『季刊労働法』冬号の読みどころはクラウドワーク特集
さて、先日記事のタイトルだけ紹介した『季刊労働法』冬号ですが、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-9214.html
第1特集の「解雇の金銭解決制度をめぐる議論状況」は、もちろん面白いのですが、それほど目新しい話が少ないのに対して、「集中連載」と題された「クラウドワークの進展と労働法の課題」の方は、労働法の基本構造を大きく変えていくかもしれない大きな話題が取り上げられていて、これは今号の最大の読みどころといえます。
「クラウドワークの進展と労働法の課題」の連載開始に際して 法政大学大学院客員教授 毛塚勝利
クラウドワークの労働法学上の検討課題 法政大学大学院客員教授 毛塚勝利
クラウドワークの歴史的位相 早稲田大学名誉教授 石田 眞
ドイツにおけるクラウドソーシングの進展と労働法の課題 中央大学大学院博士後期課程 後藤 究
フランスにおけるクラウドワークの現状と法的課題 茨城大学准教授 鈴木俊晴
この研究の中心人物である毛塚さんの総論的論考も大変興味深いですし、若手二人によるドイツとフランスの解説も、大変勉強になります。とりわけフランスのエル・コムリ法については、私もよくわかっていなかったことが説明されていて、大変有用です。
が、しかしここでは、石田さんの「歴史的位相」論文を一押ししておきます。クラウドワークがかつての問屋制家内工業の再来であるという議論を素材に、どこがそうであり、どこがそうでないかを明確に指摘していて、読みながら興奮します。経済学、社会学系の研究者も、ぜひこういうマクロ的視点からの新たな就業形態の分析に加わってもらいたいと思いますね。
あと、わたしの「労働法の立法学」は「地域雇用開発の半世紀」というややトリビア風のものですが、よく読むと、歴史のはざまに埋もれた秘話がさりげなくかかれていたりして、その筋には面白いかもしれません。
1 前史-労働者の地域移動
(1) 職業安定法の原則
(2) 駐留軍離職者対策
(3) 炭鉱離職者対策
(4) 職業安定法の広域職業紹介
(5) 雇用促進事業団の地域移動関係業務
(6) 雇用対策法
2 高度成長期の地域開発政策
(1) 全国総合開発計画
(2) 低開発地域工業開発促進法
(3) 新産業都市建設促進法
(4) 工業整備特別地域整備促進法
(5) 新全国総合開発計画
(6) 農村地域工業導入促進法
(7) 工業再配置促進法3 地域雇用開発政策の形成
(1) 雇用保険法の制定
(2) 地域雇用促進給付金等
(3) 第3次全国総合開発計画
(4) 特定不況地域離職者臨時措置法
(5) 地域雇用開発推進事業
(6) 特定不況業種・特定不況地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法
(7) 緊急雇用安定地域4 地域雇用開発等促進法
(1) 地域雇用開発等促進法の制定
(2) 地域雇用開発助成金
(3) その他の措置
5 バブル景気とその崩壊の時代
(1) 地域開発立法等の動向
(2) 予算措置による地域雇用政策
(3) 1991年改正
(4) 1997年改正
6 21世紀の地域雇用開発政策
(1) 地方分権と職業安定行政
(2) 2001年改正
(3) 2007年改正
(4) 公的雇用創出事業
(付)まち・ひと・しごと創生本部
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