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2018年3月21日 (水)

玄田有史『雇用は契約』

Genda 玄田有史さんより『雇用は契約─雰囲気に負けない働き方』(筑摩選書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480016652/

雇用契約の終了を突如提示されたり、事情が飲み込めないまま給与額が減ってしまったり。会社を信頼していればOKという時代は終わり、いまや正社員であれ非正社員であれ、自分の身を守るために、雇用は契約という原点を踏まえる必要がある。本書は契約期間を軸に、多様化が進む21世紀日本の雇用の現実を見据え、誰もが納得できる職業人生を歩んでゆくための、望ましい雇用社会のあり方を提言。悔いなき職業人生を送る上でヒントに満ちた一書である。

という紹介文を見ると、なんだか働き方、生き方を説くメッセージ本みたいに思えるかもしれませんが、そうでもありません。いやまあ、最後の結章はそういう雰囲気もありますが、全体としてはむしろ労働経済学者玄田有史として、正規非正規を巡る実態と概念を緻密に論じている部分が大部分です。

第1章 「正規」の曖昧
第2章 大切なのは契約期間
第3章 多様化する契約
第4章 有期契約の現在と未来
第5章 契約期間の不明
第6章 期間不明のさらなる考察
第7章 変わりゆく契約
結章 契約から考える雇用の未来

かつ、ここ数年の玄田さんの論文を読んでいる人にとっては、JIL雑誌に載った「雇用契約期間不明に関する考察」とか、

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/02-03/pdf/069-085.pdf

BLTに載った「呼称から契約へ:多様化する労働市場」を思い出して、

http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2018/01_02/032-053.pdf

にやにやしたかもしれません。

ごく最近に至るまで雇用契約期間にはあまり注意を払わず職場の呼称中心で物事を見てきた労働経済学畑と、世の中は法令で動いているという大前提に基づき、有期か無期かを中心に据えて法政策を論じてきた労働法学畑との間には、人が想像するよりも大きな認識論的断絶があったようですが、そこに着目して一冊の本にまで仕立て上げてしまおうというようなことは、やはり玄田さんならではというべきなのでしょう。

ちなみに、行政分野的にいうと労働基準行政が労働法学的志向が強いのに対して、職業安定行政は労働経済学的志向が強く、そのため、職業安定行政では伝統的に有期か無期かという発想が希薄で、常用か常用でないかで線引きしてきた経緯があり、そのことが例の派遣法における常用だから特定派遣で届出といいながら実は有期でもOKという、労働法学的志向からすると奇妙な事態をもたらしてきた面もあったりします。

さて、本書をいただいたのは昨日3月20日でしたが、その日は夕刻、慶應義塾長を務められた清家篤先生退任記念懇親会が慶応義塾大学であり、用務を終えて駆け付けたところ、会場には玄田さんの髭面も待ち構えていて、早速本書のお礼を申し上げたところ、

「hamachanあれ読んだ?あれhamachanのことだよ」

と言われ、一瞬何のことだかわかりませんでした。

692_0203 JIL雑誌今月号の巻頭言を玄田さんが書いておられて、

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2018/02-03/pdf/001.pdf

そこに出てくる「ある労働法学者」というのは、実は私のことなんだそうです、ええっ?

この号、本ブログでもちゃんと紹介しているんですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/201823-1680.html

論文の紹介に気が行っていて、そこまで気が回っていなかったようです。

・・・ある労働法学者は官僚時代,国会待機で時間を持て余した時,過去の審議会の議事録を読み返 し,政策決定プロセスの勘どころを学んできたと いう。氏は後に国際機関に出向,各国の法律や制 度の理解を深める機会も得た。ゆえに今どんな新 たな労働問題が出てきても,自身に定まった歴史軸と国際軸に位置づけることで,説得力のある議論を常に展開できるのだ。

説得力のある議論を常に展開しているかどうかは人様が評価することですが、まあ過去の歴史を読み込んでおいて損になることはないと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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