大内伸哉・川口大司編著『解雇規制を問い直す』
大内伸哉・川口大司編著『解雇規制を問い直す--金銭解決の制度設計』(有斐閣)をお送りいただきました。ありがとうございます。
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641165212
日本型雇用システムが変容する中で,それを前提に構築されてきた解雇規制を今後も維持していくことが本当に望ましいことなのか? 過去の政策論議を振り返るとともに,国際比較から日本の解雇法制を特徴づけた上で,理論・実証分析に基づく改革案を提示する。
下の目次にあるように、本書は山本陽大さんによる戦後解雇規制論の経緯、山本さんを含む若手労働法研究者による各国解雇法制の紹介といったおなじみの内容もあれば、川口・山本によるOECD解雇規制指標の検討、川口・安藤による法と経済学における解雇の分析など、まことに盛りだくさんで、全部消化するのにはだいぶ時間がかかりそうですが、なんと言っても本書の目玉商品は、川口・川田による経済学的に望ましい金銭補償ルールの提示でしょう。
というと、経済学者の金銭補償論なんかふざけたものに違いないと決めつける人もいるかも知れませんが、いやいや、本書はすごいことを提言しています。「はしがき」の言葉を引用すると:
・・・しかし、そうした予測を、本書は完全に裏切るであろう。本書の結論のコアの部分を先に述べると、次のようになる。
“企業が従業員を解雇するときには、その従業員がその後の職業人生に被る賃金面の不利益を全て補償(完全補償)しなければならない。”
をいをい、何事だって!?と思ったあなた、はい、その続きは是非本書を紐解いてください。(ていうか、実は私も法律関係のところだけざっと読んだだけで、肝心のその完全補償ルールの部分はこれからじっくり読みます。その上で改めて本書の中身についてコメントしますね。)
序章 解雇規制とは何か:いま「問い直す」ことの意義(大内伸哉・川口大司)
第1部 解雇規制をめぐる状況
第1章 なぜ金銭解決ルールが必要なのか:日本型雇用システムの変容(大内伸哉・川口大司)
第2章 解雇規制をめぐる議論の動向:金銭解決の問題を中心に(山本陽大)
第Ⅱ部 解雇法制の国際比較
第3章 OECDによる解雇規制指標と日本の解雇規制(川口大司・山本陽大)
第4章 各国の解雇法制:比較法からのアプローチ(大内伸哉・山本陽大・高橋奈々・小西康之・本庄淳志・烏蘭格日楽)
第Ⅲ部 解雇と金銭解決ルールの経済分析
第5章 経済学は解雇をどう捉えてきたのか(川口大司・安藤至大)
第6章 望ましい金銭補償の決定に向けて:完全補償ルール(川田恵介・川口大司)
第7章 完全補償ルールに基づく補償金額の算定(川田恵介・川口大司)
終章 新たな解雇規制に向けた提言(大内伸哉・川口大司)
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この問題を語る時に0/1で語られることが多くて、「いったいいくらなら」と言う話が全く出てこないのはよくわからないのです。
投稿: Dursan | 2018年2月24日 (土) 07時32分