« 鶴光太郎『性格スキル』 | トップページ | 名古道功『ドイツ労働法の変容』 »

『ビジネス・レーバー・トレンド』1/2月号の座談会全文アップ

201801_02 昨年12月25日に本ブログで紹介した『ビジネス・レーバー・トレンド』1/2月号の座談会が、JILPTのホームページに全文アップされました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/12-8679.html

http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2018/01_02/002-017.pdf

Blt_2

司会 いわゆる「日本的雇用システム」は、長期雇用 慣行、年功的処遇制度、企業別労使関係などを特徴と しつつも、社会・経済・産業の大規模な構造変化や産 業技術の革新などに大きく影響され、変容を余儀なく されてきました。一方では、こうした環境変化に対応 した労働政策が立案・実施され、相当数の労働立法に 結実してきました。こうしたなか、JILPTでは、 2014年度から日本的雇用システムの現在の姿と今後 の方向を探るプロジェクトを、部門横断的な基礎的労 働研究として実施してきました。

 今回発刊された、第3期プロジェクト研究シリーズ 『日本的雇用システムのゆくえ』は、既存の統計デー タや当機構で実施した各種の調査・研究を総合的に分 析・検討することによって、日本的雇用システムの現 状を要素ごと、かつ全体的に把握し、その動向や政策 課題を探っています。

 今回の座談会では、この成果を踏まえて、各章での 事実発見などについて、学際的・多角的に検証しつつ、 JILPTで行う研究の意義、また今後の展望及び研究課 題を議論いただくものです。座談会の柱は大きく分け て、①日本的雇用システムの実態の変化、②日本的雇 用システムを研究する意義、③今後の課題――です。 特に、実態の変化については、アジア金融危機および 大手金融機関等の倒産・廃業が相次いだ1997、8年 を大きな節目として、その後、20年の変化について 論じていただければと思います。また、後半では、第 4期(2017年度からの5年間)でも、基礎研究プロジェ クトとして雇用システムの研究を継続することになっ ていますので、その意義などについて議論いただけれ ばと思います。

 では、はじめに同シリーズの実質的な取りまとめ役 をお願いした高橋さんから、議論の開始に当たって、 「日本的雇用システム」の定義や構成要素などについ て、ご説明ください。・・・

(参考)

Cover_no4 JILPT第3期プロジェクト研究シリーズNo.4『日本的雇用システムのゆくえ』

序章 問題設定と概要 高橋康二
第1章 総論─基礎的指標による日本的雇用システムの概観 高橋康二
第2章 若者のキャリア──学校から職業への移行における変化 堀有喜衣
第3章 雇用システムと高年齢者雇用 浅尾裕
第4章 日本的雇用システムと女性のキャリア──管理職昇進を中心に 池田心豪
第5章 雇用ポートフォリオと正社員の賃金管理 荻野登・高橋康二
第6章 日本企業における能力開発キャリア管理 藤本真
第7章 職場におけるキャリア形成支援の動向 下村英雄
補論 高度専門人材の人事管理──個別企業の競争力の視点を中心に 山崎憲・奥田瑛二
終章 結論と次の研究課題 高橋康二

|
|

« 鶴光太郎『性格スキル』 | トップページ | 名古道功『ドイツ労働法の変容』 »

コメント

JILPT座談会記事のサマリーとして、以下JIPT記事座談会の中でとくに興味深かった箇所を誠に勝手ながら引用します。なお( )カッコ内及び〜〜の箇所は小職の補足/メモです、あくまでもご参考まで…。

◉日本的雇用システムの実態の変化

その主な構成要素は、従来の「三種の神器」〜①長期雇用環境、②年功賃金昇進、③協調的労使関係(企業別労組)に、④教育訓練と⑤「正社員の無限定性」あるいは「内部的フレキシビリティ」という要素も加えるべき。

