高等教育における人材育成の費用負担@『JIL雑誌』5月号
『JIL雑誌』5月号の特集は「高等教育における人材育成の費用負担」です。今現在ホットな話題であるとともに、日本型雇用システムの中ではなかなか理解を得にくく、進みにくい話でもあるという意味で、本ブログの読者にとっても興味深いはずです。
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2018/05/index.html
特集:高等教育における人材育成の費用負担─どのように次世代を育てるのか
提言 多面的な検討が求められる 市川昭午(国立大学財務・経営センター名誉教授)
解題 高等教育における人材育成の費用負担─どのように次世代を育てるのか 編集委員会
論文 高等教育費負担の国際比較と日本の課題 小林雅之(東京大学教授)
奨学金制度の歴史的変遷からみた給付型奨学金制度の制度的意義 白川優治(千葉大学准教授)
学歴収益率についての研究の現状と課題 北條雅一(駒沢大学教授)
高等教育無償化政策と大学再編の可能性 山本清(東京大学客員教授)
国立大学法人の運営財源と人材育成・養成 水田健輔(大正大学教授)
紹介 大学夜間学部という選択肢─学生生活とキャリア形成の機会 大島真夫(東京理科大学講師)
最初の小林さんの論文は矢野眞和さんの論をもとに、スウェーデンのような公的負担による福祉国家主義、日本のような親負担による家族主義、、アメリカのような本人負担による個人主義という枠組みをもとに、それが本人負担にシフトする傾向にあると指摘しつつ、公的負担の拡充の課題を論じています。この問題が難しいのは、日本型雇用システムによる年功賃金が親負担主義を支えてきたという面だけではなく、日本型雇用システムによるジョブ意識の希薄化が公的負担の前提となる教育の公共性、信頼性を高めないという面があり、おのずから動くことが期待しがたいということでしょう。
白川さんの論文は、奨学金制度の変遷の歴史を詳しく解説しており、大変役に立ちます。
面白かったのは、論文ではなく紹介という位置づけで載っている「大学夜間学部という選択肢─学生生活とキャリア形成の機会」で、矢野眞和さんの言う18歳主義の対極にある大学夜間部の現状を紹介しています。昼間フルタイムで働くことが「超長期のインターンシップ」だという言葉には、思わず意表を突かれた気がします。
・・・夜間学部学生のフルタイム就業は、単にお金を稼ぐということ以上に、インターンシップの目指す目的をも同時に満たしているのではないかということである。フルタイムで働くとはどういうことか、仕事に対して自分は適性があるのか、といったことは、わざわざインターンシップに行って学ばずとも、フルタイム就業している夜間学部学生はすでに百も承知というわけである。フルタイム就業が超長期のインターンシップのような役割を担っているといってよいだろう。
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