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2017年12月23日 (土)

hamachanブログ2017年ランキング発表

年末が近づいてきましたので、毎年恒例のhamachanブログ今年のエントリPVランキングを発表します。

一昨年、昨年と、「勤勉にサービスしすぎるから生産性が低いのだよ!日本人は」が1位でしたが、さすがに私も毎年おんなじことを繰り返すのは飽きたので、今年は選外に落ちてます。

51286t0bjvl__sx300_bo1204203200__2 代わってぶっちぎりの1位は、これはやはりこの1年を象徴するエントリかもしれません。お送りいただいた松崎一葉さんの『クラッシャー上司-平気で部下を追い詰める人たち』(PHP新書)を紹介した1月9日のエントリです。

1位:俺はね、五人潰して役員になったんだよ 44,194件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-deef.html

このタイトルは、本書の冒頭に出てくるこの一節からとられています。おりしも電通の過労自殺事件が大きな話題になっていたころ、当の「とある大手の広告代理店」の常務氏のセリフが、あまりにもその会社の精神構造を浮き彫りにしていたのです。

その会社の経営幹部が言うには、働き過ぎで心を病む社員の問題に悩んでいるとのこと。そこで抜本的解決策をともに考えてもらいたいと、産業精神医学を専門とする私たちが呼ばれたのである。

ところが、対策チームを組んで同社に赴くと、ちっとも歓迎されている感じがしない。声をかけてくれた経営幹部以外の、お偉いさん方の顔つきが険しいのだ。話がまったく生産的な方向に向かわず、それどころか常務からこんなことを言われてしまった。

「メンタルヘルスなんてやめてくれよ」

「俺はね、五人潰して役員になったんだよ」

そして、私たちはこう告げられた。

「先生方にメンタルヘルスがどうの、ワークライフバランスがどうのなんてやられると、うちの競争力が落ちるんだ。会社のためにならない。帰ってくれ」

社員のメンタルを潰して役員に成り上がった常務が、こう嘯くのが日本を代表する広告代理店だったわけですね。

Hyoshi32 続く第2位は、ニューズウィーク日本版の舞田敏彦さんの文章に対する回答として、雑誌『POSSE』に寄稿した文章の一節をそのまま載っけたエントリですが、ドンピシャだったようです。

2位:「日本はなぜここまで教育にカネを使わないのか」への答え 13,260件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/09/post-5206.html

親の年功賃金が徐々に縮小していく中で、等しく私的負担といってもその負担主体は次第に学生本人にシフトしていかざるを得ません。こうして、かつては補完的収入であった奨学金やアルバイト収入が、それなくしては大学生活を送ることができないほど枢要の収入源となっていきます。学生本人の現在の労働報酬と将来の労働収入(を担保にした借入)によって高等教育費を賄うべきという考え方は、それ自体は市場原理主義という一つの思想から正当化され得ます。しかし、それはそういう形で正当化されて成立した仕組みではありません。日本型雇用に基づく年功賃金を所与の前提とする親負担主義に立脚して作られた仕組みです。それがいつの間にか、ネオリベラリズム的な本人負担主義にすり替えられていたのです。

24070 そして第3位は、これもお送りいただいた本の紹介ですが、なぜ賃金が上がらないのかという問題に対するアカデミックな方面からの回答です。

3位:玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』 12,593件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/post-f575.html

説明は様々な形でされていますが、一番衝撃的だったのはむしろこの事実認識であったかもしれません。

事実認識として結構衝撃的なのは、第4章(黒田)が示す、就職氷河期世代が見事に低賃金のまま今に至ってきているというデータでしょう。

2010年から2015年にきま給の変化を学歴別年齢階層別に見ると、高卒と高専短大卒で35-39歳層、大学大学院卒で35-39歳層ととりわけ40-45歳層でぐっと落ち込んでいるのです。これはつまり上のコーホートよりも低賃金になったということで、就職氷河期世代が被った「傷痕」効果は極めて大きなものであったことが分かります。

187940 第4位は本ブログで時々やる蘊蓄ものですが、年次有給休暇についてまっとうだと思っている人々の認識自体がもうすでに極めて特殊日本的になってしまっているということを摘出したエントリです。

第4位:年次有給休暇のそもそも 8,914件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-8b66.html

