フォト
2025年2月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28  
無料ブログはココログ

« 樋口美雄・石井加代子・佐藤一磨『格差社会と労働市場』 | トップページ | 白河桃子『御社の働き方改革、ここが間違ってます!』 »

2018年4月19日 (木)

阿部正浩・山本勲編『多様化する日本人の働き方』

24940阿部正浩・山本勲編『多様化する日本人の働き方――非正規・女性・高齢者の活躍の場を探』(慶應義塾大学出版会)をいただきました。

http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766424942/

もう一つの「働き方改革」に注目せよ!

長時間労働是正や賃上げなど、正社員の働き方の再検討が進んでいる。
だが、非正規雇用者、女性、高齢者が働く場を効率化することで、就業率をさらに高め、
少子高齢化に十分対応可能な労働環境を整備できる。
わが国の将来に向けて、その方策を考察・提言する。
▼“働き方改革”の推進は、正社員の境遇改善だけでとどめてはいけない。非正規雇用者、女性、高齢者の働き方をさらに効率化することで、少子高齢化した労働市場にも対応できる!
▼ ダイバーシティ経営を推進するシステム構築を提言!

非正規雇用から正規雇用への転換、非正規雇用者へのセーフティ・ネットの整備、「時間の貧困」を考慮に入れた対策、育児休業期間や育児支援の再考による、女性がより働きやすい場の提供、定年退職や失業が高齢者の健康にどう影響するかなどを考察することで、就業機会をさらに開拓し、少子高齢化に十分対応できる労働環境の整備が可能となる。将来に向けて、より幅広い働き方を選択できるシステム構築の方向性を提言する。

目次は以下の通りですが、

序 章 日本の労働市場はどう変わってきたか(阿部正浩)

  第Ⅰ部 非正規雇用の労働力と貧困

第1章 非正規雇用から正規雇用への転換と技術革新(小林徹・山本勲・佐藤一磨)
第2章 非正規雇用者へのセーフティ・ネットと流動性(戸田淳仁)
第3章 所得と時間の貧困からみる正規・非正規の格差(石井加代子・浦川邦夫)
 
  第Ⅱ部 女性労働力と出産・育児

第4章 結婚・出産後の継続就業
――家計パネル調査による分析(樋口美雄・坂本和靖・萩原里紗)
第5章 育児休業期間からみる女性の労働供給(深堀遼太郎)
第6章 企業における女性活躍の推進(山本勲)
第7章 地域の育児支援政策の就業・出産への効果(伊藤大貴・山本勲)
 
  第Ⅲ部 高齢者の労働力と定年・引退

第8章 中高年の就業意欲と引退へのインセンティブ(戸田淳仁)
第9章 中高年期の就業における家族要因
――配偶者の就業と家族介護が及ぼす影響(酒井正・深堀遼太郎)
第10章 定年退職は健康にどのような影響を及ぼすのか(佐藤一磨)
第11章 高齢者の失業が健康に及ぼす影響(山本勲・佐藤一磨・小林徹)

実は本書は、「樋口先生が慶應義塾大学を定年退職される機会に、樋口先生の労働経済学研究の発展とパネルデータの構築・普及に関する長年の貢献に対して捧げるもの」として、「樋口先生から薫陶を賜った研究者」たちがまとめた本ということで、世代的にも1991年生まれの方まで幅広く寄稿していますね。

最近の第4次産業革命をめぐるあれこれの議論でも注目されるのはやはり第1章でしょう。

抽象業務、ルーチン業務、マニュアル業務がどうなっていくか、それが就業形態とどう関わっているか、そしてそれと日本の教育訓練システムとの関係など、興味深い指摘がされています。

・・・まず、「抽象業務」を担う人材の育成が重要といえる。技術者育成も多く含むが、製造業関連の職業訓練が充実している中、ホワイトカラーの「抽象業務」の人材育成について現状は、企業内で独自に育てる傾向がある。大学、大学院においてマーケティングや経営戦略論など、「抽象業務」に関する教育を受けた者でも、企業に入ればそれまで学んだ知識を白紙に戻し、企業独自の知識を覚えていくという傾向が強いであろう。荒木・安田(2006)は大学での専門分野と関連した仕事を望んでいる学生ほど就職内定を得にくくなっているという分析結果が示され、特に文系学生でその傾向が強いことがわかる。

また、企業内での人材育成は正規雇用者に限定される傾向があり、非正規雇用者は企業で活用できる「抽象業務」に関する技能を蓄積できない。企業内ですぐに活用できるホワイトカラー「抽象業務」人材の育成が、企業外でも果たされることが望まれる。企業外教育で得た技能が、企業でより重視されるような、産学連携が求められるのではないだろうか。また、職業訓練においてホワイトカラー「抽象業務」の現場を再現して学ぶなど、現場に密接に結びつけた訓練プログラムが求められよう。企業外からの「抽象業務」人材の育成は、非正規の正規転換を促進させるだけでなく、需要変化に沿った労働力の再配置にも貢献することが考えられる。・・・

« 樋口美雄・石井加代子・佐藤一磨『格差社会と労働市場』 | トップページ | 白河桃子『御社の働き方改革、ここが間違ってます!』 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 阿部正浩・山本勲編『多様化する日本人の働き方』:

« 樋口美雄・石井加代子・佐藤一磨『格差社会と労働市場』 | トップページ | 白河桃子『御社の働き方改革、ここが間違ってます!』 »