『新しい労働社会』第11刷
本日4月28日は、世界的には国際労働者祈念日(International Workers’ Memorial Day)であり、
https://www.ituc-csi.org/april-28-international-workers?lang=en
ここ日本では、連合のメーデー中央大会が開かれる日でしたが、
https://www.jtuc-rengo.or.jp/news/news_detail.php?id=1365
わたくしに関しては、岩波書店から『新しい労働社会』の第11刷の連絡が届きました。
この本、出たのは2009年ですから、もう9年近くになりますが、そこで論じたことがますます重要な政策課題となってきています。
第1章の労働時間問題についても、9年前はまだまだ自由な働き方という空疎な議論と残業代ゼロ反対というゼニカネ論ばかりが幅を利かせ、一番肝心の労働者の命と健康を守るための労働時間規制という本質を訴える声は細々としたものでしたが、この9年の間に議論の本筋はだいぶまっとうなものになってきたように思われます。ゼニカネではなく労働時間そのものの上限規制が法案に盛り込まれるなどということは、当時はとてもまだ現実化するとは思われていなかったことを考えると、この間の事態の進展に感慨深いものがあります。当時はほとんど知られていなかったインターバル規制も、徐々に普及してきて、努力義務として法案に盛り込まれるに至りました。まあ、いまだに安全衛生としての労働時間という認識よりも残業代ゼロというゼニカネにこだわる古い意識の人々の声ばかりがやかましいのは残念ですが。
また、第2章の非正規労働についても、同一労働同一賃金というスローガンの下で、ようやく賃金問題の本質にかかわる議論が行われるようになり、第3章で論じた社会保障や教育問題との関連も、高等教育の無償かとか奨学金問題がホットトピックになるように、かつてと比べると世の中に何が問題化がすっと通じる傾向が強まってきたと感じます。時代は変わらないように見えて、やはり少しずつ変わってきているし、9年前の拙著はその間、あるべき方向性を静かに指し示し続けてきたと自負しても罰は当たらないでしょう。
残念ながら第4章で取り上げた労使関係に関しては、この間法政策レベルではほとんど進展は見られなかったとはいえ、様々なレベルで問題意識が提起されてきたことは、これからの進展の土壌づくりになっていると信じたいと思います。
9年経っても、古びるどころか、今現在労働問題の議論に求められる問題意識を最もストレートに示し続けてきている本だと、いささかの自負心を持って言えるのは、正直言うとかなり意外でした。
この間、若者、中高年、女性と、各論的な本も(それぞれ違う版元から)出してきましたが、やはりこういう時論的な本の総論的な位置にあるのは本書なので、今回の増刷でさらに引き続き多くの方に読んでいただけるのはうれしい限りです。
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