まいなびウーマンの炎上記事をネタにしつつ、

本来の年次有給休暇とは、一定期間まとめて休むもの、あるいはより正確に言えば休ませるべきものなので、1954年省令改正前は使用者の側がまず労働者にいつ年休を取りたいかを聞く義務を課していました。現在は例外扱いとなっている計画年休制度の方が、本来の年休制度なのです。「生活物資獲得」の必要性が消え去ってしまったあともなおそのまま維持されてきた1日単位の年休が既に世界的には常識はずれであり、ましてや2008年改正で導入された時間単位の年休なんてへそでお茶が沸くような制度ではあるのですが、ここまでガラパゴス化してしまった日本の年休制度、あるいはむしろ年休思想がいかに強固なものであるかということが、図らずも今回の炎上騒ぎで露呈したわけですね。どちらの側も。・・・

70年前に「制度本来の趣旨には沿はない」けれども「違法と解することは困難」としぶしぶ認めていたものが、許される唯一の取得理由になってしまっているとは、あの世の寺本廣作氏も予想はつかなかったことでしょう。

第5位は、朝日新聞に載ったある種の反近代的リベサヨに典型的な議論を批判、というより呆れ気味にからかったエントリ。

第5位:そんなに「近代」が嫌いなら・・・ 6,752件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-d175.html

ある種のリベラルな左派の議論に定期的に出現するこの手の思想ほど、始末に負えないものはない、というのが私の感想。・・・

菅野さんは「ポエム」で片付けていますが、も少しきつく言えば「腹ふくれ満ち足りたブルジョワの息子の手すさびみたいな議論」であり、マリー・アントワネットもびっくりという奴です。

もっとも、一言だけ付け加えさせていただくと、日本の「左派」が世界の常識に反してやたらに成長を敵視するには、それなりの日本独特の文脈から来る理由があるのだという説明も本ブログで併せてしていますので、興味があればついでにお読み頂ければ幸いです。

次の第6位は、低賃金がらみということでは上記玄田編著と共通しますが、それを「低賃金カルテル」という一見奇妙な概念で論じているイギリスの新聞記事を紹介したものです。

第6位:低賃金カルテル異聞 5,473件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-62b9.html

昨年末からネット上で「低賃金カルテル」なる言葉が流行っていたようですが、あまり口を挟む必要もなさそうな議論が多いようなので静観しておりましたが、そういえばそういう概念って欧米でもあるのだろうかと思って検索してみたら、一昨年の英紙「ザ・ガーディアン」の記事にこういうのがありました。・・・

第7位は政治の世界の言葉の乱れ具合を皮肉ったエントリですが、そもそも自分の言葉遣いがおかしいと思っていない人には意味不明だったようです。

第7位:自民党は今でもリベラルと名乗っている唯一の政党である件について 5,071件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/09/post-0389.html

なんだか、言葉のねじれが極限まで行き着いて、本来左派=ソーシャル派に対する右派を意味するはずの「リベラル」が、もっぱら左派を意味する言葉になって、新党から排除するのしないのという話になっているようで、そのあまりの言葉の乱れように頭がくらくらします。・・・

いやはなしはさらにもう一段深くねじれていて、その「リベラル」を名乗る右派政党、経団連が組織的に支持し、連合が組織的に支持していない政党の現内閣が、少なくも過去25年間の政権の中で最も、即ち細川政権よりも村山政権よりも、橋本政権よりも、小泉政権よりも、その後の自公政権よりも、そして連合が組織的に支持していた民主党政権よりも、ずっとソーシャルな、そして労働組合側の主張に異様なまでに近づくプロレーバーな政策を遂行してきちゃっている、という超絶的な皮肉の限りを尽くすような事態であるわけですが。

とにかく、現代日本で進行中の事態を、そのいうところの「リベラル」をそのまま「liberal」と訳して、世界に発信したら、みんな頭が混乱の極みになりそうな・・・。

リベラルを名乗るライトウィング政権がソーシャルな政策を遂行する一方で、コミュニストと連携するレフトウィングがリベラルだからけしからんと排除されようとしている・・・・・って、もう理解不能の極みです。

とにかく、「リベサヨ」という言葉はそもそも私が作ったものであるといいながら、その本来の皮肉な意味、つまりリベラルはサヨクでないはずなのになぜかリベラルなサヨクという矛盾に満ちたわけのわからない連中という意味では全くなく、リベラルすなわちサヨクという間違った常識にどっぷりつかったまま、おなじ意味の言葉を重ねた罵倒用語としてのみ理解して用いているネトウヨな人々が圧倒的多数であるという悲しいまでの皮肉な状況が今日まで延々と続いているわけですよ。あーあ。

8位は、7月の連合会長による安倍首相への要請行動について、マスコミやとりわけネット上の議論があまりにも違和感を禁じえなかったので綴ったものです。

8位:10年経っても残業代ゼロけしからん 4,441件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/post-4f8c.html

