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2017年10月 3日 (火)

雇用システムと賃金制度:日本と韓国@WEB労政時報

WEB労政時報に「雇用システムと賃金制度:日本と韓国」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=695

去る9月15日、労働政策研究・研修機構(JILPT)と韓国労働研究院(KLI)は、毎年開かれている「日韓ワークショップ」の第17回の会合をソウルで開きました。テーマは「日韓における賃金体系の現況と再編の在り方」で、私は報告者ではなく、コメンテーターとして参加しました(日本側の報告者は、西村純研究員と荻野登副所長)。今回は、その時私が述べたコメントをもとに、日本と韓国の雇用システムと賃金制度の異同について考えてみたいと思います。

さて私も含めて、日本の雇用システムを論じる場合には欧米諸国と対比して議論することが多く、アジア諸国はあまり視野に入ってきません。ただ、私が10年以上前に政策研究大学院大学でアジア諸国からの留学生に講義した時の経験からすると、少なくとも東南アジアや南アジアの労働社会は極めて欧米型であり、日本的雇用システムに対して一様に違和感を口にしていました。改革開放以後の中国社会も、ある面では欧米以上に市場主義的な社会となり、かつての社会主義的「鉄椀飯」は影を潜めたようです。そういう中で、諸文献がかなり一致して日本型雇用システムとの類似性を指摘してきたのが韓国です。1980年代以降、雇用に関して日韓を比較した文献が多く出されてきましたが、そこでは、終身雇用制、年功賃金制、企業別組合といった日本の特徴とされることが韓国企業にも見られると書かれています。 ・・・・

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コメント

「韓国」はかつては日本型雇用システムとの類似性を指摘されていたが、90年代後半の金融危機以降は解雇規制が見直され、雇用の流動化も進み、長期雇用慣行はかなり弱体化している。すなわち日本型雇用の3要素の内、「終身雇用」と「企業別組合」については明らかに日本型から離れつつある。

ところが極めて不思議なことに韓国では依然として職種を問わず「年功賃金」が見られ、年功カーブも急峻で、勤続年数にもとづく線型的な賃金上昇がみられる。

韓国の日本との分岐点はバブル崩壊後の軌跡に現れる。日本では雇用流動化が一部唱道されるも、長期雇用と企業別労使協調が維持され、その「代償として賃金の柔軟化」が急速に進んだが、韓国では雇用が不安定化し、労組が急進化・産業別化する中で「生活保障給」という理念に固執し、そう簡単に賃金カーブの平坦化に応じようとしてこなかった。

日韓どちらも三位一体は崩れるものの、「守られるべきもの」と「手放すべきもの」が対照的であるのは大変興味深い現象だ。長期雇用を維持する代わりに年功賃金を手放し(成果主義を導入し)た日本と、労使対決下で雇用流動化する中で年功賃金に固執した韓国…。

年功賃金が法政策上問題となるのは、高齢化に伴う定年延長や継続雇用との関係。中高年は賃金が高いため早期排出のインセンティブが働く(年功賃金のアキレス腱は高齢者雇用)。政府による企業への直接介入を行わず労使対応に委ねられた日本に対し、韓国では強い政府主導により賃金切り下げを定める「賃金ピーク制」が敷かれるという好対照。

雇用流動化が進み、中高年まで残る労働者が少なくなればなるほど(やや皮肉ではあるが)、残った少数の労働者には厳格な年功賃金を要求することが可能となるのだろう。
(以上、Web労政時報の要約)

…こうして北アジアに位置する兄弟的両国は異性体のごとく独特の進化を果たし、(変容を強いられつつも)何とかメンバーシップ型雇用を維持せんとしています。とはいえ、こうした古きよき20世紀型システムの“安心”に果たしていつまで身を委ねることが出来るのでしょうか…。

ところで、昨今日本の「雇用」は改善されても未だ「賃金」が改善されない根本原因は、やはり本来正社員の間にも適切にあってしかるべき企業間外部労働の人材獲得競争(マーケットメカニズム)による賃金上昇圧力が起こっていない所以なのでしょうか…。読書と考察のこの季節、雇用を犠牲にして年功賃金を選択した「もう一つのメンバーシップ」たる隣国韓国との比較分析、本エントリは示唆に富みますね。

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