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『DIO』334号

Dio 連合総研の機関紙『DIO』334号をお送りいただきました。今号の特集は「ディーセント・ワークの実現に向けた 労働権の再構成 」です。

www.rengo-soken.or.jp/dio/pdf/dio334.pdf

ディーセント・ワークと仕事の未来 田口晶子

労働権の再構成と「就労価値」論 −「分かち合い」社会の実現のために−  有田謙司

集団的労使関係の再生と法の役割  植村新

ここでは、植村さんの論文を紹介しておきます。「集団的労使関係を再生するために そもそも法はいかなる役割を果たしうるか、 果たすべきか」という問いに対して、植村さんが補助線として持ち出してくるのは、近年のドイツの法政策の動きです。

これについては、山本陽大さんが精力的に紹介しているのでわたしもかなり読んでいますが、その動向を踏まえて、植村さんは日本に対するメッセージとしてこう述べます。

 以上、協約能力と協約単一原則という2分 野における連邦労働裁判所判例の展開を概観 してきた。両分野の展開に共通するのは、集 団的労使関係の前提となる社会・経済状況が 変化し集団的労使関係の核心を成す協約自治 が機能不全に陥った場合に、連邦労働裁判所が 協約自治の機能を回復させるために積極的に法 的手当てを講じているということである。集 団的労使関係の機能を修繕・補完しようとす る積極的な姿勢は、判例法理のみならず立法 分野にも明確に認められるドイツ集団的労使 関係法の特徴である。

・・・・・しかし、ドイツ における集団的労使関係をめぐる判例・立法 の展開と比較すると、わが国における集団的 労使関係に対する法的支援・手当ての不十分さが浮き彫りになる。上記の指摘に即して言 えば、労働組合の発展に対する法の限定的な 寄与すら十分になされていないということで ある。いかなる労使関係の構築を目指すにせ よ、集団的労使関係の将来像を具体的に構想 したうえで、その効果的な実現に向けた法的 支援・手当てが積極的に講じられるべきと解 される。

もちろん、植村さんが引用する西谷敏さんの

そもそも「労 働法は、労働組合をつくり出したり、それを 発展させることはでき」ず、「労働法の改正 が労働組合の発展に対してなしうる寄与は限 定的」なのかもしれない

という言葉にあるように、こういう集団的労使関係における司法積極主義的発想には異論も多いと思われますが、でもこういう議論は必要ですよね。

あと、本号には連合総研30周年シンポジウムの記録も載っていますが、そのパネルディスカッションの中で記憶にとどめておきべき禿さんの発言を引用しておきます。

禿  「無限定」に働くことと平等を達成 しようという観点が結びつきやすかったと いう歴史的経緯があったのではないでしょ うか。能力に応じて賃金を払うことが平等 であるという考えです。ただし男性正社員 を前提にした平等主義であり、この狭い中での平等主義の問題が、いま深刻になっているのではな いでしょうか。しかし今では「無限定」に働くことが社 会の分断の要因になっています。能力主義の「能力」と して、「頑張り」とか、企業の要請に応える「姿勢」も 能力評価の対象としたことも留意すべきです。

・・・

禿   組合が企業別に組織されているのが日本の労働運 動にとって難しい問題になっています。退職した人は、 組合員ではなくなってしまいます。組合の決めたメンバ ーの外に非正規の人がいれば、組合員ではなくなる。高 い基準の中で生き残った人だけでメンバーシップを維持 されやすいのが企業別労組の特徴です。企業を超えた行 動や団結力を組合自身が強化していかないと、組合の存 在感は低下していくと思います。生活保障のシステムを 日本で拡充していこうという話になったとき、昔ながら の生産モデルを前提とした組織や運動では、限界があり ます。貨幣より希少なのは時間です。賃金のみならず時
間への取り組みを組合は強化すべきです。それが「片稼 ぎ」ではない生産の場作りにつながっていきます。

 

 

 

 

 

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