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小林エリコ『この地獄を生きるのだ』

2887 小林エリコ『この地獄を生きるのだ』(イーストプレス)を、編集担当の方便凌さんよりお送りいただきました。

http://www.eastpress.co.jp/shosai.php?serial=2887

エロ漫画雑誌の編集者として月給12万、社会保険なしのブラック企業で働いた結果、心を病んで自殺未遂。仕事を失い、うつ病と診断され、やがて生活保護を受給することに。社会復帰を目指すも、やる気のない生活保護ケースワーカーに消耗し、患者を食い物にするクリニックの巧妙なビジネスに巻き込まれる。未来の見えない絶望の中、ふたたび巡り合った「漫画の編集」という仕事で運命を拓こうとするが……!? 女一人、「再生」するまでの記録。

いや、これは重い。ここに描かれているのはブラックな労働、ブラックな精神医療、そしてブラックな福祉行政。

初めに出てくるエロ漫画雑誌のブラック企業もブラックなら、統合失調症ではないのにデポ剤を打ち続け、お菓子屋さんで働かせて彼女を宣伝等として利用する悪徳メンタルクリニックもブラック。

そして、なかなか判断に悩むのがパーマさんという赤ら顔の生活保護のケースワーカー。彼女にとっては彼もブラックなんですが、でも福祉をめぐる言説の世界の物差しでいえば、彼はブラックじゃないのです。だって、とても働ける状態になかった彼女に無理やりに就労を強制しようとしたわけではないし、漫画編集という世界で徐々に就労の世界に復帰していき、やがて非常勤雇用の形で働くようになる彼女に対し、その収入を厳格に差し引くのではなく、むしろ生活保護をいつまでも受給できるようにしようとするのですから。

でも、そのことが、それこそが彼女にとってはブラックな福祉行政なのであり、だから彼女は生活保護廃止を「勝ち取る」のです。

・・・「生活保護廃止決定」

確かにそう書いてある。私は震えた。大声で自慢してやりたかった。・・・こんなにうれしい通知をもらったのは短大の合格発表以来の気がする。

やったぞ!私は自力で抜け出した!さんざん働けないといった奴ら!私は自分の食い扶持を稼げるんだぞ!どうだ!

ブラック企業に心をつぶされた人の社会復帰の物語として読むと、非常勤雇用になる前の段階で、心を病んだ漫画家の原作をこれまた心を病んだリライトする漫画家とのやり取りを編集者としてつなぐという役割を彼女がやったことで自信をつけていく姿が感動的です。

 

 

 

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