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非正規労働の3段階@WEB労政時報

WEB労政時報に「非正規労働の3段階」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=719

近年、経済のデジタル化に伴い、カジュアルワーク、モバイルワーク、クラウドワークなど、新たな非正規労働形態が雇用労働の内側と外側で急速に増加しつつあります。今年3月の「働き方改革実行計画」は、パート、有期、派遣という3種類の現代的非正規形態の均等・均衡処遇問題に一定の解決をつけようとするものですが、その足元でその枠を超える労働形態が拡大しているのです。これは、非正規政策の先輩であるEUも同じで、ここ数年は新たな労働形態への対応が大きな政策課題になってきています。

 しかし改めて振り返ってみると、そうしたデジタル時代の新たな労働形態は、欧米や日本で現代的な労働市場が確立する以前に広がっていた伝統的な非正規労働―日雇や出稼ぎ、自営業―の形を変えた再現という面もあります。今日、時代の大きな変わり目にあるわれわれは、伝統的、近代的、そして近未来的という非正規労働の3段階を全て視野に収めた包括的な観点に立つ必要があるのではないでしょうか。・・・・・

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コメント

歴史はかくも繰り返すのですね…。
以下、Web労政時報コラムの前半要旨を掲載します。
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近年、経済のデジタル化に伴い、カジュアルワーク、モバイルワーク、クラウドワークなど、新たな非正規労働形態が雇用労働の内側と外側で急速に増加しつつある。この傾向は非正規製作の先輩格であるEUも同じで、ここ数年はその対応が大きな政策課題となっている。

しかし改めて振り返れば、こうした「デジタル時代の新たな労働形態」は現代的な労働市場が確立する以前の前近代に広がっていた「伝統的な非正規労働(日雇や出稼ぎや自営業)の形を変えた再現」という面もある。今日、時代の大きな変わり目にある我々は「伝統的」「近代的」そして「近未来的」という非正規労働の三段階を全て視野に収めた包括的観点に立つ必要があろう。

戦後日本の高度経済成長前1955年刊行の報告書「日本における雇用と失業」では、「失業の存在形態」として3種類(顕在的、潜在的失業、停滞的失業)を挙げた上、「停滞的失業」として「低賃金産業就業者」「家内工業労働者」「臨時日雇労働者」を示した。政府の認識枠組み上はこうした就業形態は決して本来の雇用形態ではなく、むしろ失業が潜在化した不完全就業(不安定就業)であると考えられていた。雇用と非雇用の双方に広がっていたこれらの就業形態は近年ILOが途上国労働市場について用いるところの「インフォーマルセクター」という概念と類似している。

不安定就業の中でも「近代的」だったのは「臨時工」や「社外工」といわれる近代部門の周縁的労働者だった。彼らは近代的非正規形態たる「有期労働者」や「派遣労働者」の前身として「本工と同様の仕事をしながら低賃金」で雇用は不安定だったため1930年代や50年代には大きく社会問題化したが、その後の高度経済成長とともに急速に減少し、「パートタイマー」や「アルバイト」に取って代わられた。また、建設業や港湾荷役業といった労働需要の「波動性」が高い業種においては「日雇労務者」という極めて短期の就労を繰り返す人々がいた。

ここまでは「雇用の内側」だが、その外側にも膨大な「非雇用労働の世界」が広がっていた。いわゆる「内職」は「家内労働」と呼ばれ、法的には雇用関係ではなく「請負による自営業」に含まれ経済的実態からすれば委託者に従属していたため、「労働者に準じた者」として先駆的に労働保護立法の対象とされてきた。自宅で作業ができるメリットもあり、彼らの大半は「女性」だった…。

投稿: ある外資系人事マン | 2017年12月27日 (水) 16時09分

(以下、後半要旨です)-----
他方、建設業の重層請負構造の末端である下請けを担う人々は「一人親方」と呼ばれ法的には請負による自営業者であるが、実態としては親方といっても他人を雇っているわけではなくある時は一人親方として請負で働き、ある時は建設労働者として雇われて働くこともありえ、その意味で彼らは「雇用と請負の両方」にまたがって生息しているとも言え、不安定就業としての自営業の代表的存在だった。

こうした「伝統的非正規労働形態」は、かつては労働政策の大きな関心の対象だったが、高度経済成長以後はあまり意識されなくなり、特にここ20年以上は「パート・有期・派遣」という3種の「近代的非正規労働」ばかりが政策課題であり続けてきた。しかし、今年3月発表の「働き方改革実行計画」には雇用型テレワークと並んで「非雇用型テレワーク」への対策も盛り込まれていることから「近未来型非正規労働形態」も既に射程に入りつつある。いわば、近代的な第二期労働政策が終了し、近未来型をターゲットとした第三期の非正規労働政策が始まらんとしている。

過去20年の推移を改めて振り返ると、第一期の不安定就業の問題意識に対応するような新たな就業形態が現代に続々と登場してきたことに気づかされるが、それは急激なITの進展や経済のグローバル化により国境を越えた生産要素の活用が進められたことで世界同時発生的に進行する新たな労働形態が日本においてもやや遅れ気味ながら着実に進みつつあるようだ。

雇用の「内側」では、雇用契約の存在を前提とした「雇用型テレワーク」(モバイルワーク)の新たなガイドラインが策定されているが、職場の同僚と離れて一人で作業を行うテレワーカーの労働時間を規制することには大きな問題が伴い、常時ネットワークでつながっていることが生活の基本となる今日、モバイルワークに相応しい法制度の見直しが求められる。また「日雇派遣」も雇用の「内側」に位置する一種の「オンコールワーク」であり、問題の本質に即した政策対応が求められる。

雇用の「外側」に広がりつつある自営就業が「非雇用型テレワーク」と呼ばれるのは、1970年の「家内労働法」以来の経緯によるもの。ただし製造業における加工委託だけが対象の同法では現在の在宅ワークの実態に適用できないため、「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」を策定・見直しすることが求められる。

そして、さらにその先には急減なITによって開けてきた世界~プラットフォーム経済やシェアリング経済やコラボラティブ経済と呼ばれる、「広大な自営業の世界」が広がる。働き方改革実行計画ではこれを「雇用類似の働き方」と呼び、様々な問題点が噴出するも中長期的な課題としてその法的保護の必要性が検討されている(厚労省「雇用類似の働き方に関する検討会」2017.10)。

このように世界的なデジタル経済化の波を受けてこれまでの「労働法のあり方」の抜本的見直しの議論が高まりつつあるが、徐々に消えていくと思われていた伝統的な「家内労働」や「一人親方」こそがこれからの近未来の新たな労働形態として主流になりつつあるのかもしれない。

投稿: ある外資系人事マン | 2017年12月28日 (木) 12時32分

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