森下之博『中国賃金決定法の構造』
森下之博さんより大著『中国賃金決定法の構造 社会主義秩序と市場経済秩序の交錯』(早稲田大学出版部)をお送りいただきました。ありがとうございます。
http://www.waseda-up.co.jp/economics/post-754.html
いくつか特筆すべきことがありますが、まずは森下さん本人。著者略歴にはこうあります。
1985年生まれ。
2007年、内閣府入府。
2012年、中国人民大学労働人事学院労働関係学科修士課程修了、経済学修士。
2016年、早稲田大学法学研究科博士課程修了、博士(法学)。
現在、内閣官房に出向中(参事官補佐)。
内閣府の官僚であり、中国人民大学で経済学修士、早稲田大学で法学博士という縦横無尽の経歴です。
そしてテーマが中国の賃金決定法。この「法」は法律の法で、下記目次から窺えるように、今まで日本ではほとんど取り上げられてこなかった法政策的観点からも中国賃金法の本格的研究書になっています。
しかも、ややもすると中国の「社会主義市場経済」の「社会主義」を共産党支配のお題目視しがちな我々からすると、中国の現行法体系に刻み込まれた「社会主義的」部分を指摘する森下さんの記述ははっとさせられるものがあります。
はしがき
序章 問題の所在と前提事項の整理
第1節 問題の所在
第2節 本書において検証を目指す仮説
第3節 検討の視角と本書の射程
第4節 現代中国法の構造の一般的特徴
第5節 賃金決定関係法の基本的な用語に関する整理第1編 中国労働法の賃金に対する基礎的考察
第1章 中国における計画経済期の賃金決定法政策の史的展開
第1節 建国前後の動き(1948~49年)と第一次賃金改革(1950~53年)
第2節 第二次賃金改革(1956年)
第3節 大躍進政策期(1958~1960年)と調整期(1961~1965年)
第4節 文化大革命期(1966~1976年)
第5節 計画経済期の賃金決定法政策における「労働」と「賃金」の位置付け(本章の総括)
第2章 社会主義市場経済体制における中国の賃金に関する理論的考察
――中国労働法における賃金を捉える視点
序
第1節 現代中国法における社会主義的法秩序の存在
第2節 社会主義体制と資本主義体制における賃金の比較検討
第3節 現代中国における賃金についての検討
第4節 本章の総括(作業仮説の修正)第2編 中国労働法における賃金決定関係法の個別分析
第3章 中国労働法における賃金管理制度の構造
序
第1節 国家による賃金管理の基本原則(二つの抑制原則)
第2節 地域および企業の賃金総額に対する管理
第3節 労働者の賃金水準に対する管理(「賃金指導ライン」制度)
第4節 賃金団体交渉と「賃金指導ライン」の法的関係性等
第5節 賃金等に関する統計情報の提供を通じた管理
第6節 賃金管理制度と賃金決定(本章の総括)
第4章 中国労働法における最低賃金制度の構造
序
第1節 最低賃金制度の形成過程
第2節 最低賃金制度の構造
第3節 最低賃金の実態
第4節 本章の総括
第5章 中国労働法における賃金団体交渉制度と労働協約制度の構造
序
第1節 賃金団体交渉制度と労働協約制度の形成過程
第2節 賃金団体交渉制度と労働協約制度の構造
第3節 賃金団体交渉と集団的労働紛争の実態
第4節 本章の総括
第6章 第2編の総括
第1節 制度相互間の法的関係性の整理
第2節 賃金決定関係法における社会主義的秩序の発現
第3節 「第十三次計画」期間における賃金決定法政策の重点課題結章 本書の結語
序
第1節 中国労働法における賃金決定関係法の複雑性の所在
第2節 中国労働法における賃金決定関係法の構造の総括
第3節 中国労働法における賃金決定関係法の構造の図示化
第4節 残された検討課題
参考文献、参照法令一覧
主要参照条文等抜粋(邦語訳)
あとがき
索引
英文要旨
« 『Works』145号は「出直しの働き方改革」 | トップページ | いやそれがジョブ型・・・ »
コメント