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2017年12月22日 (金)

JILPT『日本的雇用システムのゆくえ』

Cover_no4JILPTの第3期プロジェクト研究シリーズのNo.4として『日本的雇用システムのゆくえ』が本日刊行されました。

http://www.jil.go.jp/institute/project/series/2017/04/index.html

近年の社会・経済・産業の構造変化や技術革新の中で、長期雇用慣行、年功的処遇、正規・非正規労働者の分離などにより特徴づけられ、わが国の雇用社会の中心にあると考えられてきた「日本的雇用システム」がどのように変容しているのかを、官庁統計やJILPTの調査結果の総合的な分析により把握し、今後の課題のありようを考察しています。

ということですが、日本労働法学会の方々には、今年5月に龍谷大学で開かれた133回大会で菅野和夫理事長が特別講演で語ったあの話か、と分かるかも知れません。

高橋康二さんを初めとするJILPTの中堅研究者による中身の濃い本になっています。ちなみに私は執筆していません。

序章 問題設定と概要 高橋康二
第1章 総論─基礎的指標による日本的雇用システムの概観 高橋康二
第2章 若者のキャリア──学校から職業への移行における変化 堀有喜衣
第3章 雇用システムと高年齢者雇用 浅尾裕
第4章 日本的雇用システムと女性のキャリア──管理職昇進を中心に 池田心豪
第5章 雇用ポートフォリオと正社員の賃金管理 荻野登・高橋康二
第6章 日本企業における能力開発キャリア管理 藤本真
第7章 職場におけるキャリア形成支援の動向 下村英雄
補論 高度専門人材の人事管理──個別企業の競争力の視点を中心に 山崎憲・奥田瑛二
終章 結論と次の研究課題 高橋康二

Takahashi_k2017全体を取りまとめた高橋康二さんが、刊行と同時にJILPTのホームページに「リサーチ・アイ」というコラムを書いていて、これが手際のよいまとめになっていますので、是非一通り読んで見てください。

http://www.jil.go.jp/researcheye/bn/025_171222.html

この冬、JILPT編『日本的雇用システムのゆくえ』(第3期プロジェクト研究シリーズNo.4)が刊行された。以下、執筆者を代表して、本書の取り組みの背景とエッセンスを紹介するとともに、本書を振り返っての反省と展望を記したい。

名称や定義の詳細は別として、一般に「日本的雇用システム」と呼ばれる、日本企業における長期志向の雇用・労働の仕組みが、かつて研究者や実務家、政策担当者の関心を集めていたことは間違いない。ごく手短に振り返るならば、その実態と概念は、ジェームス・アベグレンの著作[注1]、OECDのレポート[注2]などにより発見され人口に膾炙し、ロナルド・ドーア[注3]、青木昌彦[注4]などの研究者により解明され理論化されてきた。時には、日本社会論や日本人論とも結び付けられてきた。少なくとも今から20年ぐらい前までは、日本的雇用システムは、肯定的であるにせよ否定的であるにせよ、日本の労働研究者や日本に関心を持つ海外の研究者にとっての、最も重要な研究テーマの1つであったと言ってよい。

しかし、いつの頃からか、「若年者」、「非正規雇用」、「女性就業」、「労働時間」など、特定の対象者や個別のトピックにフォーカスする研究が主流になってきた。こうした専門化・細分化は、いわゆる労働者の多様化、働き方の多様化といった現象に対応したものであり、労働研究が成熟したことの表れでもあった。

そういった中で、敢えて本書では、日本的雇用システムのゆくえ(持続していくもの、変化していくもの、新たな課題)を見通すという作業に取り組んだ。大きな理由は3つある。

第1に、大局を見据えた政策形成を可能にするからである。もちろん、日本的雇用システムを扱わない研究であっても、政策対象に関するエビデンスの提供を通じて政策形成に寄与しうる。しかし、何よりも日本的雇用システムは、日本の雇用社会の中心にあることから、そのゆくえを見通すことは、日本の雇用社会の基本的な変化の方向性、日本の雇用社会が今後直面するであろう大きな課題を認識することにつながる。

