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2017年12月25日 (月)

『日本労働研究雑誌』1月号

690_01_2一方、『日本労働研究雑誌』1月号の特集は「格差と労働」です。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/new/index.html

所得格差の要因と2010年代における動向 石井 加代子(慶應義塾大学特任講師)

管理職への到達をめぐる不平等─世代間移動と職業キャリアの視点から 竹ノ下 弘久(慶應義塾大学教授)

格差は主観的なウェルビーイングに影響を与えるのか 浦川 邦夫(九州大学准教授)

人口構造の変化と経済格差 白波瀬 佐和子(東京大学教授)

ネットワークと階層性 石田 光規(早稲田大学教授)

労働法における正規・非正規「格差」とその「救済」─パートタイム労働法と労働契約法20条の解釈を素材に 神吉 知郁子(立教大学准教授)

この中ではやはり、神吉さんの論文を取り上げましょう。

本稿は、非正規労働者の正規労働者との労働条件の不合理な「格差」を禁止する法原則について、その解釈をめぐる現状を分析し、今後の課題の整理を試みたものである。その重要な法的手がかりは、2012年に新設された労働契約法20条と、これにならって2015年に改正されたパートタイム労働者法8条における不合理格差禁止条項である。これらの条項は3つの要素(職務の内容、職務内容及び配置の変更の範囲、その他の事情)を考慮して不合理な格差の救済を図る規範であるが、考慮要素の扱いや不合理性の判断方法についての解釈は対立し、裁判例も分かれている。非正規労働者の不合理格差禁止原則を人権保障のための差別禁止アプローチとは異なる政策アプローチとみる立場からは、政治的スローガンとして掲げられた「同一労働同一賃金」の実現による解決の実効性には疑問が生じる。ガイドラインやパート・有期法の制定へと展開する過程においても、差異に応じた救済をどう具体化するかという問題は残されたままである。現時点では、個別労働条件ごとの性質・目的から不合理性を認定する方向性が打ち出されているが、その具体的方法も明らかでない。この点、裁判例でも考慮要素とされてきた労使協議や非正規労働者の加入する組合の合意といったプロセスが重視されることで予測可能性が高まり、真の労使自治の構築を後押しする仕組みができれば、それが本来的な「救済」となりうる。

この要約ではまだそれほど激しく出ていませんが、論文の最後のパラグラフでは、この間の政策決定過程に対する神吉さんの思いがかなり率直に表出されています。

・・・いずれの場合でも、裁判に訴えることで初めて救済の可否が明らかになるようでは、紛争解決の意義は限定的である。予測可能性が低ければ、使用者がリスク回避のために、比較の前提条件を違えるよう職務分離を徹底してキャリアトラックを閉ざしたり、フリーランス契約など「労働者」以外へのシフトを加速して、本来受けられるはずの保護から漏れる者が増えるおそれもある。こうした副作用を生じさせないため、非正規労働者の意見を反映させて自律性を確保し、労使の納得を高める仕組みを評価していくことが必要である。

あと、この1月号では毛塚勝利さんが「労働政策の展望」を書かれているのですが、それはここで全文読めます。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2018/01/tenbou.html

実は冒頭、本当は労使関係法制の話をしたかったんだが、やむなく労働時間法制の話をするのだと書かれていて、やはり労使関係法制への大提言を読みたかったという気持ちになりました。

労働法は労働政策の法でもある。社会環境の変化に合わせてシステム調整が必要となるからである。1990年代以降、労働契約法の制定と個別労働紛争処理制度、労働者代表制の整備を立法政策の中心的課題としてきた。このうち、最初の二つはまがりなりにも実現をみた。残る課題は労使関係法制のシステム調整である。それゆえ、「労働政策の展望」を論じる本欄では、この70年間手がつけられていない労使関係法制の整備、とりわけ、代表制民主主義とステークホルダー民主主義の原理にもとづく労使関係の整備[注1]の必要性を説きたい気持ちが強い。しかし、ここでは、やはり安倍政権の「働き方改革」の一環として俎上にのっている労働時間法制の見直し議論を取り上げることにする。あるべき労働時間法制の基本的コンセプトが欠落していると思われるからである[注2]。・・・

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