ディスカッションペーパー『中国におけるシェアリング・エコノミーの利用状況と労働法上の問題』
JILPTのディスカッションペーパー 18-04として、仲琦さんの『中国におけるシェアリング・エコノミーの利用状況と労働法上の問題』がアップされました。
http://www.jil.go.jp/institute/discussion/2018/18-04.html
昨年4月に明治大学で日中雇用・労使関係シンポジウムがあり、私も報告したことは前に書きましたが、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/post-5962.html(日中雇用・労使関係シンポジウム(再掲))
その時、日本側が伝統的な非正規の話ばかりしていたのに対し、中国側は時代の最先端の話ばかりしていたということをコメント欄に書いたところ、
昨日、今日とほぼ全日このシンポジウムに出て、いろいろと感想がありますが、一言で言うと、「非正規雇用」という統一テーマに対して、日本側は(私も含めて)より伝統的なというか非正規労働を取り上げていたのに対し、中国側はほぼ軒並みに、シェアリング経済、プラットフォーム経済という時代の最先端の新しい非正規労働を取り上げていたのが印象的でした。
同じシンポに出ていた梶谷懐さんが東洋経済で
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-b911.html(新たな労働問題に悩むシェアリング経済先進国@梶谷懐)
二日間の会議には、首都経済貿易大学の常凱教授ら中国からも多くの専門家が参加し、日中両国の非正規労働問題について議論を深めた。その中で、非常に印象深いことが一つあった。日本側の参加者が経済のグローバル化に伴う雇用の不安定化や、労働運動の直面する困難性といった従来型の労働問題を取り上げたのに対し、中国側の参加者はシェアリングエコノミーの急速な普及によって生じた新しいタイプの非正規労働問題を指摘した。両者の間に大きな問題意識のズレが見られたのだ。
と書かれるなど、似たような感想が共通に抱かれていました。
その中国のシェアリングエコノミーの状況を、中国出身の仲琦さんがまとめたのがこのディスカッションペーパーです。
それほど長いものではないので、是非リンク先で一読して欲しいと思いますが、
1.同じ就労形態の下で、就労者に契約形態を選択する権利が与えられる場合がある
2.本業と副業の区別ができず、使用者責任の帰趨が明らかではない場合がある
3.労働時間が短いほど業績が高く評価される、完全な「成果給」制度が存在する
というあたりは興味深いところです。
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