第2に、重要な労働法制と不可分の関係にあるからである。現在の日本の労働法制の重要な部分は、日本的雇用システム、なかでも長期雇用慣行を前提に形成され、その労働法制が日本的雇用システムの普及を促してきたという側面がある。個別の労働政策についても、日本的雇用システムの長所を認識し、それを活かそうと企図するものが少なくない。労働法制や労働政策の一貫性・整合性を保ちつつ必要な修正をしていく(不要な修正を防ぐ)ためにも、日本的雇用システムがどうなっているのかを、絶えず確認する必要がある。

第3に、人事管理や労使関係の制度・慣行を総体的に把握できるからである。雇用システムの構成要素は相互に補完し合っており、雇用システムのある部分の変化は他の部分の変化を惹起する。逆に、ある部分が不変であれば、他の部分を変えようとしてもなかなか変わらない。労働研究が専門化・細分化するとともに、個別の政策目標の達成が重視される中で、研究者においても政策担当者においても、そうした視点が失われる傾向にあり、総体的把握の必要性はむしろ高まっているとも言える。

このような認識のもと、本書では、日本的雇用システムを「主に高度経済成長期以降の大手・製造企業(大手企業and/or製造企業)に典型的に見られた、成員に対する長期的な生活保障・能力開発を図る雇用・労働の仕組み」と定義し[注5]、そのゆくえを見通すことを試みた。具体的には、基礎作業として、官庁統計の集計・分析により、この約20年間における、(a)長期雇用慣行、(b)年功的賃金・昇進、(c)協調的労使関係、(d)OJTを中心とした幅広い教育訓練、(e)雇用のバッファーとしての一定数の非成員労働者の存在、(f)労使の規範意識と国民からの支持、の変化を跡づけた。その上で、若者、女性、高年齢者といった対象者別の研究から導かれる知見、雇用ポートフォリオ、賃金制度、能力開発、キャリア管理、企業内キャリアコンサルティングといった人事管理の分野別の研究から導かれる知見を総合して、日本的雇用システムがどう持続し、どう変化したのか、そしてどのような新たな課題に直面しているのかを論じた。・・・

と、ここまでが長い前振りで、ここから本論に入るのですが、これはもうリンク先でじっくり読んで下さい。

それから、ややフライングですが、来週月曜日に出る『ビジネス・レーバー・トレンド』の1月号で、その高橋さんと、執筆陣の池田心豪さん、荻野登さん、それに私も加わって座談会「日本的雇用システムの変容と今後の課題」というのをやっています。

これがなかなか面白い座談会になっているので、こちらも是非。

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コメント

リンク先のダイジェストを拝見…。いわゆる日本的雇用の正確な実態が把握され、近い将来を展望しう良質な報告書ですね。特に小生の目を引いたのは図4産業別の「非正規社員比率」です。すなわち過去二十年間増加傾向が続き、現時点の非正規は平均で約4割なのですが、業界別で見ると「卸小売業」は5割でほぼ頭打ちに見える一方、「サービス業」では5割を超えても増加の勢いが止まらないこと、また製造業と金融業は未だ2割五分なるも増加傾向に衰えが見えないことです。このまま同じ傾向が推移していけば(サービス業のさらなる高レートと製造業/金融業の高まりのため)おそらく2030-35年頃には非正規比率が5割に到達しましょう。ただ、その頃までにはいわゆる「働き方改革」と(同一労働同一賃金を含めた)雇用法制改革がさらに進んでいることが予想されますので、今で言うところの「正規/非正規」という区分法はおそらく影を潜め、むしろ「フルタイム/パートタイム」、あるいは「雇用/非雇用(労働者/就業者)」の区分が前景に出てくるのかもしれませんね。論考の今後の展開(非製造業など積み残し点への研究)も大いに期待しています。

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