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2017年11月21日 (火)

「解雇無効の原点」@『労基旬報』2017年11月25日号

『労基旬報』2017年11月25日号に「解雇無効の原点」を寄稿しました。

 去る5月31日、厚生労働省の「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」が報告書を公表しました。この報告書は労働局あっせん、労働委員会あっせん、労働審判など現行の個別労働関係紛争解決システムの改善についてもかなりの紙数を割いていますが、世間の注目はもう一つのトピックたる解雇無効時における金銭救済制度の提案に集中しました。同報告書は、政治的配慮から使用者申立制度の選択肢を排除し、労働者申立のみを認めるとしています。しかしそのことが却って問題をもたらしています。
 この問題のネックは政策論としての対立にあるだけでなく、それよりもむしろ法律構成上の困難さにあります。過去2回(2003年、2005年)の検討がうまくいかなかったのは、現行訴訟制度の枠内で解雇が無効であるとする判決を要件とする金銭救済の仕組みには一定の限界があるからです。つまり、それは使用者申立に親和的な構成であり、労働者申立のみを想定する制度には適合しないのです。そこで、それとは異なる法的仕組みを工夫しています。
 一つは解雇を不法行為とする損害賠償請求の裁判例を踏まえた仕組みですが、やはり損害賠償請求と金銭を支払った場合に労働契約が終了するという効果を結びつけることは論理的に困難という結論です。そこで、実体法に労働者が一定の要件を満たす場合に金銭の支払を請求できる権利を置くというやり方を提示しています。問題を訴訟法から実体法の領域に移すことで打開を図ろうというわけです。
 この場合、権利の発生要件として、①解雇がなされていること、②当該解雇が客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないこと、③労働者から使用者に対し、一定額の金銭の支払を求めていることが、法的効果として①金銭の支払請求権が発生し、使用者に金銭の支払義務が発生し、②使用者が一定額の金銭を支払った場合に労働契約が終了することとなります。この金銭のことを「労働契約解消金」と称しています。
 こうした複雑な仕組みを考案しなければならないそもそもの原因は、不当解雇(客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇)を無効とするところから出発せざるをえないところにあります。世界的には不当解雇を無効とした上で、解消判決というテクニックを使って金銭解決を可能としているドイツのような国もありますが、フランスやイギリスなど多くの国は必ずしも不当解雇を全て無効とはせず、無効でない(つまり有効な)不当解雇に対して金銭補償を義務づけるというやり方をとっています。日本でなぜそういうやり方が取れないのか、といえば、現行労働契約法第16条の前身である2003年改正労働基準法第18条の2で、それまでの判例法理をそのまま法文化するという建前で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定したからです。しかし、この定式化は逆にいうと、有効な解雇は全て客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と認められるということになりますが、そんなにきれいに分けられるのでしょうか。現実の解雇事例を見ればどっちもどっちの事例が山のようにあります。
 日本の判例法理において不当な解雇が無効であるのはなぜなのか、という問題意識を持っている人はあまりいないようですが、解雇に係る裁判例を歴史的に遡って調べてみると、どうも旧労働組合法時代の不公正労働行為制度の在り方にその原因があったようです。・・・・・

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