『日本労働法学会誌130号』
『日本労働法学会誌130号 委託型就業者の就業実態と法的保護/不当労働行為救済法理を巡る今日的課題/女性活躍推進と労働法』(法律文化社)が届きました。中身は5月20日に龍谷大学で行われた第133回大会のミニシンポ3つと個別報告4つ、そして冒頭に菅野和夫JILPT理事長の特別講演録も載っています。
http://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-03879-1
学会の中身はここで紹介していますが、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/133-dace.html
ここでは冒頭の菅野講演について少し。
おそらく圧倒的に多くの人は、菅野労働法の来し方をあれこれお話しするのだろうと思っていたと思いますが、さにあらず、前半は労働政策の時代に労働法学の役割は何かというテーマで、後半は日本型雇用システムについてJILPTの高橋康二さんらがやってきた研究内容の紹介になっています。
学会員のお手元には既に届いているはずなので細かな紹介はしませんが、社会学者と経済学者に対するこのコメントは、どなたをイメージするかによっても感想が若干違ってくるかも知れませんが、なかなか言い当てている感があります。
・・・政策は、多くの場合、法制度の設計として行われますが、法制度の設計は具体化すればするほど、経済学者や社会学者は十分になしえず、法律家の関与を必須とするはずです。
事例調査やアンケート調査に長けた産業社会学者は、実態把握には極めて有能であって、経済学者のような市場経済の法則への信仰を持たないだけ、ありのままの現実を析出してくれます。他方、私の経験では、多くの産業社会学者は法制度にはあまり興味がありません。調査データを元に実態を分析・類型化すればそれで満足してしまい、その実態に問題を見出しても、政策によって変えるべし、それにはどのような政策があり得るか、という発想にはなりにくい。ましてや、具体的な法制度と結びつけた政策論にはもっとなりにくい傾向にあります。
他方、経済学者は、彼らが信じる市場経済の法則から外れる実態を見ると、制度改革に強い関心を抱き、何らかの政策を提唱することが多いのですが、かつての制度派経済学者と違って、法制度の内容を細部や機能に至るまでは理解していないことが多い。したがって、法律家から見ていささか奇妙な制度論が語られることがあります。・・・
後半の雇用システム論は高橋康二さんらの今年12月に刊行予定の本『日本的雇用システムのゆくえ』のごく簡単な紹介なので、ここではむしろ、この本を乞うご期待ということで省略しておきます。
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