなという印象です。

私の観点からの注目はもちろん、第4章の「LOOKING AHEAD – PROMOTING GOOD PRACTICES AND REBUILDING TRUST」、特にその第2節の「Looking ahead - The role of social dialogue in the future of work.」です。

ちょっと引用しておきますと、

The rise of the platform economy and the new forms of work associated with it are creating additional challenges for labour relations, on top of those that already exist. These trends are putting increased pressure on the traditional employer-employee relationship and the associated rights and protections which had been strengthened over time in advanced but also in emerging countries.While these new forms of work can expand choice in terms of where and when people work, they also raise concerns insofar as they may be shifting risks and responsibilities away from employers and onto workers. Many gig and on-call workers are not covered by standard labour regulations and institutions (including minimum wages, health and safety, and working time regulations) and this carries potential negative consequences in terms of job quality and inequality. These developments in the world of work also pose new challenges for freedom of association and the right to collective bargaining. Many workers in the platform economy are considered to be self-employed, meaning their collective organisation and negotiation may be seen as breaching competition laws.

プラットフォーム経済とそれに伴う新たな就業形態の興隆は労働関係にさらなる課題を作り出しており、そのトップは既に存在している。これらの趨勢は伝統的な使用者-労働者関係と先進国と途上国でも発展してきたそれに伴う権利と保護に圧力をかけてきている。これら新たな就業形態はいつどこで働くかという選択肢を拡大する一方、リスクと責任を使用者から労働者にシフトするという懸念を生み出している。多くのギグ、オンコール労働者は(最低賃金、安全衛生、労働時間規制など)標準的労働規制や機構によってカバーされておらず、これが仕事の質や不平等にマイナスの影響を与えている。これら仕事の世界における展開は結社の自由や団体交渉権に対しても新たな課題を提起している。多くのプラットフォーム経済の労働者は自営業者だと見なされ、彼らの団結体や団体交渉は競争法違反だと見なされてしまう。

本ブログや最近の小論で何回か述べてきたことですが、この問題こそがこれから労働法、労使関係が立ち向かっていかなければならない最大の課題です。それがなかなかできないのは、今までのツケがたまりに貯まっているから。

本当はこれまでの失われた20年の間にさっさとやってしまっとかなければならなかった「働き方改革」がこの期に及んで未だに高度成長期の亡霊のような残業代ゼロ法案云々ですったもんだしている極東某国の亡国ぶりが今更のように情けなくなります。

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コメント

最近IMFも労使関係を押していますね。90年代以降日本で起きていたインフレ率の低下と中間層の崩壊が、実は世界中で起きていたというのが金融危機以降に明らかになりつつあり、あまり賃金が上がらないのはマクロ経済にとってもよくない、という流れになっているようです。

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