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WLBにモヤモヤしている中高年男性にお勧め

Img_752f5d874047328e26f434ce08fbda5 拙著『働く女子の運命』に、またアマゾンのレビューがつきました。「kuma Su.」さんという方の「WLBにモヤモヤしている中高年男性にお勧め。日本労働社会の「メンバーシップ型」の部分が変わらなければ、女性に無理を強いることになる。」というやや長いタイトルのレビューです。

https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R1YQG1GM8Z7KTU/ref=cm_cr_getr_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4166610627

タイトルだけでなく、中身もかなり長く、大変深く突っ込んだレビューをしていただいております。

 職場でワークライフバランス(WLB)推進計画を策定しても、なかなかうまくいかないので、本書を読んだ。読者の職場では、「超勤」は徐々に減少しつつあるが、「転勤」は依然としてキャリアプランの前提と言わざるを得ない。こういった個々の要素は分かっていても、本書を読むことで、日本の女性活躍を阻む根源について、歴史的経緯も含めて全体像が理解できた気がした(★5)。WLBにモヤモヤしている中高年男性にこそお勧めの本である。

 著者は、女性活躍を阻む根源を、「日本の労働社会が、欧米のようなジョブ型でなく、メンバーシップ型であること」と指摘する。「個別の職務ではなく、組織に身を捧げ、命令があればいかなる職務にでも従事し、転勤も受け入れる。その代償として、終身雇用、年功賃金が保証される」(いわゆる日本型雇用システム)。バブル崩壊後、リストラや成果給導入など崩れつつあるように見えるが、中高年層の意識や諸制度・慣行の中には、まだしぶとく生き残っているのだ。ところが、日本型雇用システムの起源は意外に新しく、戦時統制経済に起源がある。国家総動員体制では「お国のため、臣民に奉仕させた」。そこでは、会社間の自由な労働移動は禁止して解雇も制限(=終身雇用)、また、給与は労働への対価というより、労働者が家計を支えられるだけ額(生活給)という性格を有するようになった(=年功賃金)。本書は、女性労働が明治以降、特に戦後どのように変化したか、先輩が職場で経験した困難や女性官僚が制度改正に格闘してきた歴史も紹介している。

 この「生活給」という考え方こそが根源(キモ)である。この考え方のために、通常世帯主となる男性と、そうではない女性の処遇を異なるものとし、しかも女性には早く退職してもらわないと困る、というようなシステムが出来上がったというのである。そして、これが高度経済成長を支えたと脳裏に染みついている財界人がいたり、労働組合も生活給を支持したりで、簡単には変わらない。

 さて、総合職なら男女どちらでも同じコースを歩めること(著者は「コースの平等」と呼ぶ)は、「従前よりはまし」かもしれないが、家事・育児というハンデを負いながら(イクメンだって均等負担は少ないのでは)、「男と同様に働け」では、女性総合職はスーパーウーマンであることを要求される。
 さらに、欧米に比べて労働時間規制が緩い状況下では、表面的に各種休暇制度を整えると、制度を活用する人のしわ寄せが、活用を手控えて頑張ってしまう人に及んで、両者の間に溝ができてしまう。したがって、書名の「運命」には不穏な雰囲気が漂い、本書の最後は、「現代の女子の運命は、なお濃い霧の中にあるようです」になっている。

 なお、本書の刊行が推進薬となったのか、やっと日本でも欧米並みの「(いわゆる36協定でも超えることのできない)罰則付きの時間外労働の上限規制」が導入される方向となっており(平成30年通常国会に法案提出見込み)、上限の数値案が大き過ぎる等の批判はあるものの、長い目で見て期待したいところである。

正直、「WLBにモヤモヤしている中高年男性にこそお勧めの本である」という視点は、今までのいろんなレビューにもあまりなく、意外な感じで大変うれしく感じました。

26184472_1 そう、これはその中高年男性にこそ読んでほしいと思って書いたものの、残念ながら若者本や女子本のようには売れ行きが良くない『日本の雇用と中高年』と表裏合わせ鏡になるような話なんですね。

あと、読書メーターでも「真」さんがレビュー。

https://bookmeter.com/reviews/68692542

働く場所・労働時間・仕事内容が仕事を続けるにあたって重要なはずなのに限定されずに企業のスペシャリストとして働くことを要求される社会。所謂総合職のような基幹職につきたいのであれば専業主婦やパートタイムで働く妻に家事を丸投げしていた男性の化石モデルのように働くことを男女に要求するのみで果たして何の解決になるのだろうか。だらだらと時間を費やすことを拒んだだけで昇進条件を満たすことができなくなる企業の多い国の経済成長に希望が見えない。

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コメント

以前、男性が母親が過労で入院したら、上司がそれでも働けないかを、「お願い」にきた話があったが、私は病室の窓の下に、迎えの車が来て入院先から「外出」して仕事をした。その時は、役職や給与で大きく評価されることがない「女子職員」(と呼ばれていたので敢えて言う)の自分にとっては、職場に居場所があり必要とされているのが、自身にとっての「職場からの評価」と受け止めて、嫌々ながらも、内心嬉しかったことを覚えている。いつも男性社会、雇用システムが問題だと、周囲の若い女性同僚に偉そうなことを言っていたのに…である。
それ程昔の話ではない、2000年代前半のアラフォーの話である。雇用の流動化に間違いなく進むと言われて、女性の職員の働き方にハッパをかけられてから、いったいどれくらいの時間が経つのか?マミートラックから抜けられるような制度・政策ができたとしても、個人的な心理として、恋人や上司から何でも頑張るけれど、女性的で優しくカワイイ存在を期待され、それが内心では嬉しく、一般女子はそんなものだと思っている女性も多いはずだ。男性的に働き、意志の強さが目立つ女性は、組織ではやはり活躍はできないし、女性はそんな働き方をカッコよくは思えない。「仕事をしたい」VS「でも素敵な女性でいたい」と両立できない青い鳥を求めてしまう。結局のところ、理想のスーパーウーマンを実は、ロールモデルとして描いているのが、本心ではないのだろうか。最近の女子高生は、専業主婦に憧れをいだくという。それは、ぎりぎりで働きながら子育てしてきた母親に尊敬と感謝はあるが、自身の憧れは専業主婦だというのだ。この心理面に変化が現れることが日本にはあるのだろうか。

投稿: MIDORI | 2018年1月 7日 (日) 18時50分

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