ジョブ型社会はコネがないとつらい
先日、「文系だけどシリコンバレーで働く」というブログの「ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用はパズルと積み木」というエントリを紹介しましたが、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/post-a6fe.html(ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用はパズルと積み木)
そのブログに新しいエントリがアップされていて、題して「ここがつらいよジョブ型雇用 」。
http://tobiccosan.blogspot.jp/2017/10/blog-post_20.html
「自分で能動的にキャリアをつんでいかなければいけないのでつらい」とか「マネジメントがまともじゃないとつらい」とかはまだわかるかも知れませんが、おそらく多くの日本人に意外に見えるであろうと思われるのが「コネがないとつらい」という一節でしょう。
社内・社外問わず転職活動をするときには、具体的にいままでどのようなポジションでどのような成果を上げてきたのかが最も重要になるわけだが、特に非エンジニア職の場合個々人のアウトプットが具体的な成果物になっていることは少ないので、(偉業をなしとげたチームに所属していたとしても、その人が貢献していたとは限らない)一緒に仕事していた人の口利きが重要になる。さらにその口利きは、同じレベルで仕事をしていた同僚では弱くて、上司、さらにその上の上司あたりが口利きしてくれないと効果が弱い(いわゆるスポンサーシップというやつ)。自分が転職活動をしているときに自分の現在所属する部署の上司やその上司が積極的に自分の転職を支援してくれることはあんまりないので(部署ごとなくなるので全員転職活動しているときとか、別の場所に引っ越す必要があるので仕事探しているとかさまざまな事情でそういうこともあるけど)、過去の上司やその上司がいざというときに口利きしてくれるかどうかが非常に重要。なのでそういう関係性づくりを日頃から心がけていかなければならない。アメリカの採用はコネかよ、、最悪だな、、と思っていた時期もあったが、特にジョブ型採用では、会社のカルチャー、部署のカルチャー、仕事の仕方、特定の職種のチームとスムーズに働いた経験、など多角的な経験がものをいうので、採用する側からすると、一緒に働いたことのある人の口コミほど信頼できる情報はない。実際に、優秀な経歴をお持ちで鳴り物入りで入ってきた人が、チームの働き方に全く合わず即辞めていくことを何度か見ているうちに強くそう思うようになった。
人間の認識能力に限界がある中で、個人の能力を組織で認めて引き揚げていくのでない以上、個人ベースのつながり、つまり「コネ」が大事になるのは理の当然ではあるのでしょうが、ややもすればジョブ型というのを妙に合理的なものと思い込みがちな人々にはいい清涼剤的な文章かも知れません。
もちろん、メンバーシップ型の日本企業では、社内の「コネ」というか人間関係がやはり極めて重要な意味を持つわけですが。
« 「多様なジョブ型雇用システム」 @労基旬報』2017年10月25日号 | トップページ | 『JIL雑誌』11月号は「スポーツと労働」 »
コメント
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確かに、外資系では上のポジションの方が動いた後に遅くないタイミングでごそっと(或いはそろそろと)その配下もまとまって動くことがよくありますね〜周囲からは「チーム〇〇」とか「元〇〇(有名企業名が入る)出身者」などと嘲笑と羨望の入り混じった目で揶揄されながらも…。
思うに、本来なら完全な実力主義であるはずのグローバル外資系企業で意外にもコネ採用(employee referral と言います)がよく見受けられる理由は、一つにはいつ何処の世界でも優秀な人材が希少なため、さらには実務的な用語の使い方から仕事の進め方まで実は外見で見えている以上に企業ごとの個性なりバリエーションが多彩なためピタッと自社に合った人材を探すのは至難の技である(加えて、外部エージェンシー経由で採用するとコストがかかる)ためでしょうね。
言わずもがな、汎用的な(職務経歴書上の)専門知識や経験分野が同じような場合でも、それぞれ個々の企業で求められるビヘイビアなり業務知識の適用の仕方は会社ごとに意外と大きく異なるものです。その点、以前に同じ会社かつ職場で働いていた知人であればお互いの能力や仕事の仕方やクセがある程度分かっているため、サプライズなく安心して採用でき(そうでなくても、経歴者採用は高い買物でしょうから)るし、阿吽の呼吸、即ちより短い時間や説明で難しい内容や複雑なニュアンスや質感(クオリア)も効率的に伝達しうるのです。
ところで、外資系企業の中途採用面接官に用いられるインタビュースキルに behavioral questioning (候補者の行動特性を測る質問)という手法があります。そこで測定されるのがskill fit とculture fitとmotivation fitという観点のマッチングの評価なのですが、今回の主題である「コネ」とはここでいう前二者のスクリーニングの労力を大幅に軽減するショートカットと呼ぶことも出来るかと…。
投稿: ある外資系人事マン | 2017年10月24日 (火) 21時25分