批判している人々は、はっきり言ってその言動が誰かに影響を及ぼす責任ある立場にないので好き勝手なことを言えるのかも知れませんが、労働組合のナショナルセンターとして、駄目なものは駄目と言って後のことは知らんぞよといって済ませられるような立場ではない以上、ほぼ間違いなく時間外労働の上限規制と一体の労働基準法改正案として出されてくる高度プロフェッショナル制度や裁量労働制を、それは悪いものだから全部まとめて潰してしまえなどと莫迦なことを言えないのはあまりにも当然でしょう。

脳内バーチャル空間で百万回「はい論破」と繰り返したところで、リアル空間では何の意味もない、というリアルな現実をわきまえて物事を考えるのかそうでないかの違いといえばそれまでですが、どういう政治的配置状況の下で、ほんの2年前までは考えられなかったことが実現しようとしているのかということを少しでも我に返って考えられる人であれば、ここまで無責任な言葉を紡ぎ続けられないのではないかと、正直呆れるばかりです。

現時点で、制度導入を受け入れる代わりにその修正を要求するというのは、考えられるリアルな選択肢の中ではかなり筋の良いものであったことは確かでしょう。現実にあり得ない選択肢は百万回繰り返しても意味がないので。

そもそも、この期に及んで未だに10年前とまったく同じように「残業代ゼロ法案」という手垢の付いた非難語を使っていることに、当時のホワイトカラーエグゼンプション騒動に対してこう述べた私としては、結局何も進歩しとらんわいという感想が湧いてくるのを禁じ得ませんね。

16122 第9位は、再びお送りいただいた本の紹介エントリです。

第9位:前田正子『大卒無業女性の憂鬱』 4,357件

eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/03/post-1111.html

タイトルになっている大卒無業の女性たちへのインタビューが第3章に載っていて、これがなんというか、前田さんからすると信じられないくらい職業意識が欠如した人たちなんですね。これはやはり、「女性活躍後進国ニッポン」というよりも、関西のそれも高級住宅地の特性が露骨に出ているというべきなのでしょう。

そして第10位には文学部を血祭りにあげているネット上の記事が一見まっとうそうに見えて実は全然そうじゃないことを論じています。世の中にはうかつなレリバンス派というのがいて、文学部をdisっていればいいと思い込んでいるようですけど、本当の問題はそんなところにはないということです。

10位:「何となく文学部」よりもっとヤバいのは・・・ 3,944件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/09/post-6ce7.html

副題に「もう「つぶしの効く」学部など存在しない。「ジョブ型」への転換を」とあるので、ジョブ型教育への転換を訴えているのは確かだと思うのですが、正直言って、文学部って、もともと「つぶしの効く学部」だとは思われていなかったように思います。

メンバーシップ型雇用慣行にベストフィットして繁殖してきたのは、それ以外の一見職業レリバンスがありそうで、実は単なる一般的サラリーマン養成以外ではなかった文系学部、とりわけ経済学部だったんじゃないの?と思いますが。

その意味では、この記事は、文学部という叩きやすい犠牲の羊を血祭りに上げて見せているだけで、問題の本質からむしろ目を逸らせてしまっているのではないかと。

いうまでもなく、法学部だって法曹や法務担当者になる一部の人にとっては職業レリバンスがあるし、経済学部だって、内閣府で経済分析をする人や一部シンクタンク等で活躍するエコノミストになる人にとっては意味のある職業教育機関でしょう。しかし、当該学部を卒業する学生の大部分、経済学部の場合には殆ど全てにおいては、そうではないから、そしてそうではないにもかかわらずそれが一般的サラリーマン養成ギプスとして通用してきているからあれこれ論じられるわけです。

それに対して、文学部はそれなりに立派です。まず、文学部卒業生にとってもっとも良好な雇用機会は当該専門分野におけるアカデミックな研究職であって、これは法学部や経済学部と大きく異なるところです。これは裏返していえば、メンバーシップ型の日本の労働社会において、個々の学んだ内容はともかく、文学部に行こうなどという性向自体が、必ずしも適合的ではないと見なされてきたことがあるのでしょう。

実を言うと、にもかかわらず高度成長期に文学部がこれほど異常に肥大化したのは、嫁入り道具としての文学部という特殊事情があったからですが、これはこれで(皮肉ですが)一種の永久就職への職業レリバンスだったと言えないことはありません。それを抜きにしていうと、文学部卒というのは少なくとも法学部や経済学部に比べれば一種のスティグマを受けるものであったことは確かなので、それをつかまえて「「何となく文学部」はヤバすぎる」というのは、いささか見当外れの感が否めないわけです。

本当にヤバいのは他の文系学部、とりわけ法学部のように法律専門家になるか細い道があるところと比べても、経済分析を職業とする人になる可能性は絶無に近い経済学部ではないかと思うのですがね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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