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2018年4月12日 (木)

外国人労働者受け入れが急展開?

つい先日、『労基旬報』の3月25日号に「外国人労働政策の転換?」を寄稿したばっかりなのですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2018/03/2018325-937f.html(「外国人労働政策の転換?」@『労基旬報』2018年3月25日号)(中身は下記)

その話が急展開していて、もうほぼ結論らしきものが新聞に出ていて、

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018041101001492.html(外国人材に新たな在留資格検討 技能実習後、最長10年に)

政府は11日、外国人労働者の受け入れ拡大に向け、新たな在留資格を創設する方向で検討に入った。最長5年間の技能実習制度の修了者で一定の要件をクリアした人に限り、さらに最長5年間国内での就労を認める考えで、計10年間働けることになる。深刻化する人手不足に対応する狙い。6月ごろにまとめる「骨太方針」に盛り込み、今秋の臨時国会にも入管難民法改正案を提出する方針だ。

 安倍晋三首相が人手不足問題に関連し、2月の経済財政諮問会議で「外国人受け入れ制度の在り方について早急に検討を進める必要がある」と指示した。

2018041101001596

今秋には法案が出てくることになりそうです。

しかし、これはもう、言葉の上ではいかに否定しても、ほぼ移民政策そのものに近いですね。

(参考)

去る2月20日の経済財政諮問会議で、外国人労働政策について見直す方向が打ち出されたようです。会議後の大臣記者会見の記録によると、安倍首相から「移民政策を採る考えがないことは堅持」しつつも、「専門的・技術的な外国人受入れの制度の在り方について、在留期間の上限を設定し、家族の帯同は基本的に認めないといった前提条件の下、真に必要な分野に着目しつつ、制度改正の具体的な検討を進め、夏に方向性を示したい。官房長官、上川(法務)大臣は、関係省の協力を得て、急ぎ、検討を開始して欲しい」との発言があったということです。
 「専門的・技術的」という形容詞はついていますが、その後の質疑応答で茂木担当相から「おそらく介護であったり、建設であったり、運輸であったり、サービス・小売であったり、農業、それぞれの分野別にどういった能力が最低限必要なのであろうか、といったことを洗い出す」と、かなり具体的な業種が語られていますし、「それぞれの分野で、例えば今、人手不足というのが現実に存在すると、これが例えばITとかAIによって、どこまで効率化できるのか。さらには女性・高齢者の方の就業環境を整備することによって、どこまで解消が進むのだろうか。そこで残った分野、充足できない分野について充足の仕方を、先程申し上げたような形で検討していくということ」だと、人手不足対策であることも明確に示しています。
 上述のような業種での人手不足対策をなお「専門的・技術的」と呼ぶことには違和感を禁じ得ませんが、民間議員の発言を見ると、「日本が受け入れている外国人労働力は専門的・技術的分野だが、それ以外の人たちについては、国民のコンセンサスを得つつ、慎重に検討していく必要がある」とあり、すくなくともこれまで「専門的・技術的」とされてきた狭い職種以外にも(それをどう呼ぶかは別として)拡大しようという方向性であることは間違いないようです。
 実はこの動きの背景にあるのは、昨年2017年11月16日に日本商工会議所・東京商工会議所が公表した「今後の外国人材の受入れの在り方に関する意見~「開かれた日本」の実現に向けた新たな受入れの構築を」という意見書です。そこでは、「受け入れる外国人材は「専門的・技術的分野の外国人」に限定するという、これまでの原則に縛られない、より「開かれた受入れ体制」を構築すること」と、明確に「非技術的分野」の外国人の受入れを求めているのです。そして、そのために「移民政策とは異なる非技術的分野の受け入れ制度のあり方について、課題等を整理する「検討の場」を政府において早急に設置すること」を求めており、上記「制度改正の具体的な検討を進め、夏に方向性を示したい」という首相の指示はこれを受けたものと考えられます。
 これまでの日本の外国人労働政策は、専門的・技術的人材は積極的に受け入れるが単純労働力は受け入れないという二分法的な原則を立てつつ、「就労が認められる在留資格」以外のいわゆるサイドドアを通じた外国人労働が増えてきたという経緯があります。日商・東商の意見書はこの点に正面からメスを入れ、「例外として就労が認められている在留資格で就労を行う外国人材が年々増加している」のは「企業が求めるニーズと在留資格が乖離している」からだと、その見直しを求めているのです。
 その焦点は、「技能」という在留資格の拡大にあるようです。そもそも真の単純労働というのはそれほど多くなく、現在人手不足に悩んでいるのはいわゆる技能労働系の職種です。ところが現在入管法上在留資格として認められている「技能」は、外国料理の調理師からワイン鑑定まで9職種に過ぎず、たとえば外国人留学生が専門学校で学び日本の国家資格を取得しても「技能」と認められません。日商・東商が狙う最大の突破口はおそらくここにあります。
 加えて、「技術」についても、「自然科学、人文科学の分野に属する技術・知識を必要とする業務」として原則として大卒以上という要件に疑問を呈し、「産業界、特に建設業や製造業等では、現行の「技術」の定義に当てはまらない、一定の知識・経験を有する“技術者”への需要は高い」と、その拡大を求めています。
 ちなみに日商・東商の意見書では、「非技術的分野の受入れ」について、「諸外国(例:韓国)の事例等を参考に」と述べ、そこに「韓国では、2004年より「雇用許可制」を導入し・・・」と注釈をつけており、韓国型雇用許可制を念頭に置いているらしいことが窺われます。
 サイドドアとして1993年に創設され、様々な問題を指摘されながら2016年にようやく単独立法化された改正技能実習制度が昨年11月に施行されたばかりですが、外国人労働政策は既にその先に向けて走り出そうとしているようです。その萌芽として既に、2016年改正入管法で「介護」という在留資格が新設され、また現在(本連載昨年7月25日号で紹介したように)国家戦略特区における農業外国人労働の解禁が進められています。しかしそういうパッチワーク的なものではなく、包括的に「技能労働」レベルの外国人労働者を受け入れる枠組を作ろうという動きとして、注目に値します。

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