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2017年12月 5日 (火)

管理職が職種でない国

Ykdnxrqa_400x400 りっぴぃ@長女3歳さんのつぶやきで、

https://twitter.com/rippy08/status/937950275607830528

ジョブ型社会なら管理職は管理職というジョブである,というのを読んだこともありますが,本当かなあ・・・(うろ覚えですが,濱口桂一郎氏のご本?)。少なくともウチの国の管理職は,会社を追い出されたら終わり,なイメージがあるような。んで,若い人には専門的な知識・経験の方が人気,と。。

26184472_1 はい、私の『日本の雇用と中高年』ですね。うろ覚えでもご記憶いただいていたことがうれしいです。

・・・「管理的職業従事者」とは、「事業経営方針の決定・経営方針に基づく執行計画の樹立・作業の監督・統制など、経営体の全般又は課(課相当を含む)以上の内部組織の経営・管理に従事するもの」と定義されています。これは、専門的・技術的職業従事者や事務従事者、販売従事者等々と、まったく同じ水準で存在する職種概念ですね。
 そして、職業安定法第5条の7に定める適格紹介の原則とは、この職種単位での労働能力に着目した求人と求職者との結合の適格さを求めるものです。私は旋盤操作という「仕事」のできる人です、私は経理事務という「仕事」のできる人です、私は法務という「仕事」のできる人です、というレッテルをぶら下げているのとまったく同じ水準で、私は管理という「仕事」のできる人ですというレッテルをぶら下げているのが管理的職業従事者、つまり管理職のはずなのです。

・社内身分としての管理職

 ところが、日本でそんなことをいえば笑い話になります。おそらく読者もどこかで耳にしたことがあると思いますが、大企業の部長経験者が面接に来て、「あなたは何ができますか?」と聞かれて「部長ならできます」と答えた・・・という小咄です。
 これのどこが笑い話なのか?と欧米人なら聞くでしょう。ビジネススクールを出て管理職として働いてきた人が「部長ならできます」というのは、メディカルスクールを出て医師として働いてきた人が「医者ならできます」というのと、ロースクールを出て弁護士として働いてきた人が「法務ならできます」というのと、本質的に変わりはないはずです。しかし、日本では変わりがあるのです。なぜなら、日本の労働社会では、管理職というのはいかなる意味でも職種ではないからです。
 では日本型雇用システムにおいて管理職とは何なのか?その答えは読者の方が重々ご承知ですよね。少なくとも、上の笑い話をみておかしさがわかった人は知っています。それは、長年平社員として一生懸命働いてきた人にご褒美として与えられる処遇であり、一種の社内身分なのです。だから、その会社を離れた後で、面接で「部長ならできます」というのが笑い話になるわけです。・・・

・・・ こうした管理職に対する感覚をよく示しているのが、ベストセラーコミックの『課長島耕作』シリーズです。企業主義の時代まっただ中の1984年に初芝電器の係長として始まり、長く課長を勤めた後、90年代には部長に昇進、21世紀には取締役、常務、専務、社長を経て、会長になっていくというサラリーマンのサクセスストーリーです。回想編として近年「ヤング島耕作」「ヤング島耕作主任編」「係長島耕作」もあります。法律的には単なる労働者から管理職を経て労働者ではない経営陣に至るまでが一本のキャリアパスとして描かれているところが、いかにも日本型雇用システムを体現しています。日本の「正社員」は管理職でなくても企業のメンバーとしての性格を分け持っており(「社員」!)、平社員から中間管理職、上級管理職に至るまで、連続的に管理職的性格が高まっていくのです。
 こういう感覚を前提とすれば、ヤング島耕作=平社員、ミドル島耕作=管理職、シニア島耕作=経営陣という年齢と社内身分の対応はあまりにも当たり前なのでしょう。3つの「ミドル」が重ね焼きできる感覚の源泉がここにあります。そして、「部長ならできます」が笑い話として消費される理由も。管理職がいかなる意味でも職種ではあり得ない世界です。

 

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コメント

今となっては懐かしい響きのある「部長(課長)なら出来ます」という日本のサラリーマン特有の小噺ですが、多少とも真実味を増してきているのか、最近の人材紹介会社のデータによれば人材難が進む中で日本の中高年管理職人材の転職マーケットが活発化しています。また転職に成功した方には、自分のスキルを棚卸し強みを再定義した結果、異業種他職種の管理職ポジションへのキャリアチェンジに成功した事例も先日テレビで紹介ありました(NHKクローズアップ現代)。

念のためですが…ジョブ型企業にはメンバーシップ型で行われる所のいわゆる「人事異動」は存在しません。なぜなら、個々のポジション(ジョブ)にはそれぞれ異なる職務要件や経験やスキルや適性が求められるため、一人の個人はいくら優秀であったとしても別の部署へ職種横断的に定期的に異動するようなアサインメントは不可能とみなされ、また当の社員もそのような自らのアイデンティティを無化するようなキャリアチェンジを望まない故です。

すなわち(分かりきった話かもしれませんが)ジョブ型における「部長(課長)出来ます」というネタは…あくまで当人が出来る(と言うの)は「営業部長」や「製造部長」や「経理部長」といった職種限定の管理職ポジションですね。

とはいえ、実のところは…同職種経歴者のマネジャーを他社から採用しても、新しい組織の仕事の進め方や人間関係や組織文化にスムーズに適応できる柔軟性の高い人材は限られており、(中高年ゆえ)相応に「出来上がった人」が多く、外部マネジャー人材を新しい環境にフィットさせていくのは一筋縄ではいきませんね。

投稿: ある外資系人事マン | 2017年12月 6日 (水) 06時16分

今まで「横の軸を『職種』、縦の軸を『職位』で切っていた」やり方から、「1つめの軸を『スキル』、2つめの軸を『スキルの深度』でポイントを振ってそれを加算する」方法に変わっていくんですかねぇ。

投稿: Dursan | 2017年12月 7日 (木) 08時08分

上記コメント、確かにそうかもしれませんね。
スキルのポイントという発想は、まさにジョブ型の職務評価で用いる代表的な手法(ポイントファクターメソッド)に近い概念でしょう。各人の職務遂行に求められる様々なスキルをポイント化して、合計した点数のある括りをグレード等級として位置づける方法です。日本企業でも企業統合後の人事制度の見直しや買収した海外子会社社員の再格付けなどの課題に直面している場合、こうしたジョブ型で用いる職務評価アプローチは有効かと思われます。

投稿: ある外資系人事マン | 2017年12月 7日 (木) 13時23分

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