技能実習のタテマエとホンネ@『DIO』337号
連合総研より『DIO』337号をお送りいただきました。今号の特集は「外国人技能実習における制度の 見直しと今後の課題」です。
http://www.rengo-soken.or.jp/dio/pdf/dio337.pdf
労働力需給ギャップと技能実習制度の課題 後藤 純一
外国人技能実習制度の第2の転換点 −2016年の技能実習法を中心に 上林 千恵子
日本で働くベトナム人労働者 −問題状況とその背景− 斉藤 善久
多くの課題をはらむ技能実習「介護」 伊藤 彰久
このうち、後藤さんの論文の最後のところは、いまさらながら技能実習制度の本音と建前の構造をよく描き出しています。
・・・・・これが、従来から一貫して主張されてきた 「タテマエ」で、このタテマエによれば、受 け入れる企業(多くは中小企業)は、国際協 力という崇高な理念に基づき技能移転のため 実習生を受け入れ、教育研修に専念し、決し て自らの人手不足を解消しようなどとする目 的をもってはならないというのである。つま り、中小企業が、来日のための渡航費や仲介 機関への手数料を支払い、3~5年の間給料も支払って、ひたすら技能実習生の技能向上 に努めるべしというわけである。このように、 受け入れ企業に対して費用・給料すべて持ち で教育研修を施せというのは、たとえば、留 学生を受け入れる大学に対して、授業料を取 るなどめっそうもないことで、来日費用、生 活費、ある程度の貯金ができるような給与す べてを支払って教育活動に専念しろといって いるようなもので、およそ実現できる制度で ないのは明らかであろう。
さらに、期間に関しても、技能の習得が唯 一の目的であれば、3~5年かかるものはそ れほど多くないであろう。例えば、介護にし ても専門学校に通えば1~2年で介護福祉士 になることができ、従来ヘルパー2級とされ ていた初級レベルの介護技能であれば数週間 の講習で得ることができるのである。
このように、最初から無理なタテマエを受 け入れ企業に押し付けているから、順法精神 が薄れ、劣悪な労働条件につながることもあ りえよう。したがって、いま必要なことはホ ンネに立ち返って真摯な議論をすることであ る。日本が将来の人手不足に対処するために、 入管法に列挙されているような高度人材のみ でなく、技能実習法令に掲げられているよう な職種の外国人労働者を受け入れていくべき か否かを国民すべてで議論し、早急に結論を 出すことが望まれる。
本題と関係ありませんが、後藤さんの肩書を見たら、
(神戸大学名誉教授 ・(株)後藤経済研究所 代表取締役)
退職後劇団ひとりならぬ研究所ひとりをされる方はたまにいますけど、株式会社の代表取締役なんですね。
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