というのも昨今の「働き方改革」の論点はまさに⑤であり、とりわけ「女性」がシステムの中or 外or中間でどう位置づけられてきたかに関係するから。伝統的な問題関心からすれば「雇用、賃金、労使関係」という「ハードな部分」が雇用システムの中心となるが、いま関心が高いのは「働き方」と呼ばれる(ソフトな)もの。職場のコミュニケーションやハラスメントもこれに関連する。

〜〜戦後の日本企業メンバーシップ型雇用管理から見れば、上記⑤「正社員の無限定性」「内部的フレキシビリティ」の側面は「ソフト」な論点に見えるのかもしれませんが、世界標準ジョブ型組織の視点では、このテーマは極めてハードな論点であり、組織開発Organization Developmentの基盤たるRole Classification、Job Analysis そしてJob Descriptionという人材マネジメントの基幹パーツを構成します。なぜなら組織内で各人がなすべき仕事や勤務時間とはジョブ型ではまったく純粋なマネジメントの問題としてトップダウンで決定されるべきハードな枠組みであって、各人が現場で融通無碍に決められるソフトイシューでは決してありませんから。

◉議論の出発点としての1997-98年〜過去20年で何が変わったか。

男女均等法や派遣法が制定された「1985年」は色々な意味で象徴的。60歳定年努力義務とした86年高年齢雇安法、87年改正労基法(週40H、フレックス・裁量労働法など労働時間法制の大幅改正)など、80年代半ばは日本的雇用システムにとって象徴的・中核的な時期だろう。

その後のバブル経済の発生と崩壊を経た「1997-98年」を議論の出発点にしたい。労働力人口や正社員数がピークに達した時期であり、またかつて経験したことのないような不況やデフレ、労働力減少、非正規問題、年功賃金カーブなどの見直しもこの時期から始まった。

〜〜思い返すと、この時期(1997-98年)は日本経済全体にとっても極めて厳しい時期だったせいか、「日本型雇用システムの崩壊」が巷やメディアで話題にのぼらない日はなく、言説レベルでは何十回、何百回となく完膚なきまでに「崩壊」させられた当システムであったが(ついでに「人事部はもういらない」と断罪されたことも…)、実際のところは過去20年間で日本企業はその「メンバーシップ人員構成」をうまく変化させる(雇用バッファーとして非正規比率を増やす)ことで筋肉質に体質変換し、現代に至っていますね。

◉乖離する現場レベルの変化と言説レベルでの議論

言説レベルでは批判にさらされながらも、現場でレベルではそれを維持しようとする大きなベクトルが働き続けていたのではないか。ただ賃金制度については、成果主義という言説レベルに右往左往する一方で、年功賃金プロファイルは平坦化へシフトしたのは確かだろう。

むしろ80年代に打ち込まれた理念〜男女平等・派遣法・定年延長・労働時間短縮〜が、その時点では日本型雇用慣行を変えるものだという意識で行われたものではなかったにも関わらず、じわじわと効いてきて90年代後半以降の現場レベルの人事労務管理に影響を与えてきた。女性を長期的コースに乗せようと思えば、男性(全員)をいままでと同じ扱いにはできないし、定年延長・継続雇用しようと思えば中高年の年功賃金も従来同様に処遇できなくなる、というように。この変化を激しいことばでいえば「女性の登用、男性の没落」ということ。

◉会社の「職場集団」がかなり変質している?

