道幸哲也『労働組合法の基礎と活用』
道幸哲也さんより『労働組合法の基礎と活用 労働組合のワークルール』(日本評論社)をお送りいただきました。ありがとうございます。
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7713.html
労働組合法を基礎から学べるテキスト。労組法の第一人者が現代日本の労働組合の意義と役割を鋭く分析し、実践的な解説を行う
というわけで、まさに実践型テキストになっています。
最初の「本書の問題関心」で、こういう記述があります。
・・・第3部ともいうべきものは別書で本格的に検討する予定である。そこでは個別紛争処理をめぐる組合の新たな役割に注目した。最近の労働法の動きの顕著な特徴として、契約法理や人権法理に関する議論が活発になったことが挙げられる。個別紛争の増加ともいえる。しかし、外見は個別的であっても、実際は集団的な側面がある紛争は少なくない。就業規則をめぐる紛争がその典型といえる。同書では紛争の集団的性質の可視化を試みるとともに、関連して組合の新たな役割を考察し、労働法全体の見直しのステップとしたい。組合法と個別法の二元構造ではなく、両者の交錯、とりわけ組合法から見た個別法の法理の再構成ともいえる。この領域については学説上もほとんど検討されていないので、バランスのとれた解釈論というより課題の発見、追求が中心となる。解説する余裕がないので一緒に考えてほしいテーマである。乞うご期待。
というわけで、「乞うご期待」のところに気が行ってしまいます。
第1部 労働組合法の基礎
第1章 変貌する雇用社会
1 職場は今どうなっているか
2 多様な働き方
3 労働者概念をめぐる論争
第2章 労働条件の決定と紛争処理のシステム
1 労働条件はどう決まっているか
2 労使紛争の処理・解決システム
第3章 労働組合に関する基礎知識
1 労働組合とは
2 労働組合の組織形態
3 組合組織率と低下の原因
4 従業員代表制構想を考える
第2部 労働組合員として活動する
第4章 労働条件の集団的決定と不当労働行為
1 集団的な労働条件決定過程
2 集団化のパターンと不当労働行為
3 使用者概念
第5章 組合を作る・加入する
1 組合の結成
2 組合への加入
第6章 組合との距離――組合内部問題
1 組合との関係における組合員の権利・義務
2 組合と従業員・別組合員間の紛争
第7章 組合員であること――不利益取扱いの禁止
1 不利益性の基準
2 不利益取扱いの類型
3 報復的不利益取扱い
第8章 不当労働行為の成否――いわゆる不当労働行為意思論
1 判例法理の全般的な傾向
2 不当労働行為意思をどう考えるか
第9章 組合活動をする――支配介入の禁止
1 支配介入のパターン
2 便宜供与の中止等
第10章 使用者との協議・交渉
1 労使間コミュニケーション
2 団交権保障の効果
3 団交拒否紛争の類型
4 不誠実交渉をめぐる問題
5 団交差別・団交を媒介とした差別
6 救済をめぐる論点
第11章 プレッシャー活動
1 争議行為
2 多様な組合活動
第12章 労働協約
1 労働協約の締結
2 労働協約の効力
3 労働協約の終了
4 就業規則との関連
第13章 労働委員会を利用する
1 労働委員会の権限・役割
2 労働委員会の手続
3 和解をめぐる問題
4 救済命令のあり方
5 救済利益
6 労働委員会制度の直面する課題
第14章 これからの労使関係法
道幸さんの言う個別法と集団法の再構成というのは、同じ問題意識というわけではありませんが、私も折に触れ論じてきたトピックではあります。
http://hamachan.on.coocan.jp/shugyokisoku.html(「集団的労使関係法としての就業規則法理」 『季刊労働法』219号)
http://hamachan.on.coocan.jp/roirokyokouen.html(「集団的労使関係の再構築」『月刊労委労協』2010年4月号)
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