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小峰隆夫・豊田裕「「ジョプ型雇用」への転換推進に関する考察」

Npi_quarterly_09_011公益財団法人中曽根康弘世界平和研究所というところが出している『NPI Quarterly』という季刊誌に、小峰隆夫・豊田裕「「ジョプ型雇用」への転換推進に関する考察」という論文が載っています。

http://www.iips.org/publications/2018/02/06131119.html

http://www.iips.org/publications/npi_quarterly_09_01.pdf

●研究トピックス

「「ジョプ型雇用」への転換推進に関する考察」小峰隆夫・豊田裕

実は、昨年10月、この研究所に呼ばれて、小峰さんや豊田さんらの前でお話をしたことがあるのですが、それを踏まえて書かれたもののようです。

最初声がかかったとき、なんで中曽根康弘世界平和研究所という、いかにも国際政治とか安全保障を主に研究してそうなところが、私の話を聞こうというのだろうと、若干不思議な気がしたのですが、「安全保障を中心とする調査研究、国際交流等の目的に添って、政治、経済、外交、安全保障等の重要課題の調査研究の他・・・」と、経済も研究対象ということで、労働問題も読めるようになっているようです。

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コメント

いいレポートですね。勝手ながら読んだ内容のサマリを以下記載させて頂きます。なお、いつもながら( )内は小職による追記です。ーーーー

JILPT濱口所長は「ジョブ型雇用」と「メンバーシップ型雇用」という概念を提示し、世間ではこれからジョブ型雇用への転換を進めるべきという論調が強まっている。(ここHamachanブログはその最前線であります)

確かにこれから日本が直面する人口減少などの構造的課題を踏まえると、ジョブ型雇用への転換は、労働供給を増やす効果および同一労働同一賃金の実現のためにも必要と考えられるが、とはいえメンバーシップ型は日本に深く根付いているゆえジョブ型への単純な移行は簡単ではないだろう。(実際にはかなり難しいでしょうが必要な課題なのです)

いま「働き方改革」が求められる背景には、少子高齢化や生産年齢人口減少という構造問題があり、この対策として女性と高齢者の労働参加率アップが非常に重要。その大きな柱は「同一労働同一賃金」と「長時間労働の是正」の2つ。

前者は正規と非正規の間の不合理な待遇差の解消をめざすことで多様な働き方の選択を広げ、非正規のモチベーションを上げて労働生産性と労働参加率を向上させるもの。後者は長すぎる労働時間を短縮し、ワークライフバランスを改善して女性や高齢者が働きやすい社会へ変えていこうとするもの。

日本(および韓国)企業に多く見られる「メンバーシップ型」とは、職務範囲や労働時間や就業場所が限定されない「無限定正社員」をさす。新卒一括採用で大量に人材を獲得し、OJTや社内研修で教育を行い、企業の都合により自由に職務を変えたり配置転換させたりできるが、他方で解雇へのハードルが高いという特徴を併せもつ。(とはいえ2000年前後の不況時に多くの日本企業も一斉にリストラを堂々と実施していましたね)

諸外国が採用する「ジョブ型」では、雇用契約で各人の職務内容や労働時間や就業場所が限定されるため、労働者は自分の強みや専門スキルを生かし、また企業はそうした「専門性」の高い労働者を確保しやすい。また、労働者は各自の職務記述書(労働契約)に記載された職務以外は行う義務が発生しないため「ワークライフバランス」が図られやすい。他方、職務範囲や労働時間が明確に規定されているため不景気時は失業するリスクを負う。

1950年代からの高度成長期において、労働者の圧倒的多数が「中卒以下」の学歴という状況下で急激な技術進歩にキャッチアップするために、日本企業は優秀な若者をまず採用し、社内のOJTで育成した。加えて戦前の「生活給」の考えが受け継がれ、それが賃金制度に反映され、いわゆる「三種の神器」を特徴とする日本型雇用システムが生成された。

当初はこのシステムに対して「政労使の反対」があったが、(石油危機をきっかけとして)1970年代には日本の高度経済成長を支えるものとして肯定的な評価へ代わり、また税や社会保障制度や教育制度もこのシステムを「補完」するものへ変貌を遂げていった。

しかしこのシステムは、企業の「継続的な高成長」を前提とするものだったため、バブル経済崩壊後には社員の一部を「非正規」としてメンバーシップから外すことで人件費を引き下げ、正社員を少数精鋭化するという「変質」が始まった。

足元で高まりつつある「メンバーシップ型からジョブ型へ」の機運。その背景には正規・非正規間の格差問題や、メンバーシップのハードルが高すぎることで女性や高齢者の力を生かす上での障害となっている面。

加えて、長時間労働による過労死やブラック企業の台頭などの面がある。そこで厚労省は産業競争力会議で、ジョブ型雇用の働き方を拡大した新たな「日本的就業システム」の構築の必要性を提唱した。

とはいえ、メンバーシップ型雇用は日本企業の強みの源泉であり、長い年月をかけて定着してきたものであるため、ジョブ型雇用への変換にはいくつかの大きな課題がある。

1つめの課題は、人事制度の(インフラ)再構築。各人の職務内容を規定したジョブディスクリプションを作成し、その上で各職務給の基準テーブルを作成する必要があるが、これには多大な手間を要する。

2つめの課題は、普通高校や大学(とくに文系)の教育内容の見直し。ジョブ型では学校卒業時に特定の専門分野の知識やスキルをもっていないと雇用されづらいため、専門知識や職業教育の充実を図る必要がある。

3つめの課題は、労働組合の(大)変革。同一職種内での企業間移動を円滑に行う必要があるため、賃金を含む雇用条件体系の再構築を図る上でも「産別労組」への転換が必要だろう。

上述のとおり、ジョブ型への転換は乗り越えるべき大きな課題があり簡単ではない。

そこで濱口氏の提唱する戦略とは、既存の正規社員と非正規社員の「中間」に第三の類型としての「ジョブ型正社員」を創出し、現在不本意にいずれかのポジションについている人たちの「受け皿」にしようとするものであり、現在日本の労働者が無限定の義務を負う正社員と、家計補助的低労働条件の非正規社員の「二極分解」している事態に対処しようとするものである。

最後にもっとも重要なことは、日本の企業全体がジョブ型への転換を「一斉に」行うことだろう。というのも、他社が日本型雇用を続けている限りは自社ではそのまま続けていた方が有利だといういわゆる「戦略的補完性」が存在するため、大きなプレイヤーが掛け声をかけてみんなで一斉にジャンプすること、Big Pushが鍵となるが、これには「政府による旗振り」が必要となるだろう。(まったく同感です。ただしその変革は、あと10ー15年くらいかけて優先順位をつけて段階的に実施していく必要がありましょう…)

投稿: ある外資系人事マン | 2018年2月 8日 (木) 18時25分

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