個人主義的なライフスタイル志向の高まり。職場が競争力の源泉でなくて、トラブルの発生源になってきており、かつてのようなポジティブな役割を果たせなくなってきている変化がある。

他方、(最先端の)IT企業がクラブ活動(や社会貢献活動など)に熱心なように、人間的な繋がりを会社に求める「生活の場としての会社」という側面が見直されてきている。これは日本の古きよき伝統のリバイバルというか現代版なのか。

〜〜グローバル・ジョブ型企業でも同様の傾向が見られます。2000年ミレニアム頃から「エンゲージメント」(会社への忠誠心やつながりという心の側面)や「キャリア満足度」といったソフトな面が注目されてきています。Great Place to Workやworkplaceという面が社員のコミットメントを高めると考えられていますね。

◉「薄い長期雇用」と「濃い長期雇用」

労契法の無期転換に関する調査結果は意外にポジティブなもの。じっさい「濃い長期雇用」を絞りすぎたために、本来「薄い長期雇用」で対応すべきだった人までも非正規に流れ込んでしまったことに対する反省があるのではないか。

グローバル人材選抜に関するアンケートを見ると、選抜の年齢は30歳前後が多い。入社時点では誰が「濃い」江エリート人材であるかは決められなくても、入社10年ぐらいで早期選抜する会社は上場企業の2割はある。これが日本企業のひとつの落としどころだと思う。

そのときの選抜時に意欲ある人に主体的に手をあげさせるのはよいとして、手をあげない人たちのキャリアパスのイメージが持てないことが問題。独のマイスターのように経営層ではなくても現場で偉い人という意識もあるが、今後のIndustry 4.0でこれもどうなるかは不明。

今後は「薄い長期雇用をデフォルト」とする方向性が主流か。そのメリットは、ランニングコストが抑制できること。

これまでの「正社員=無限定性」というのは、みんなが「小さなエンプロイヤー(雇用主)候補」という前提。というのも、エンプロイヤー候補はどの国でも働き方は無限定だから。従来は「濃い人」だけではなく「濃いめの人」もこれに含めていたから無限定社員の範囲が広かったが、今後はその「濃さ」を誰がどれだけ引き受けるかという難しさがある。じっさい「限定正社員」をつくるとみんなそっちに手をあげてしまう恐れがあるという人事担当者の声も聞こえる。

〜〜ここでいう「(濃いも薄いも」長期雇用」のアサンプション(前提)として、「日本企業の基幹社員はみんな日本人。日本で生まれ、日本語が流暢。今後もずっと日本で働き、暮らしていく人」という暗黙の了解がありませんでしたか。これだけ多様化が進んだ現代、少なくとも世界的な大都市Tokyoで働いているワーカーについてはこのアサンプションはすでにあてはまりません。すると、一企業における雇用及び人材施策(賃金や昇進や人材育成)は勤続30-40年の超長期スパンを前提に発想すべきではなく、各人の勤続が5-10年の短期レンジでも十分にPayできる柔軟な組織づくりを企図していくべきでしょう。ただし、インフラや装置型製造業は、将来もこれとは別かもしれませんが…。

投稿: ある外資系人事マン | 2018年1月29日 (月) 18時43分

記事の全掲載、ありがとうございました。拝見し、問題意識が一致する部分は以下の点です。

日本的雇用システムで長期雇用、年功賃金、OJTなどが一体となって高いパフォーマンス

=>今の時代、なぜ、そうならないのか?

OJTの教育環境で長期雇用されているが、職に見合った専門能力を身につけないまま長期就業。更に一つの職での能力が浅いまんま、JOBローテーションし、次の職業にいくため、どの職業をやっても中途半端、能力の浅い人材ばかりに?最近の日本上場企業で、収益性生産性が上がらない現場とはそんな印象。

どこの国でも、日々の仕事をやりながら、職業能力は磨くものであり、OFFJTでやる専門分野の勉強とはそのパフォーマンスを裏付けるために仕込むもの。まず日々の業務をやって能力が伸びない状況を解決し、日本型で働く強みとその良さを取り戻す。あまたの日本人社員には効果的と存じますが、いかがでしょうか。

投稿: shirafuji | 2018年2月 4日 (日) 18時20分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/3288/72780894

この記事へのトラックバック一覧です: 『ビジネス・レーバー・トレンド』1/2月号の座談会全文アップ:

« 鶴光太郎『性格スキル』 | トップページ | 名古道功『ドイツ労働法の変容』 »