川口大司編『日本の労働市場』
川口大司編『日本の労働市場 経済学者の視点』(有斐閣)をお送りいただきました。ありがとうございます。
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641165120?top_bookshelfspine
第一線の研究者が,重要な研究をバランスよく紹介し,分析手法について丁寧に解説したうえで,まだ明らかになっていない問題を提示し,課題解決のための政策対応を模索する。働くことの未来を考えるためのヒントに満ちた一冊。
帯には「労働経済学研究への最良の招待状」とありますが、いやむしろ、優れた労働経済学者による日本型雇用システム論であり、非正規労働論であり、様々な労働政策分野の政策論が大部分を占めています。
序章 社会経済環境の変化と今後の労働市場の課題(川口大司)
第1部 労働市場と技能形成
第1章 日本的人事の変容と内部労働市場(大湾秀雄・佐藤香織)
第2章 労働契約・雇用管理の多様化(玄田有史)
第3章 人的資本と教育政策(佐野晋平)
第2部 労働市場における課題と政策対応
第4章 地域経済が抱える課題と労働市場(太田聰一)
第5章 高齢者雇用の現状と政策課題(近藤絢子)
第6章 女性活躍が進まない原因(原ひろみ)
第7章 移民・外国人労働者のインパクト(神林龍・橋本由紀)
第8章 障がい者雇用を取り巻く現状と課題(坂本徳仁・森悠子)
第9章 失業保険政策(酒井 正)
第10章 貧困問題と生活保護政策(勇上和史・田中喜行・森本敦志)
第3部 労働経済分析のフロンティア
第11章 エビデンス・ベースの労働政策のための計量経済学(小原美紀)
第12章 労働経済理論(川田恵介)
第13章 労働経済学における実験的手法(佐々木勝・森知晴)
第14章 労働経済学における行動経済学的アプローチ(大竹文雄)
終章 社会の課題に労働経済学はどのように応えるのか?(川口大司)
私の個人的関心からすると、第1章の大湾・佐藤論文が労働経済学からの日本型雇用システム論として、第2章の玄田論文が正規・非正規論として、冒頭から興味深いものでしたし、第2部の各章は私が法政策の視点から検討してきた各領域を違う観点から分析していて、やはりとても面白かったです。中でも、酒井さんの第9章が、私も安易に使っていた失業保険におけるモラルハザードという概念に注意を喚起していて、大変勉強になりました。
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