« 永野・長谷川・富永編『詳説 障害者雇用促進法 <増補補正版>』 | トップページ | え、連合って、関東連合ですか?ヤバくないですか? »

在宅ワークガイドラインから自営型テレワークガイドラインへ@『労基旬報』2018年1月25日号

『労基旬報』2018年1月25日号に「在宅ワークガイドラインから自営型テレワークガイドラインへ」を寄稿しました。

 昨2017年12月25日、厚生労働省の柔軟な働き方に関する検討会は報告をまとめるとともに、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の案を示しました。今回はこのうち二番目の自営型テレワークガイドラインの経緯と内容を見ていきたいと思います。これは現行の「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」を大幅に改定するものですが、この在宅ワークガイドラインはそもそもどういうものなのでしょうか。

 雇用によらず請負や委託によって自宅で作業する働き方(内職)は昔から存在します。1970年に制定された家内労働法は、そうした働き方をする人々を「家内労働者」と呼び、最低工賃や安全衛生規制などを講じました。同法は今も生きていますが、家内労働者は激減しました。というのは、同法では家内労働者を「物品の製造又は加工等に従事する者」と定義しているからです。1990年代以降激増した情報通信機器を利用してサービスの提供を行う在宅就業は対象外でした。そこで労働省は2000年に、在宅就労問題研究会の報告に基づき、労働省女性局長名の通達として「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」を策定しました。これは2010年に若干の改正がされています。

 今回の大改訂は、直接的には2017年3月の『働き方改革実行計画』に「非雇用型テレワークのガイドライン刷新と働き手への支援」が盛り込まれたことを受けたものですが、その実質的内容は既に厚労省サイドの検討会で示されていたものです。ただし、厚労省自身が設置したものではなく、その委託事業たる在宅就業者総合支援事業により設けられた今後の在宅就業施策の在り方に関する検討会(座長:鎌田耕一)が2016年3月にまとめた報告書なので、あまり知られていないようです。

 同研究会はそれに先立つ2015年3月の報告書で、家内労働のように厳格な最低工賃の仕組みは適当ではなく、安全衛生確保規定をそのまま適用することもできないとする一方、在宅就業者と発注者の間や、仲介機関を介する三者構成であることに起因するトラブル、報酬額の決定に関する問題を指摘し、家内労働法を抜本的に改正することにより、契約上の課題や秘密保持に関する規定等を盛り込んだ立法措置を講じることも考えられるとしていました。しかし、在宅ではない請負等、在宅就業と類似の課題が存在する可能性がある就業形態が存在する中で、在宅就業についてのみ施策を講じることについて整理がされていないとして、「将来的に必要な課題ではあるが、現時点では機が熟しているとはいえない」と否定的でした。この点については、『働き方改革実行計画』で、「雇用類似の働き方」全般について「法的保護の必要性を中長期的課題として検討する」ことが求められたことから、厚労省は別途2017年10月に「雇用類似の働き方に関する検討会」を設置して議論を開始したところです。

 それに対して、2016年3月の報告書は具体的な在宅ワークガイドラインの見直しを議論し、現行ガイドラインが注文者と在宅ワーカーの二者構成を基本とし、仲介機関は注文者に含まれると整理しているのを維持しつつ、委託型、純粋紹介型に分けて仲介機関についての規定を設けることや、契約条件の変更、成果物が不完全な場合の取扱い(補修、損害賠償請求)、知的財産権の取扱い、秘密保持義務と個人情報の取扱、報酬の支払期日・報酬額、納期、解除等について、具体的な見直し案を提示しました。今回の柔軟な働き方に関する検討会報告は、ほぼその方向でガイドライン案を提示しています。名称が「在宅ワーク」から「自営型テレワーク」となっているのは、家内労働法の延長線上から個人請負型就労形態全般を対象としていく姿勢の変化を表しています。以下、新ガイドラインの概要を見ていきましょう。

 新ガイドラインは「仲介事業者」を、①他者から業務の委託を受け、当該業務に関する仕事を自営型テレワーカーに注文する行為を業として行う者、②自営型テレワーカーと注文者との間で、自営型テレワークの業務のあっせんを業として行う者、③インターネットを介して注文者と受注者が直接仕事の受発注を行うことができるサービス(いわゆる「クラウドソーシング」)を業として運営している者と定義しています。そして、旧ガイドラインが契約条件の文書明示とその保存から始まっていたのに対し、その前段階として募集内容の明示と、その際に留意すべき事項を詳しく規定しています。クラウドワークでは、応募された複数の提案から採用案を選び報酬を支払ういわゆるコンペ式が見られることから、その旨の明示や、採用に至らなかった提案の知的財産権を提案者に無断で公開・使用しないこと、さらには採用された提案の応募者に対して納品後の成果物の大幅な修正を指示するなどは望ましくないことまでが記述されています。

 その他報酬額や契約条件の変更など各項目で記述が詳しくなっていますが、一点注目しておきたいのは「契約解除」という新たな項目です。労働者ではないので解雇権濫用法理が適用されないことを前提としつつ、「契約違反等がない場合に、注文者が任意で契約を解除する場合は、注文者は、契約解除により自営型テレワーカーに生じた損害の賠償が必要となること」とか「継続的な取引関係にある注文者は、自営型テレワーカーへの注文を打ち切ろうとするときは、速やかに、その旨及びその理由を予告すること」を求めています。

 さてしかし、改定されてもガイドラインは所詮通達に過ぎず、法的効力を有するものではありません。今後雇用類似の働き方が社会の中で大きな割合を占めていくことになれば、もう一つの検討会で議論されている「法的保護の必要性を中長期的課題として検討する」ことの重要性が高まっていきます。今回のガイドラインは一里塚に過ぎず、この問題は今後さらなる注目が必要な領域です。

|
|

« 永野・長谷川・富永編『詳説 障害者雇用促進法 <増補補正版>』 | トップページ | え、連合って、関東連合ですか?ヤバくないですか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/3288/72749577

この記事へのトラックバック一覧です: 在宅ワークガイドラインから自営型テレワークガイドラインへ@『労基旬報』2018年1月25日号 :

« 永野・長谷川・富永編『詳説 障害者雇用促進法 <増補補正版>』 | トップページ | え、連合って、関東連合ですか?ヤバくないですか? »