日本人は個人として優秀なのか集団として優秀なのか?
これはどちらかというと漫談風のエントリですが、経済産業研究所のサイトの新春特別コラムのとりわけタイトルにとても違和感を感じたので、その違和感のよって来るところをちょっと考えてみたいと思います。
https://www.rieti.go.jp/jp/columns/s18_0006.html (個人では超優秀な日本人が、企業体になるとなぜ世界に負けるのか;日本企業の極めて低い生産性の背景に何があるのか by 岩本晃一)
ところが、超優秀な日本人が大人になり、会社に就職して組織で仕事を始めると、どういう訳かとたんに、アウトプットは貧しくなる。就職した若者は、仕事の手を抜いている訳ではない。毎日夜遅くまで、必死で仕事をしているにも関わらず、組織としてのアウトプットは世界的に見て、極めて低い。いまや日本人の労働生産性の低さは世界的に有名だが、いまだに日本人の多くが日本が世界的に強いと信じ込んでいる「ものづくり」の分野でも、日本人の生産性は先進国のなかで、ほとんどビリに近い(図表1)。一体、日本の企業組織のどこがおかしいのだろうか。先日、ある友人が「うちの会社に入ってくる新人は、入社時は目がきらきらと輝いているが、1年経つと、死んだ魚のような目になる」と言っていた。その表現が必ずしも全ての若者を表現している訳ではないが、一面では真実であろう。・・・
いやいや、ちょっと待ってくれ、日本人は個人では超優秀だって?そして企業体になると世界に負け続けるって?
少なくともバブル崩壊までの日本では、全く逆の言説が世間で主流であったことは、一定年齢以上の人々であればみな覚えているでしょう。
曰く、日本人は個人では諸外国にかなわないが、集団になれば一致団結して頑張るからここまで成長できたんだ云々と。
欧米人は個人主義、日本人は集団主義という、今となってはかなりの程度疑わしい議論も堂々と通用していたその頃は、それと日本経済の強い競争力を絡めたその手の議論が様々な意匠をまといつつ流されていました。
さらには、これは中国人から、「中国人は一人では龍だが、三人だと豚になる」という議論もあって、これは裏返して言うと、「日本人は個人では豚なのに三人だと龍になる」という意味でした。
まあ、個人で行動したがるということと、その個人が成果を出せるということは別ですし、集団で行動したがるということと、その集団が効果を発揮するということは別ですから、安易な議論はすぐ底が抜けるのですが、とはいえ、時代が変わると、かつてどんな議論が流行っていたかが完全に忘れ去られて、全く逆の議論が栄えるという姿を見ると、こういうたぐいの議論にはあんまりかかわらないほうが(後世の見る人の目を意識するのであれば)身のためという気もします。
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「ドイツの経済の強さ」とやらには興味があったのですが。
> 国の仕組み全体が、教育も含め、モノを作って世界に売り、お金を稼ぐために出来上がっている。
輸入が輸出を上回っているドイツの GDP 内訳を示しておいて、なぜこういう認識になるのか不思議ですね。数字をみずに思い込みを先行させる御方のようで。
GDP=個人消費+政府消費+固定資本形成+輸出-輸入
つまり貿易はドイツの GDP にマイナスの貢献をしているわけでして。むしろ、国内の生産では賄えないほどの内需があり、輸入で補っている、と考えるべきのような。
ちなみに、先進国の GDP を生産面からみると、伝統的な産業分類に当てはまらない「その他の産業」の占める割合が大きく、製造業、運送業、飲食業などの伝統的な産業分類の生産が GDP に占める割合は年々低下しているのですよね。特に米国で顕著ですが。
投稿: IG | 2018年1月 8日 (月) 23時03分