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2018年4月15日 (日)

菅沼隆,土田武史,岩永理恵,田中聡一郎編『戦後社会保障の証言』

L17435 菅沼隆,土田武史,岩永理恵,田中聡一郎編『戦後社会保障の証言--厚生官僚120時間オーラルヒストリー』(有斐閣)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641174351

社会保障制度の成立と展開に関する重要なトピックについて,政策立案の舞台裏で活躍した厚生省の官僚にオーラルヒストリーの手法によるインタビューを行い,その証言を収録し,解説を加えた。官僚を中心とした意思決定過程や知られざる舞台裏を明らかにする。

というわけで、最近盛んなオーラルヒストリーを厚生官僚経験者に適用した膨大な記録の中から精選した部分を解説付きで一般向けに刊行したものです。目次は次の通りですが、

第1部 戦後社会保障の基盤形成─皆保険・皆年金,社会福祉の展開(1945~72年)
 第1章 国民皆保険体制の成立(土田武史)
 第2章 国民皆年金の達成(中尾友紀)
 第3章 生活保護制度をめぐる展開(岩永理恵)
 第4章 社会福祉の展開と児童手当の導入(浅井亜希・田中聡一郎)
第2部 「福祉元年」と1980年代の社会保障の見直し(1973~85年)
 第5章 「福祉元年」前後──1973年年金改正,健康保険改正,老人医療費「無料化」(菅沼隆・森田慎二郎・深田耕一郎)
 第6章 医療保険制度改革(新田秀樹)
 第7章 1985年公的年金制度改正(百瀬優・山田篤裕)
第3部 新しい社会福祉の方向性(1980~2000年)
 第8章 1980~90年代の社会福祉(田中聡一郎・岩永理恵・深田耕一郎)
 第9章 介護保険の構想(菅沼隆)

むしろ、インタビュイーがどういう人々であるかを示したほうが本書をよく物語ってくれるように思います。

第1尾第1章の国民皆保険は幸田正孝、第2章の国民皆年金は吉原健二、古川貞二郎、坪野郷司、長尾立子…といったラインナップで、これはもうほんとにぎりぎりのタイミングでしょう。

今日の社会保障問題とのつながりからいうと、まず興味深いのは第7章の1985年年金改正で、証言者は辻哲夫、青柳親房、坪野郷司の3人ですが、国民年金を基礎年金にしてしまうというのが職員たちの意図に反した山口新一郎局長の方針であったことなど、興味深い話が書かれています。もっと最近ではやはり介護保険の制定過程が興味深いでしょう。

ただ私が個人的に面白かったのは、第4章の中の児童手当の立案に関する近藤功さんの証言でした。

・・・当初はまあやったと思うよ。問題はその後だよ。その後、どうしてこういうことになるのかと思ってね。ずっと一本道を歩けばいいのに、行ったり戻ったりでしょう。世界の児童手当発展史から見れば、日本の歴史は非常に特異な存在だと思うんです。・・・・

フランス式の児童手当に固執して制度設計にあたった担当者だからこそそういう感想を持つのでしょう、ただ、その元凶は

・・・大蔵省の圧力が大きいと思うんです。

というのは、ミクロ的には間違いではないでしょうが、マクロ的にはやはり、制度制定頃から日本型雇用システムが諸政策の前提になっていったということが一番大きなファクターであったように思われます。

もう一つ、読んでいって「へえ、へえ」だったのは、第8章の社会福祉基礎構造改革のところで、河幹夫さんがこう語っているところです。

・・・ちょっといえば、福祉関係者は厚生省の中であまり信用されていないから。私がじゃないですよ。福祉関係者が、社会局の職員もあまり信用されていないから、医療保険みたいな高尚なことを扱える人が福祉みたいな低俗な人間に足をすくわれるのはたまらないというのが、厚生省の文化にあったと思いますよ。・・・

おやおやそうなんですか。医療保険は高尚で福祉は低俗なんですか。

 

 

 

 

 

 

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