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『HRmics』29号

1海老原さんちのニッチモの雑誌『HRmics』29号が届きました。今号は「高等教育、無償化の前に考えること」と題して、雇用システムと密接な関係にあるヨーロッパの教育システムの実態を浮き彫りにしています。

http://www.nitchmo.biz/hrmics_29/_SWF_Window.html

1章 教育無償化のこれまでと今後
§1.教育無償化論 その歴史と論点
§2.高等教育無償化の前に必要な、5つの転換

2章 一足先に高等教育無償化を果たした欧州社会はどうなっているのか
§1. ドイツは大学生の増加に職業訓練の刷新と職業大学の拡張で対応した
§2.社会的責任と経済原理のバランス
§3. 歴史背景と社会構造から欧州型教育×職務連携をとらえる

3章 高等教育と職業訓練の解はドイツにあり!
§1. ドイツ式職業訓練と就活の知られざる事実
§2. 職業大学経済学部はまさに就活予備校

話の中身は、たとえば拙著『若者と労働』などで繰り返し論じられてきたことではありますが、それを大学教育に職業的意義がないのが当たり前の日本社会で安易に高等教育無償化という政治的スローガンだけが掲げられる昨今の風潮に、欧州の現実をきちんと示すという、まことに意義深い特集に仕上がっているといえましょう。

特集最後の記事「職業大学経済学部はまさに就活予備校」では、「経済学部とは名ばかり、経済学より実務・実学を学ぶ」の実態が細かく書かれていて、たぶん多くの日本の大学関係者は激怒するかもしれません。例の富山さんの言う「L型大学」そのものですから。

最後の「民は細部に宿る」という海老原さんの結びの言葉を、やや長めに引用しておきましょう。

・・・もう一つは、「産業界と大学教育を近づけ、大卒後、スムーズに職に就けるようにすること」。

・・・その最大のポイントは何か?

特集中にて、山内・寺田両氏が語り、そして3章では本文中にそのまま示したことだ。

「職業訓練や職業教育の起点が、企業都合の訓練ポストになっていること」。

そう、いわば、求人なのだ。今、企業が必要とする職務を必要とする人数分、ネットや雑誌で公募する。そして企業が選考を行い、ふさわしい人のみ受け入れる。これはほぼ「採用プロセス」そのものだ。必要でなくなった職務は募集されなくなり、新たなに必要となった職務は、それを認可していく。こんな流れがベースにあるから、訓練も随時「今風」にアップデートされる。まさに末端が民需でできているからこそのダイナミズムだろう。

こうした仕組みがなければ、いちいち、産業界と教育界と行政の偉い人が集まり、角突き合わせて、資格や訓練制度の改廃をしない限りアップデートはできない。そしてこんな上からの作業だと、企業実務には耐えられず、人事管理としては使えないものになっていく。・・・

41xyoyr79ol__sx373_bo1204203200_なお、わたくしの連載「原典回帰」は、アラン・フランダースの『イギリスの団体交渉制-改革への処方箋』です。労使関係がイギリス経済の諸悪の根源とまで言われ、例のドノヴァン委員会報告が出されたころに、イギリス労使関係学者の最高峰といわれたフランダースが書いたこの本は、半世紀後の今読み返すと実にいろいろと物事を考えさせます。

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コメント

ヨーロッパにおける無償あるいは低負担の高等教育の背景に、高等教育を受ける人間を早期に厳しく選別している事実があることはやはり重く受け止めなければならないでしょうね。

日本でいまいち高等教育無償化への支持が広がらないのは、そのような選別をしないまま、猫も杓子も大学にいく高等教育の肥大化が進んだことと無関係ではないでしょう。

さりとてヨーロッパのような10歳前後での選別が日本で受け入れられるとも思えない。現実的には高校以降の緩やかな複線化でお茶を濁すしないでしょうね。

ドイツでの密接な産学連携を基礎とするシステマティックな職業教育を日本でも導入すべきでしょうが、そのためには企業が専門性を尊重する人事システムを導入することが不可欠な前提でしょう。そのような流れについていけない企業には税制などを通じて退場を促すべきでしょうね。職業教育を安価な労働力の調達として利用されることのないような制度設計が求められます。

投稿: 通りすがり2号 | 2018年4月 2日 (月) 21時39分

hamachanさん、どうもありがとうございます。民は細部に宿るをとりあげていただけて、さすが!です。
夏頃に日本型雇用総括本を出します。20万文字を超える初の専門書(チック)な本となります。その中では、hamachanさんにご示唆いただいた、法社会学やフォーク・レイバー・ローの観点を、なんとか軸に据えました。まだまだな中身ですが、上梓即、お送りいたします。

それよりも、原典回帰はいつもながら私の労働観の糧となっております。まだまだご継続、よろしくお願い申し上げます。そろそろ磯田進さんが出ないでしょうか(笑)

投稿: 海老原嗣生 | 2018年4月 3日 (火) 11時44分

おお、素晴らしい!海老原さんの日本型雇用総括本!20万文字を超える初の専門書!今からよだれが出そうです。

ちなみに、原典回帰はもうしばらく出羽の守めぐりで、次回は今まで取り上げてこなかったフランスにしようかとおもっています。なかなかいいのがないんですけど。

投稿: hamachan | 2018年4月 3日 (火) 14時29分

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